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空蝉

島民ふれあいセンター北部の劇場。
かつては講演会や舞台劇等の催し物が開かれていたであろうその場所は静まり返っていた。
窓は一つも無いが何故か照明だけが点灯しており、明るい。
座席の陰に、相川友は隠れ息を潜める。

(あいつは機関銃を振り回してる……まともにやり合うのは無謀だ……)

友は今、一人の男と交戦中だった。
その男は、このセンターの西部役場エリアにて、二人の知らない男二人を機関銃で襲っていた。
友はそこに横槍を入れた――恐らく、その事であの男は自分に少なからず因縁を抱いたのだろうと、友は思った。
男の名前は分からない――銀髪に、黒を基調とした服装、そして心から殺人を愉しもうとする狂った姿勢は、
十分に友の脳裏には焼き付いていたが。

ガチャン。

「!」

扉が開く音が聞こえた。
友は少しだけ座席の陰から顔を出して様子を伺う。
やはり――機関銃を持った銀髪の男がいた。

(……これの出番か)

友はデイパックの中に手を突っ込み、先刻調達した材料で作ったそれを取り出した。


◆◆◆


「どーこーだァー……」

氷室勝好は交戦している相手である青髪の少年を捜していた。
数刻前に獲物を狩ろうとした時、横槍を入れ興を削いだ張本人。
さっさと仕留められると思っていたが、少年は思った以上に動き回り、勝好の機関銃による掃射を避けた。
避けるばかりでなく、釘打ち機で反撃もしてきた。
当然釘で打たれる訳にも行かないのでこちらも避ける。
一進一退を続けている内、体勢を立て直すつもりか少年が北の方へ走り去った。

「今何時だ」

ふと、勝好はデイパックの中から時計を取り出し時刻を確認する。

「ああ? もうこんな時間か」

放送まで既に一時間を切っていた。

「楽しい事してると時間が早く過ぎるって奴か……アインシュタインの、相対性理論、だっけか?
まあ、どうでも良いか……あそこ見ていなけりゃ、一旦あの青髪は諦めるか」

そう言いながら、勝好は劇場へと続く扉を開ける。
数多くの座席が並んだ劇場の中は静かだった。
中に入り、数歩進んだ所で、勝好は座席に向けてRP-46軽機関銃を乱射し始める。
扇状の配置になっている座席に万遍無く銃弾の雨を降らせる。
座席達に穴が空き中身のスポンジが露出し飛び散った。
おおよそ全ての席に雨を降らせた所で勝好は引き金から指を離した。
もし、座席の陰に隠れていたとしても、恐らくこれで無事では済まされまいが、念には念を入れる。
勝好はRP-46を携え、劇場内へと足を進める。
舞台へと向かう階段状の通路を三段程下りた時。
四段下の座席列辺りから、何かが勝好に向かって投げられた。

「!」

勝好は反射的に、投擲された物に銃口を向け、引き金を引く。


バァン!!


「ッ!?」

投擲された「それ」は銃弾が当たると同時に破裂し周囲一帯に火炎を撒き散らした。
床や座席に火が飛び散りそこからじわじわと炎が広がって行く。

「あちちっ! くそっ、火炎瓶か!?」

流石の勝好も突然の火炎に驚きを隠せない。
その時燃え盛る炎の向こうで見覚えのある青髪が動くのが見えた。

「ぐあっ!?」

左上腕と鳩尾の辺りに激痛が走る。
見れば、釘が突き刺さっていた。
誰がやったかは、明白。

「舐めた真似、してんじゃねぇ!!」

激昂した勝好が炎の向こうにいる筈の少年に向け軽機関銃を乱射した。
炎など物ともしない銃弾は熱い空気を切り裂き少年に襲い掛かる、が。
少年はそれより前に脇の細い通路に走っていた。
勝好は座席を飛び越えてきた少年の方に軽機関銃を向けようとする。
しかしその時でさえ少年は釘打ち機で勝好を狙った。

「……っ!!」

三本の釘が、勝好の胸元、鳩尾辺りに命中する。
深く刺さってはいないが、浅い傷でも無い。
軽機関銃の重さも相まって、よろける勝好。
無様だな、と、心の中で彼は自分を嘲った。
そして少年は、最後の一撃を放つべく、床に降り立ち、釘打ち機を前方の銀髪の男に向けた――――。


◆◆◆


勝てる、と思った。
火炎瓶で不意打ちし、一気に倒す、即興で考えた作戦だが上手く行きそうだ。
銀髪の男は釘打ち機の釘を食らって明らかによろめいている。
このまま、殺せる。あの男を。
このまま、引き金を引けば、この距離なら、釘は男の頭や首に当たるだろう。
そうすれば致命傷は免れない筈だ。

僕は勝てる、いや、勝った。


(死ね――――――――ッ!!)


