(前回のあらすじ)
弱小文化部のくせに生意気だって生徒会にいじめられた
そして、どらえもんを召喚したら、たわけって言われた。
・四囲美追記
私達、フォークソング部は、各国の民謡や伝承を研究するクラブです。
その中には世界に散らばる予言詩の解析・解釈なども含まれており、
日夜その解析を日夜(カラオケ行ったりお茶をしばいたりする間とも
いう)行っていました。
”7月、空から恐怖の大王が来る。
その余波はアンゴルモワの大王を蘇らせるだろう
マルスの前と後の期間を首尾よく支配するために。世界オワタ。”
そんな最中、研究課題の予言詩の一節である『アンゴルモワの大王』様が
(正確には女王様がでしたが)今年の7月うちの部に降臨しました。
驚きの展開の連続です。
それはそれで色々ありましたが、それから数カ月後、今度は生徒会による
廃部の一方通告が発生。我がフォークソング部最大の危機を迎えました。
そこで私はメアド交換を成功させていた前述の宇宙的存在の女王様に
コンタクトを取り助力を仰ぐことにしたのですが…。
◆◆部室
机の上に置かれた携帯は、呼び出しに応え、10数センチの立体映像を浮かびあがらせる。
黒帽子を被った女性の姿をしたその存在は一連の話を確認すると私達にこう告げた。
『レギュレーションは確認した。結論でるだけ無駄だな。ヤメトケ。
第一お前らだと参加以前に味方陣営に出場自体握り潰されるんじゃないのか?』
学園の「鬼雄戯大会」は部活動連合間で争われ、得点を稼ぐルールとなっている。
そして最も多く得点を稼ぎ優勝した部活動連合に部費の支払いが約束されるのだ。
彼女の言う味方、この場合は屋外文化系部活動連合ということになる。
『部連が対抗戦と銘打っている以上、魔人の参加がほぼ前提だからな。
ある程度の戦力有してなければ相手にポイントを与えるだけの足手まといになる。
そんな中、一般生徒が私もでたいでーすとかいっても、通る話じゃないだろう。
そのまま行方知れずになって翌日男子便所に転がされている可能性のほうが高そうだ。』
「????」
相変わらず歯に衣を着せない…。
英子は意味が判らなかったらしく眼をぱちくりさせる。
「文科系の部連は話を聞くにそこら辺割と甘いみたいです。今の部の表明状況見ても
参加自体は大丈夫かと思います。ただ…」
『運動部はガチ選抜してくるということだろ』
「???」
「…流石の女王様でも生徒会と運動部、二つ同時に相手しての勝ち抜けは難しいですか?」
こちらの投げかけに女王様は鼻で笑った。
『煽るなよ。前の騒動は「学園全体の危機」だった。今回は単なる学校行事だ。これは
元来お前達だけで完結すべき問題なんだよ。わらわは子供の喧嘩には関知せん。』
「無理筋ですか」
『無理筋だ。だいたいアイツが自分の設立した部の進退の1つや2つ気にする玉か。』
私は項垂れた、予想はしてたけど、うん、外から見たら”それだけの話”だよね。
「…ごめん。英子、私、貴方に余計な期待持たせちゃった。」
「??…あっ」
そこでようやく、私が女王様に部の”代打ち”を要請していたこと、そしてそれを
筋違いだと断られたことを理解したようだ。英子の涙腺が再び緩み、瞳がうるうるとしだす。
その様子を見、女王様が軽く舌打ちをした。
『泣くなよメンドクセー。それ以上泣くならこの件は打ち切りだ。部のことは諦めろ。』
私は英子を見た。
私はその感性豊かなところが好きだった
その彼女は天を仰いでいた。虚ろに。何を見る出なく。そして彼女はそのまま、
―ごきゅん。―
((ごきゅん?))
