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長門有希の憂鬱IV 未公開シーン 五章

最終更新:

hiroki2008

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身の上話捏造の部分


使われなかった別のパターン
内容的には変わらないが文章が詰められてない



「ハルヒにどう説明するかだが」
「それがいちばんの難題ですね。新川の面は高校のときすでに割れていますし」
「この際だから本当のことを話してみたらどうだろう」
「長門さんがヒューマノイドインターフェイスだと教えるんですか?」古泉が信じられないという顔をして俺を見た。
「バカ言え、身内がいないと言うだけだ」
長門が宇宙人だなんて教えたら地下二百メートルの研究施設に監禁して研究解剖しちまうぞ。

「あのなハルヒ、お前にずっと言ってなかったことがあるんだが」
「なによ」
「前に長門の親族がどうとかいう話をしたことがあったろ」
「有希が引っ越すかもしれないとかいうあれ?」
「あれな、実は嘘だ」
「ふーん」
いまさらなに言ってんのよ、ちゃんと事情を説明しなさいよ一字一句正確に!と、クビを締め上げられる覚悟だったのだが、なんなのだこのふーんは。
「驚かないのか」
「ほかにもなんか隠してるわよね」
こ、これはとんだやぶ蛇でしたなぁはっはっは。秘密がひとつ日の元に晒されれば芋づる式に明らかになるのは考えてみりゃよくある話で、今まで散々嘘をつき通してきた狼少年がひとつくらい正直な話をしたところで誰も信じてはくれまい。
「うう、そう突っ込まれると非常に困る」
「まあ人間隠し事のひとつやふたつはあるもんだし、いいわ」
それ以上追求しないのか、いつのまに人間がそんなにでかくなったんだ。でかいのは態度だけかと思ってたがイテテ耳ひっぱるなって。
「それで、有希の親類がどうしたって?」
「実はあいつ、身内がいないんだ」
「そう……なの?」
「ああ。両親は確か小さい頃に事故で」
「交通事故?」
「いや、飛行機事故じゃなかったかな。外交官とか言ってたから」
なぜかエルサルバドルという地名が脳裏に浮かび飛行事故を捏造してしまった。嘘が嘘を呼んで雪だるまとはこのことだな。しかもさっき嘘を謝ったばかりなのに。
「結婚式に出てくれる親族代表がいないから別の人に頼もうかと思ったんだ」
「そうなんだ……」
ハルヒは妙に深刻な顔つきになり、
「分かったわ。あたしが身元引受人になる」
あのハルヒさん、身元引受人ってのは警察のやっかいになったときにちゃんと更生させますって書類を書いて身柄を引き取るやつのことなんですが。
 どうでもいい突込みをしているとドアが音もなく開いて長門が入ってきた。
「有希!有希!もうなんであたしに相談してくれなかったのよ」
まるで雨の日の公園で捨てられた仔猫を見つけたかのように、ハルヒはやおら涙目になって長門に抱きついた。こういう不幸な身の上話には弱いのかもしれんな。最近のハルヒはなぜか泣き上戸で映画を見ても安モノの恋愛ドラマを見てもところ構わずよく泣く。気のせいかもしれんが、たぶん古泉と付き合いだしたあたりからだな。
「……なんの、話」
「あんたが身寄りがないってことをたった今聞いたのよ」
「……」
いったいなにを泣いてるんだと、長門はちょこんと首をかしげて俺を見た。俺は両手を合わせて、スマン長門適当に話を合わせてくれと唇だけを動かして伝えた。
「……そう。両親は十八年前、ホンジュラス経由で渡航中に飛行機事故に遭遇。テグシガルパ空港当局者によれば着陸時に上空を覆っていた雲のため視界が悪く、滑走路をオーバーランした」
って長門、話が合いすぎてて逆にあやしいぞ。仮にも不幸な話なんだから少し悲しい表情をしてくれ。
「今までずっと知らなくて、ごめんね」
「……」
長門に仮の親族代表を用意しようとしてるだけなのに、この妙にチクチクと胸を刺す痛みはいったいなんなのだ。
「ま、まあ湿っぽい話はその辺にしてだな、長門の親族代表を誰かにやってもらえないか探してて、」
「あたしが有希の親代わりになるわ!」
「無茶言うな、お前は長門と同い年だろうが」
正確には長門のほうがずっと年上なのだが。天文学的時間で。
「じゃ、じゃあうちの親の養女でもいいわ、あたしの妹ってことにすれば。里帰りはうちの実家に来ればいいじゃない」
まさかそこまで言い出すとは考えていなかった。古泉は右手のグーを左の手のひらにポンと打ちつけ、ナルホドその手がありましたねとうなずいた。感心してる場合かよ、そんな無茶苦茶な親族関係が発生したら俺の周辺の家計図はどうなる。ハルヒが俺の義理の姉になっちまうぞ。ハルヒの尻に敷かれるのは古泉だけで十分だ。って俺も生涯尻に敷かれてきたような気がしないでもないのだが。
「ハルヒ、頼むから正気に戻れ。お前は俺たちの仲人だろ」
「そ、そうだったわね」
「安心しろ、長門の遠い親類って人に頼もうかと思うんだ。お前も知ってる、新川さんだが」
「あの渋くてかっこよくてダンディな新川さん!?あの人が有希の親類だったの?」
ハルヒはなぜかダンディというところを強調して発音した。これからはダンディ新川と呼ぼう。

身の上話捏造の部分


ハルヒプランニング
ハネムーンの話は後日書く予定なので使われなかった



 ハルヒが海やら山やらの写真がでかでかと載ったパンフレットを何冊も抱えてきた。旅行代理店でもおっぱじめる気か。海つっても俺が知ってる海水浴場とは色も規模も違うし、山つっても俺が毎日見ている坂の上の山とは大きさも景観も違った。
「ねえねえ有希、ハネムーンはどこがいい?ハワイ?スイス?費用は全額会社持ちでいいわよ」
太っ腹なのはいいんだがなハルヒ、後になって返せと言われても困るからな。ハネムーンか、考えてなかったな。やれやれ、決まってないことが多すぎるぜ。長門はどうしたらいいの、という感じで首をかしげて俺を見た。
「いまどきスイスに行っても雪は少ないだろう。行くなら南仏とか南イタリアとか、地中海沿岸の避暑地だな」
「なにミーハーなこと言ってんのよ。もうプロバンスは地元住民より観光客のほうが多いんだから」
「じゃあせめてシシリア島とかギリシャの片田舎とか」
「あんたより有希はどこに行きたいの?」
ヒューマノイドインターフェイスがまったりと観光して異国情緒を楽しむなんてことが、実際あるとしたらそれはそれで面白いんだが。長門は少し考え込んだようだったが、
「……彼と一緒なら、どこでも」
「くーっ、妬けるわねぇ」
ポッと頬を染めてみせる長門は最近、萌えポイントが上昇中だ。ってハルヒ、なにお前まで喜んでんだ。

 うちの親から長門の両親に会わせろと散々言われていたんだが、時間もないんで挨拶の二次会で結納を済ませてしまいたいところだ。


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