真野来人 1ターン目開始SS

「鹿を追う虎を、人は卑怯と言いはしない。なぜだか解るか?」
希望崎学園校舎屋上。誰も居ないその場所で、真野来人は静かに語る。
「俺にはわかる。虎が鹿を追えるのは、その為の機能を備えているからだ。虎はその為に、全てを捧げているからだ!」
言いながら、ゆっくりと後退する。距離を取るために。助走をつけるために。
「虎は草を食べて生きてはいけない。だが代わりに!誰にも負けぬ“速さ”を使い生きているからだ!」
コツコツと、床を靴で叩く。感触を確かめる。全力で走るために。
「故に!俺も自分の行動を!卑怯とは思わない!そこにある獲物を追わぬことは!俺自身の速さを!愚弄することだからだ!」
前を見る。眼下には広大なグラウンド。そして彼にとっての獲物……御来光滝暗闇!

「さあ!全速全開で!駆け抜けるぜ!」

床が爆ぜ、轟音が鳴り響く。それより速く、来人は奔る。
空を、風を切り裂きながら。最速の男が今、グラウンドに降り立つ。






最終更新:2014年12月31日 10:59