泪を涙点に流し込んで飲みほした。
『……な、泣くの堪えやがった』
「っていうか飲みこんだ。なんて器用な真似を。」
英子は―
「ながない。だから部のことも絶対諦めない。」
絶対そこだけは曲げようとしなかった。
なんでそこまで頑張るの、私はそういいかけた口をつぐむ。いや言えなかった。
私はこの子がどうしてここまで部の存続にこだわるのかを知らない。
だけれども、聞いたら返ってくるだろう言葉を私は判っているから。
先輩との―――。完全に嫉妬だ。
私の内面の心境を余所に女王様は爆笑して手を叩いて喜んでいた。
『くくく、相変わらず面白い奴だ。
では助力はしないが踏ん張った褒美に助言はしてやろう。
この局面、詰むか詰まざるか―でこ娘に聞いてみるといい。』
◆◆部室2
『お前達も知っていると思うが、アイツは能力ちょっと特殊でな。その特質上、
大銀河のときもそうだったが、幾つか高い精度で予防線を張っていた。
お前に像の管理を頼んでいたのなら同じく奴はお前達が危険になった際を見越した
保険やら指示を何某かかけているはずだ。
英子、像ではなく、もしお前達自身の身にピンチが迫ったら、こうしろとか
何か云われてなかったか?』
英子はぽかーんと3秒ほど呆けた後、やおら猛ダッシュで今は上が空席となった台座に
向かった。下の引き出しを開け、奥の方から一枚取りだし掲げる。
「”ぶっちゃけどーしようもない”ほどの状況になったらこれ使いなさいって。」
「これはドリムス専用のCD。本体、部室にあるわよね。」
『再生してみろ。Rock'n'Rollども』
ドリーム・ムスカ。
隠れダゲゲーで有名なその家庭用据え置き機にCDをセットし端末を起動させる。
英子が気を落ち着かせようと大きく息を吸い込んだ。
常識で考えると恐らくこれはビデオレターで先輩のメッセージである。
先輩絡みだと見終わった後、爆発四散ぐらいしそうだし、一字一句、見落とせない。
その様子を四囲実と女王は見やる。
常識的に考え、英子の『詰み』で終わりだ。
たぶん「後輩」の猪突猛進を予測しての「先輩」の諌めの言葉が入っているはずだ。
それで彼女も折れるはずだ。
第一、録画は1年以上前なのだ、複雑な状況に対応できる具合的な指示など出せるはずもない。
(ん/でも/まてよ)
(先輩/先輩/あの特級馬鹿に、常識なんてあったっけ)
††
ぷぉぉぉぉん と
土星のマークが浮かんだ。
次に浮かんだのは
―マイクを2本ご準備ください。― の文字。
とりあえず四囲実が云われた通りに通り、マイクを用意する。
(そういや3人でよくコレ使ってカラオケしたっけ…)
そして
「ん?」
「あれ?」
『……なんだと』
” MAX~HEART~♪ ”
「!?」
張りのある威勢のいい声とともにそれが始まった。
―――――――――――――――――――――――――――――――
☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆
『DANGEN!!ふたりはダンゲロス子☆』
歌;英子&四囲美 withのもじ
(ロイヤルティは適当に支払うこと)
☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆
―――――――――――――――――――――――――――――――
画面に映ったテロップと共に
てぃれってぃれ~、てぃれってぃれ~と聴き馴染みの
あるイントロ音が流れ始める。”ふたりはダンゲロス~こ?!”
『いやいやいやいや本気で意味わかんねぇぞ、なんだこれ』
「こ、この曲は!?」
「!英子、マイク。出だしはお願い。」
「うん、行くわよ!四囲美」
マイクを受け取った英子は小指と人差し指を立て歌い出す。
A「一難去って、また一難 ぶっちゃけありえない~♪」MAX~HEART~♪
C「♪制服着ててもふたりは むちゃくちゃタフだし~」MAX~HEART~♪
それに応えて四囲美。
AC「お互いピンチを乗り越えるたび、♪ A「強く~」C「近く~」なるね―♪」
A&C&N( イエイ! your best! my best!)
A&C
「生きてるんだから 敗北なんてメじゃない! ヒューー!
笑う門に福来るでしょ! ネガティブだって ふきとぶ! いのちの花~咲かせて! 思いっきり~
もっともDAGEROUS!!
だんげだんげだんげだんげろす(N:Your Best Friend!!)
ふたりはふたりは
ふたりはダンゲロス子?! だんげだんげだんげろす MAX~HEART~☆」
===========================
終わりがけ、二人で完璧な決めポーズを決める英子と四囲美。
そしてムスカの採点。得点は…
ちゃららららららららららん
100点!
