豪邸の広くゆったりとしたリビング。
ソファーの上には、川内一輝が寝かされていた。
「ああ……いてぇ」
既に意識は回復してはいたが、何しろ脇腹に銃撃を食らっているので、下手に動く事は出来無い。
「具合、どうですか? 川内さん」
青木百合が心配そうに尋ねる。
川内の傷は一応は包帯を巻く等の処置は為されているが、白い包帯に滲む血が痛々しい。
「大丈夫、って言いたい所だけど、痛いなやっぱ」
「そうですか……病院に行った方が良いと思うんですけど、ここからじゃ余りに遠過ぎるし、
多分救急車なんて呼べないだろうし……」
「命があるだけ、マシって奴だな……」
一輝は疲れきった笑顔を浮かべた。
すぐ隣のリビングのテーブルに向かって、土御門伊織が座り百合と一輝の様子をたまに見ていた。
伊織もまた、右肩に銃撃を食らっていた。
一輝を撃ったのと同じ人物からである。
百合が立ち上がり、伊織の元へ歩み寄り近くの椅子に座った。
「土御門さん、肩は……」
「相変わらず痛みはあります……足をやられなかっただけ、まだマシですが」
「そうですか……」
「しかし、私はともかく、一輝は腹を撃たれてますからね……下手に動かす事も出来無い。
とは言っても……何にせよ、放送の時間も近付いていますから、この豪邸からは全員動けませんが」
「……」
百合が不安そうな面持ちを浮かべる。
何を考えているのか、伊織は用意に想像出来た。
兄の青木林の事であろう。
百合と初めて会った時、彼女の兄を慕う気持ちは伊織も一輝も良く聞かされた。
「貴女にとってどれくらい大切な人か」と言う伊織の問いに対し、百合は。
――世界を滅ぼしたって構わないくらいです。
と返した。
それを聞いた瞬間、伊織は即座に判断した。
この子は異常だ、と。
兄についてはほんの少し聞いただけだったが、たったそれだけだったが、
百合の、兄に対する思いは、普通のそれでは無い事を、伊織に十分過ぎる程に伝えていた。
それ故に、兄、青木林が死亡したと判明した場合、百合が取る行動は容易に予測出来た。
同行者である自分や一輝、のみならず、他の参加者達にも矛先を向ける事は、火を見るより明らか。
(だからあの時、百合を気絶させた……誰にも遭遇しない内に学校から離れるため……。
流石に放送の時間まで気絶はしてくれませんでしたが……)
どうしたものかと伊織は思案する。
百合の兄、青木林が既に死亡している可能性は十分有り得る。
万一の事があっても百合に放送は聞かせないように、と、百合を気絶させた後一輝と話したが、
流石にもう一度同じ手段で百合を気絶させるのは得策では無い。
第一回目の放送の時刻は刻一刻と迫っている。
「百合、疲れたでしょう、少し眠っては? 放送なら私が聞いておきますから」
駄目元で、伊織が百合に言ってみる。
放送は自分達で聞いておくと言う事にして百合には睡眠を取って貰う、と言う風に出来れば、と思ったのだが。
「いえ、大丈夫です」
やはり駄目であった。
当然と言えば当然だろう、現時点での兄の安否がもうすぐ知らされるのだから。
「そうですか……」
無理強いすると不審がられる。
理由を尋ねられても面倒だと、伊織はそれ以上は寝る事を勧めなかった。
おもむろに伊織は椅子から立ち上がった。
「ちょっと私も、一輝の様子を見てきます」
「はい」
百合はテーブルに向かって座ったまま、物思いに耽っていた。
伊織は一輝の顔の傍に座る。
「ああ、土御門……悪いな、俺が足手まといになっちまって」
「気にする事はありません。悪いのは阿見音です」
「……百合ちゃんはどうだ」
一輝がいささか真面目な表情で、伊織に訊く。
「……やはり、不安そうですね。もうすぐ兄が生きているのかどうか分かるのですから、無理もありませんが」
「放送聞かせないようにするって言ってたけどよ……やっぱ、無理があるんじゃないか?」
「……」
「例え、今回放送聞かせなかったとしてもよ、次の放送は、って事になるだろ?
放送のたんびに、百合ちゃんと会った時みたいに気絶させる訳にもいかないだろうし」
「確かにそうですが……」
「いずれ、ボロが出ちまうと思うんだよ……それに、あの子の兄貴が死んだとは限らないだろ?」
「……」
確かに青木林がまだ生存している可能性はある。
それに一輝の言う通り、ずっと放送を聞かせないと言う事は現実的に不可能だろう。
しかしもし、もうすぐ始まる放送で青木林の名前が呼ばれたら。
自分と一輝は重傷、百合は無傷。
「白澤」である自分はまだ良いとして、一輝は普通の人間である。
百合がその気になれば、二人共手に掛けるのは決して不可能では無い。
――数刻前に自分と一輝に重傷を負わせた男が百合に向かって言った台詞と同じ事を考えるのは癪ではあったが。
「一輝」
「何だ?」
「百合に放送を聞かせないようにすると言うのは、貴方の言う通り無理がありました。
このまま、百合には放送を聞かせる事にします」
「……ああ」
「……ですが、もし、放送で百合の兄の名前が呼ばれ、
百合が私達に襲い掛かるような事になったら」
「……」
「その時は……何が何でも百合を止めなければなりません」
もし、本当に百合が襲いかかるような事になれば、
その時は、百合を殺さなければならなくなるだろう。
直接的な表現こそしなかったが、一輝には伊織の言葉の意味はすぐに伝わった。
「……そうならない事を祈るよ」
「……私もです」
最悪な事態は起きてくれない方が良いに決まっている。
伊織も一輝もそう願った。
(……そう言えば……樹月は無事なんでしょうか)
◆◆◆
お兄ちゃん。
今貴方はどこにいるの、何をしているの。
まだ生きてるよね?
私と会う前に、死んだりしないよね?
大丈夫だよね?
もし、もし。
お兄ちゃんに万一の事があったら。
私は――。
【E-7/豪邸/一日目/昼】
【土御門伊織@オリキャラで俺得バトルロワイアル】
[状態]:右肩に銃創(処置済)
[服装]:特筆事項無し
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1)、投げナイフ(4)
[思考・行動]
基本:生き残る。
1:とりあえずは殺し合いには乗らない。
2:阿見音弘之に次に遭遇したら必ず殺す。
3:青木百合が襲い掛かってきた時は始末する。
4:放送を待つ。
5:そう言えば樹月はどうしているだろう。
[備考]
※俺得オリロワ参加前からの参加です。
【川内一輝@需要なし、むしろ-の自己満足ロワ3rd】
[状態]:腹に銃創(処置済)
[服装]:特筆事項無し
[装備]:大鋏
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1)
[思考・行動]
基本:殺し合いには乗らないでおく。
1:放送を待つ。
[備考]
※マイナー参加者ロワに飛ばされる瞬間からの参加です。
※傷の痛みにより行動に支障が出ています。
【青木百合@DOLバトルロワイアル2nd】
[状態]:健康、精神不安定
[服装]:特筆事項無し
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(2)、斧
[思考・行動]
基本:兄・青木林の為に行動する。
1:……お兄ちゃん……。
[備考]
※DOLバトルロワイアル2nd、ゲーム離脱後からの参加です。
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最終更新:2013年02月04日 17:55