魅羽とタマ太の大冒険! 第6話『VSセント・バーナイト』

魅羽とタマ太はとっても仲良し。
いつも一緒にお散歩するの。

「今日は大会に備えて、購買部に買い出しにいこう!」
「ニャーン……!(購買部のお姉さん、密かに巨乳なんだよな……!)」

魅羽とタマ太が購買部へ向かって通路を歩いていると、なんということでしょう!
馬術部の先輩と馬達が大怪我して倒れているではありませんか!
シベリアン・ハスナイト先輩とハスキー馬も血塗れです。

「先輩……どうしたんですか……!?」
「ニャーン……(チッ、嫌なことを思い出させる光景だぜ……)」

「う……うぅ……みゅーちゃんか……。情けない。不意打ちを受けて総崩れさ……」

どうぶつはつよい。これはじょうしきです。
つまり、どうぶつを操る技能を持った馬術部は、ふつうに考えて超強いことです。
だから……奇襲によって潰されました。

「馬は開けた地形で最大限の能力を発揮する……だから狭い通路で待ち伏せしてやがった……卑怯な奴め……!」

聞くと、たった一人の敵によって馬術部の正騎士全員が倒されたとのことです。
地形効果を生かしたとは言え、恐るべき戦闘能力です!
特に犯人は決めてないので『馬術部は俺が潰したぜ!』ロールをしたい方は御自由に御利用ください。

「これじゃあ鬼雄戯大会にはでられない……このままでは馬術部が潰れてしまう……」
ハスナイト先輩は、重傷を負った自分自身よりも、馬術部の将来を心配して悔しがりました。
「クウーン」
ハスキー馬達も不安げに鳴き声をあげます。

「大丈夫です!」
魅羽は力強く言いました。

「みゅーちゃん……?」
床に横たわるハスナイト先輩が、不思議そうな顔で魅羽を見上げます。

「大丈夫! 馬術部は私が……ううん、とにかく大丈夫です!」
魅羽は自分がミケナイトとしてエントリーしていることを言い掛けましたが、やっぱりやめました。
こんな状況でも、いや、こんな状況だからこそ、先輩達は魅羽のことを止めるでしょうから。
だから、魅羽は何も明かさず、ただ力強く微笑みました。
その笑顔の意味はわかりませんでしたが、ハスナイトは少し安心して、目を閉じ、意識を失いました。

「ニャーン(こっちだぜ)」
タマ太が『保健室』と書かれた水色のタオルをくわえて走ってきます。

それを追って保健室の先生。
「泥棒猫め待てーっ! ……あっ、この有様は一体!?」



色濃い闇をたたえた、死の洞窟を思わせる渡り廊下その1。通称“B4”。

少女が一人、立っている。
その頭には、猫耳ヘルム。
その手には、スコップ。
その足元には、死体がひとつ。

既に物言わぬこの死体もまた、少女の姿をしている。
もっとも、姿は少女だが、その正体は長い時を経て力を蓄えた強大な存在であった。
恐るべき敵だった。

強靭な耐久力を誇る相手に、スコップの物理打撃だけで挑んだならば確実に負けていたことだろう。
スコップに魔法的エネルギーを乗せて打ち込み、体内に直接“能力”を作用させる。
魔法少女能力を応用した一種の“発勁”が勝利の決め手だった。
一方、相手は高い耐久力を最大限に生かした戦法を使ってきたが……それが命取りとなったようだ。
少女の姿をした星霜の魔女は、自らの技によって滅びたのだ……。

はじめて人を殺した。不思議と落ち着いた気分だ。
冷たい空気を深呼吸。
血の匂いに胸が悪くなるが、この空間に満ちた魔法的な力が戦いの傷と消耗した精神を癒してくれる気がした。

次に殺すべき敵が、通路の向こうからやってくる。
白い衣に身を包んだ小柄な少女。
青い瞳。つややかな緑の髪。見知った顔だ。

彼女と私は、風紀委員とトラブルメーカーという間柄であり、お互いに疎ましく思っていることは事実だ。
しかし、どことなく自分と同じ雰囲気がある気がして、私は彼女のことは嫌いではなかった。
彼女も、そう思ってくれてたらいいのだけれど。

「……先輩とは、いずれ戦う運命にあると思ってました。でも、こんな形で戦いたくはなかった」
風紀委員の少女は、哀しげな表情で武器をスピンさせる。

「同感。もっと仲良くケンカしたかったよ」
トラブルメーカーである私はそう答えて、スコップで地面を数度、衝いた。

これが、私と彼女の最期の戦い。
だから精一杯戦う。全てを賭けて。
戦いは二人のいずれかが死ぬまで終わることはない。
これは、ハルマゲドンだから。

……いや、私はもう結末を知っている。
私は彼女に殺されるのだ。
私を殺す少女の名は――南海螢、あるいは魔法少女マジカル☆ドルフィ。



「あなた! 気をしっかり!」
保健室の先生に声を掛けられ、魅羽は我に返りました。

先輩達が倒れたショックで、なにやら恐ろしいヴィジョンを見ていたようです。
(いや……もしかするとこれはヒントかもしれない……)
魅羽は気付きました。
謎めいたヴィジョンの中に、水星ちゃんの『辰星鉄』を破るヒントがあることに。
(相手の体内に狩るにゃんフィールドを打ち込んで循環器系に作用させれば……!)