僕は、釘打ち機の引き金を引いた。



……。



あれ。



釘が出ない。



「え?」

引き金を引いても釘は出て来ない。
壊れた?
いや違う、釘が無くなったんだ。
予備の釘を入れてる暇なんて無い、そうだ、牛刀包丁を調達したじゃないかあれを使っ―――――――



「ゲームオーバーだ、ボーイ」



掃射音。



目の前が赤く――――――――




……




……




僕はどうなった。
身体の感覚が無い。
劇場の天井が見えるから僕は倒れているんだろう。
でも、左目側の視界が真っ暗だ。
近くで火が燃えて空気が熱い筈なんだけど、熱く感じない。

身体が動かない。

意識が段々遠のいて行っている。

僕は――――死ぬ?



ああ、それでももう良いかもしれない。

殺し合いに巻き込まれ、生き残って、でもまた殺し合いをさせられて。

もう疲れてしまった。



青木兄妹はどうしているだろう、佐々木竜也の奴はまだ生きているのか。

気になるけどもう知る事は出来ない。

ああ、浅井さんに言伝頼まれていたっけ。

でも、ごめん、浅井さん、もう、無理っぽい。



もう、何も見えない、何も聞こえない。



どうしてだろう。



どうして、こんな終わり方になったのだろうか、僕の、人生は。




【相川友@DOLバトルロワイアル  死亡】




◆◆◆



火が広がりつつある劇場から、デイパックを二つと軽機関銃を携えた銀髪の男が出てくる。

「こりゃ大火事になりそうだな……まぁ、さっさと離れるべきだなァ」

近くに外へ出る非常口があったので、男――氷室勝好はそこに向かった。

(……結構、今回はやばかったんじゃねぇか、俺)

先の青髪の少年との戦いを省みる。
最終的に、少年が使っていた釘打ち機の残弾が切れた事で、勝好はその隙を突いて勝利出来たが、
その直前までは少年の使った火炎瓶や釘打ち機の釘を食らい、押されていた。
最後だって、少年の釘打ち機の残弾がまだ余裕があったとしたら、殺されていたのは自分だったかもしれない。
事実、左上腕や胸元、鳩尾辺りに致命傷では無いとは言え釘打ちによる手傷を負わされているのだから。

「チッ……カッコわりィな……」

少年相手に一時的とは言え遅れを取った事が彼のプライドを傷付けていた。
いつも笑みを浮かべてる事の多い顔が、苦虫を噛み潰したような顔になる。

「……まァ、良いか。どっか安全な所で放送聞くとすっかァ」

非常口の扉を開け、勝好は市街地の方へ歩いて行った。


【E-3/島民ふれあいセンター(多目的施設):北部劇場エリア/一日目/昼】

【氷室勝好@俺得バトルロワイアル6th】
[状態]:左上腕、胸元、鳩尾辺りに釘の刺さった痕(若干の出血、命に別状無し)、肉体疲労(大)
[服装]:若干血が付着
[装備]:RP-46軽機関銃(174/250)
[道具]:基本支給品一式、RP-46軽機関銃予備弾薬(50/300)、牛刀包丁、電動釘打ち機(0/20)、相川友のデイパック
[思考・行動]
基本:殺し合いを楽しむ。
1:どこかの民家にでも入って放送を待つ、ついでに傷の手当もしたい。
2:柳詩織は次に会ったら必ず殺す。
[備考]
※傷の内訳は左上腕に一箇所、胸元に二箇所、鳩尾に一箇所釘の刺さった痕があります。
※相川友のデイパックの中身は基本支給品一式、火炎瓶(調達品、2本)、釘(40)、インスタントカメラ、ジッポライターです。
※相川友の名前は知りません。


※島民ふれあいセンター北部劇場で火災が起きています。鎮火するかどうかは次の書き手さんにお任せします。
また、劇場観客席ほぼ全域に銃撃痕があります。
※相川友の死体は火災が起きている島民ふれあいセンター北部劇場内に放置されています。


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063:Crazy∞Night 相川友 GAME OVER
063:Crazy∞Night 氷室勝好 :[[]]

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最終更新:2013年01月06日 11:25