触手対決!
複雑に入り組んだ建築物が建ち並ぶ無機質な区画を走る。走る。自分がどこに居るのかわからない。なにしろ夢見花卒羽は希望崎の人間ではなく、妃芽薗学園の生徒なのだ。既にロングスカートは脱ぎ捨て、ホットトパンツ姿の六脚歩行。全力疾走だ。
襲撃を受けた。卒羽は、妃芽薗サバイバルゲーム部の仲間と共に、希望崎サバゲー部と技術交流を深めるために希望崎へやって来ていた。もっとも技術交流というのは妃芽薗の外出許可を取り付けるための題目に過ぎず、実態は合同コンパである。
その平和な交流会が、何者かに武力襲撃された。希望崎で部活道連合間の緊張が高まってることは聞いていたが、これほどまでとは。不意を打たれたサバゲー部は散り散りになって逃げた。妃芽薗のみんなともはぐれてしまった。
みんなは無事だろうか……ゲリラ戦は妃芽薗サバゲー部の得意とするところ。きっと大丈夫だろう。今は自分の身を守ることに専念……ザンッ! ひた走る卒羽の前に何物かが立ち塞がった!
赤い髪の少年。体格は大きくない。いや、むしろ少女のように華奢だ。先程の襲撃者たちの一人だ。先回りされた。やはり土地勘がないと厳しい。「妃芽薗サバゲー部、夢見花卒羽です。……みんなは無事かしら?」卒羽は敵を睨み付けた。
「非公認・葦菜部、一一です。……ふふ、おいしかったよ」そう言って敵は一枚のポラロイド写真を投げてきた。卒羽は右三つ編み触手で写真をキャッチする。……そこには蛸足触手に凌辱される妃芽薗の仲間が写っていた。「部長!? みんな……!!」
「くっ……羨ましい!」卒羽は恍惚とした表情を浮かべるみんなを見て悔しがった。そう、卒羽は触手が大好きなのだ。「えーっ、意外な反応!? でも、だったら話は早いな」一一は……いや、一一に擬態したマジック・ミミックオクトパスはズボンを下ろし触手を解放した。
……
「ふぅ……残念、勝っちゃったか」なんか体液をぶっかけられたり、いやらしく絡みつかれたりはしたものの、結局は卒羽が無傷で勝利した。「残念だけど、弱い触手には興味ないの。……動かなくなっちゃったけど、死んでないよね?」だが生死を確認している暇はない。卒羽は再び走り出した。
(おわり)
最終更新:2014年07月26日 20:06