「ニャーン(それより購買部の姉ちゃんのおっぱい見に行こうぜ)」
タマ太が考え込んでる魅羽の、ジャージの裾をくわえて促します。

「あっ、そうだ。装備を買いに行かなくちゃ」
ハスナイト先輩達のことは、先生に任せておけば大丈夫そうです。
それなら、馬術部のために魅羽に必要なのは勝利あるのみです。
魅羽とタマ太は購買部に向かいました。

「狩るにゃんイクイップメント!」
魅羽は物陰でミケナイトに変身!
自分が買った装備をミケナイトが使ってたら怪しまれるから、買い物は変身してからするのです。
「ごめんくださーい。いい武器ありますかー?」
「ニャーオ?(いいおっぱいありますかー?)」

ところが、購買部にはいつものお姉さんはいなくて、代わりにセント・バーナイト君が店番をしていました。
「あのー、お客様……フルフェイスヘルムでの来店は困ります……」
しかも、却って怪しまれてしまいました。

ガシャン。
仕方ないので魅羽は、フェイスガードを上げて素顔を見せます。

「あっ、えーと、みゅーちゃん先輩じゃないですか!」
希望崎学園中等部三年生のバーナイト君は、時々馬術部にも来ているので魅羽のことも知っています。

「お願い、バーナイト君。馬術部のみんなには、私がミケナイトだってことは秘密にしてくれる?」

「いいですけど……危ないですよ? みゅーちゃん先輩、まだ騎士見習いじゃないですか。ハスナイトさんとか、正騎士の皆さんに任せておいた方が……」
中三にして既に騎士称号を得ているバーナイト君は、魅羽のことを心配してくれてます。

「ところが、そうもいかなくなったの」

魅羽から馬術部正騎士が全滅した話を聞いて、バーナイト君は鉄仮面の奥で顔を真っ青にしました。見えませんが。
「そんな……馬術部がなくなったら僕のバーナード馬はどうしたら……」
バーナイト君は、事情があって故郷を離れて購買部に住み込みで働いている苦学生なのです。
一緒にいるセント・バーナードという品種の馬は親友です。
もし馬術部が潰れて馬小屋がなくなってしまったら、バーナード馬が行く場所はもうどこにもありません。

「ワオーン……」
バーナード馬も悲しげにいななきました。

「大丈夫! このミケナイトがばっちり解決します!」
魅羽は自信満々に胸を張って言いました。

「ニャーン!(背はちっこいけどミウはおっぱいが大きいからな!)」
タマ太も胸について言い張りました。

「うーん、不安しかない……」
「ワン……」
バーナイト君たちはまだ不安顔です。鉄仮面で見えませんが!

「ふー、仕方ないにゃー。中学生にはまだ早いかもしれないけど、特別に不安がなくなるおまじないをしてあげよっか!」
「ニャッ!?(その言い方なんかエロいぞ!?)」
魅羽は鞄の中から特製マタタビを取り出して、二人と二匹は仲良くマタタビを吸いました。
するとどうでしょう!
不安はどこかに飛び去り、希望がぐんぐん湧いてきました!
鬼雄戯大会を勝ち抜き、馬術部を守る決意を新たにトキの声を上げます!

「狩るにゃん! 狩るにゃん! 狩るにゃん!」
「ニャーン! ニャーン! ニャーン!(おっぱい! おっぱい! おっぱい!)」
「アイテム積むぞ! アイテム積むぞ! アイテム積むぞ!」
「ワオーン! ワオーン! ワオーン!」

叫んでみて、バーナイト君は良いことに気付きました。
「そうだ! 僕が荷馬車でアイテムを運べば、みゅーちゃん先輩は普通の二倍ぐらい装備を使えるよ!」
「ワン!」

それを聞いて魅羽たちも大喜び!
「やったーありがとう! これでいっぱい勝てる!」
「ニャーン!(おっぱい勝てる!)」
こうして魅羽たちは、水星ちゃんと戦うための万全の準備ができたのでした。

めでたしめでたし。






最終更新:2015年03月08日 11:38