水星とジャグリングありさ
水星と柊は屋外文化系連合のメンバーにあいさつ回りをしていた。
その道中、中庭に着くと、ジャグリングありさが部活の練習に励んでいた。
「こんにちはー」「こんにちは」
「フッフッフ、こんにちわ……」
「私達、屋外文化系連合の方々に挨拶をしてまして。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします……」
ジャグリングありさは会話中でも器用にボールジャグリングをしていた。
「そのボールって何個まで投げられるんですか?」
「フッフッフ、私の魔人能力、『ぐるりぐるりと回りませ』は一度投げたらどんなものでもジャグリングできる能力……理論上は何個でも、どんなものでも投げ続けられますよ……」
「へぇー! ジャグラーにとってこれ以上ないと言っていい程適した能力ですね」
「大道芸部ってボールジャグリング以外に何をやってるんですか?」
「皆さんご存知の生徒会長、よしおさまの様なパントマイムを始め、種目は多岐に渡りますよ…… ジャグリングでもボール以外にもボーリングのピンみたいなクラブを投げるクラブジャグリングがありますし、皿回し、二つの棒で一つの棒を器用に操るデビルスティック、三色の箱を巧みに操って入れ替えたりするシガーボックス、中国ゴマとも呼ばれる二本のハンドスティックに通した糸でコマを回すディアボロなどもあります……」
「種類豊富なんですねー」
「面白そうなものがいっぱいですね」
「どうですお二方、何か体験していきませんか……? 私は基本ボールジャグリングがメインですが、基礎的な技なら他の道具も教えられますよ」
「え、いいんですか? じゃあお言葉に甘えて……うーんと、その三色の箱やってみたいです!」
「じゃあ、柊先輩がそれにするなら私もそれで」
「シガーボックスですね。了解しました」
ありさは道具箱からシガーボックスを取り出し、二人に渡した。
「外側の箱の中央をそれぞれ手で持って下さい。では、基本の動きから。 まず、シガーボックスを持ったまま足腰を使って身体を上下させてください……」
「こう、ですか?」「ふむ……」
「そうそう、そんな感じです…… シガーボックスはほとんどの技でこの動きが重要になってきますからよく覚えておいてくださいね…… 今度はその動きの途中に箱を一瞬離してまた掴んで下さい…… 箱を浮かせることを意識すると良いですよ……」
「よっと」「むっ、バラバラになって落ちてしまいました」
「箱の側面には摩擦でくっつきやすくするシートが張ってあるので、摩擦を意識してちょっとだけ中央に向けて力を与えるようにしてから手を離すとうまくいくのではないでしょうか……」
「お、できました」「やったね!」
「その調子です…… 今度は一番オーソドックスな技、『中抜き』を教えましょう…… こんな感じに、片方の箱から手を離し真ん中の箱をとって、元々持っていた箱を挟み込むんです……」
「んー?」「むむむ……」
「えーとですね…… さっきの手を離して掴むだけの動きを思い出して下さい……」
「これでどうだ! あ、できた!」「あ、先輩ずるいです。私も……うーん、ダメだ」
「箱を浮かせるようにして……なるべく早く手を動かして……」
「ふむ……お、できた」「おー、やったじゃん! 水星!」
「二人共できたようですね……」
「ありがとうございました!」「ありがとうございました」
「フッフッフ、礼には及びません……」
「でも意外とこれ疲れますね、全身を使うというか」「足腰にきますね」
「大道芸部は文化系でも運動系でもない、第三の部活と呼ばれたり呼ばれなかったりしますしね……」
「へぇー」「凄いですね……さすが生徒会長よしおさまがいる部活」
「そのうち公演もありますので良かったら見に来て下さい……」
「はーい」「ではジャグリングありささん、今日はありがとうございました。もし鬼遊戯大会で対戦することになったらその時はお互い全力で戦いましょう」
「フッフッフ、貴方の身体もジャグリングしてあげますよ、では」
「さようならー」「さようなら」
【END】
最終更新:2015年01月02日 00:57