キャバーン!!画面には毛蟹が乱舞、文句なしの最高得点だった。
ヤッター!Wに跳びあがってハイタッチする二人。
先ほどまでのネガティブさはもう綺麗にぶっ飛んでいた。気分爽快青空模様ヒャハー。
『・・・・・・・・・あー。』
そしてその様を何とも言えない表情で見やる立体映像のクイーン。
「いやー久しぶりにキマッターって感じ。でもこれって、ぶっちゃけ、
なんの問題解決になってなくない?ホワイト。」
「先輩らしいといえば先輩らしいけど、でもブラック?なんか違和感が…」
四囲美は英子を見た。
彼女はとてもどこかでみたことのある黒いフリル衣装をいつの間にか着ていた。可愛い。
英子は四囲美を見た。
彼女はとても既視感のある白いフリル衣装をいつの間にか着ていた。可愛い。
小首をかしげる二人。
「…。」
「…。」
『なあ、お前らのその衣装って確かプリキ…
「「こ、これは伝説の戦士ダンゲロス子の衣装!!!!」」
じゃね』
女王の革新をつく鋭いコメントを二人の叫びが切り裂いた。
「なんてこと、伝説の戦士の顕著化現象が起きるなんて!
予言の書の7月の詩にはそんなこと一言も書かれていなかったのに!!」
「いやまって、続きがあったって解釈でいいんじゃない。
この場合当て嵌まるのはポポタマスの叙述詩の第三節!」
妙に盛り上がっているフォークソング部2名。
『…いや
アイツ
んな恰好してなかっただろ。
それにさっき、自分達のことブラック、ホワイトとかナントか…』
「ああ私たちなんて所詮EDで主人公の後ろでタンバリン叩いてるあたりが精々っていう存在、
仮初でもダンゲロス子様の名を騙るなんてなんて恐れ多いっ」
「こう背後的な無言の圧力に潰されそう。圧迫祭よぉぉぉぉ今度こそ圧迫祭の開催よぉぉぉ」
人の話を全く聞かない二人に対し女王(なお彼女自身も他人の話は全く聞かないが)は
やおら端末をどこからか取り出すとポチっとスイッチを押した。
『はい、フォーク(直角落下的な意味で)でドン。』
「「ふぁ(浮遊感)」」
それは平然と行われるエゲツない行為。
二人のいた床が消え、次の瞬間、水柱が10m直下の水面で二本、立ち上がった。
◆◆部室3
二人がはい上がってきたのは水音を立ててからきっちり3分後の出来ごとであった。
せっかくの衣装が水浸しである。
「人の部室になんで勝手に/いつのまに、落とし穴なんて作ってるんですか!」
『趣味だ。』
二人の抗議に、にべもなく応えると女王は端的に告げた。
『アイツの能力発動を確認した。過去の例から考え効果は2週間から最長1カ月。』
顔を見合わせる二人。
『体力はB、運動性はCってとこだな。魔法少女化することで一時的に一般魔人と
同程度の身体能力をお前達は手に入れたようだ。
ふむ、お前らの主張を尊重してフルソンブリンク「ダンゲロスコカッコカリ」とでも
名付けておこうか。後、継続して使えるかは親元の判断次第だ。
しかし最低限の要件だけ満たしてあとは『任せた』か。らしい回答だすじゃねぇか』
「「・・・・」」
完全に絶句してしまった二人に対し、女王様はじゃ〆の台詞行くぜとそれはそれは
楽しげな笑顔でこう続けた。
『数多の強豪魔人どもがひしめく中をモブポジが出しぬいて何かをやり遂げる。
そういうのがストーリー的に一番、燃えるんじゃないか。人生谷あり崖あり。
めでてーな。フォローはしてやるから、今回も気張ってやれ。』
「「いいいい、イエッサー!」」
『やれやれ、サーではないアラサーと呼べ。』
かくて
武も勇も持たない少女たちの部と友を守る戦いが再び、始まる。
(『英子と四囲美の人間革命R』・了)
◆◆
???「んんんーーー!!!
???「ニャーン(どうしたんだい)」
???「なにかどこかでライバルがまた一人(二人?)誕生した気がするニャ!同業者的に」
???「ニャー?(ネタ的に?)」
???「ネタ的に」
(to be continued)