vs蟇郡

「風紀委員長!蟇郡 苛!この名において第12風紀事項を執行する!!」
「くっ!!良く分からんけど、やってやるぜ!!」
風紀委員を名乗る大男は訳のわからない事を叫びながら猛進する。
ぐぎゅるぎゅる。
更にその体に包帯のようなものが巻きついていく。

「オイオイ、オッサン。こんなところでそんな格好して走るもんじゃねえぜ!!」
門司はポケットから紙の束を取り出し空中へ投げ上げる。

「貴様ッ!!体育館にゴミを捨てるかッ!!」
怒る蟇郡は、しかし直後に目を見開いた。
門司の巨大な筆が素早く動くと巻き上げられた紙、いや書道に用いられる和紙、半紙だ。
無数の半紙が周囲の壁や床に勢いよく張り付いていく。
「ベカラズ!!」
周囲に張り付いた紙には字が書かれている。

「むうッ!?『足元注意、転んで怪我をする』だと」
「そうさ、むやみに走らない方がいいぜ。オッサン」
「ぐぬッ」
目の前には既に居合の構えの男
「一文字!!」
刀の一閃、しかし蟇郡にとってこの程度の攻撃を防ぐのは容易である、いや容易なはずであった。
ありえない、この体育館にバナナの皮が落ちている事さえなければ!!
「うおおおッ!?」
一閃がまともに蟇郡の体を切り裂く。
木刀でなければ、いや木刀でなおこの威力。
「ぬうん!!」
「どわっ」
しかし反撃の鞭が門司の体を弾き飛ばす。

「いてて、なんつう硬さだよ」
「このバナナの皮、今までここにはなかった、これが貴様の能力か?」
「へっへっへ。注意はしたぜ。足元注意、走るべからず。俺のベカラズの領域の中で戦おうってんだからそれなりの覚悟ってのはしてもらうからよオッサン」
「俺はオッサンではない、そしてこの能力をどうせふしだらな事に使うのだろう?」
「なんでだよ!!」
「問答無用だ!!」

門司の居合を受けてなお倒れぬ蟇郡の鞭が唸る。
そして。
「ぬおおおおッ」
「なんだこりゃああああッ!!」
突如、蟇郡の体の包帯が蠢き門司を掴む。
「ってオッサン。これはいいのかよ!!これ十分アブナイぜえええッ!!」
「黙れレイプ魔!!」
「違うっ、ってぬわー!!」
強烈な投げによって門司の体が壁に激突!!
「逃がさんッ」
「逃げてねーッ」
追撃の鞭攻撃と居合の交錯。

「そろそろ観念して己の非を認め、おとなしく縛につけい!!」
「い、いやだ。だいたい俺は悪くねえ!!それに、そこだーッ!!」
「何ッ!!なぜこんなところに泡立った石鹸が落ちているッ!?」
蟇郡の巨体が宙に舞う

「アンタにかまってる暇はねえんだよう!!喰らえッ!!」
「お、おのれ。レイプ魔ッ!!」

門司の居合抜刀の構え。
その周囲には淡く黒い影が集まる。
「貴様―ッ!!」
「水墨龍(スイボクドラゴン)!!」

黒き龍のような一閃が蟇郡を弾き飛ばした。

「はぁ、はぁ。て、手ごわいオッサンだった。オイ大丈夫か?おい…」
「……」
「おい、オッサン。えと蟇郡?」
「……」
「死んでる?」
「……」
返事はないただの屍のようだ
「や、やっちまったーッ!?違う、こ、殺すつもりは無かったんだー」






最終更新:2015年01月10日 17:05