負けss レオナVS弾正院

鬼遊戯大会が始まる2時間前ほどから、弾正院は中庭で待機していた。何故か。相手は暗殺者、自分が勝てる見込みはほとんどないからだ。少しでも勝率を上げる為に弾正院は中庭に仕掛けを施していた。同部の後輩には透明人間*を大量に貰っているものの、その一人一人が弱いため、弾正院の盾として存在しているような物だった。* 不倫は文化部プロローグ参照
鬼遊戯大会、戦闘時間の開始10分前、レオナが中庭に到着する。しかし、そこに弾正院の姿は無い。戦闘開始時間の5分前になってやっと、弾正院は息を途切れさせながら走ってきた。にレオナが話しかける。
「暗殺者相手に時間ギリギリとは余裕だね。言っておくけど容赦なんてしないから。」
「いやー写真を現像していたらこんな時間になってしまったよ。参った参った。」
一枚の写真を手持ち鞄から取り出しレオナに見せ付ける。そこには、異常性癖を楽しむ彼女自身の姿があった。
「えっ!?いつの間に撮ったの?」
「いやー本当偶然だよね。」
「だからいつ撮ったのこれ?」
「いやー参った参った。偶然って凄い!!」
「誤魔化すなーっ!」
レオナの叫び声と前後して戦闘開始のチャイムが鳴った。
「殺す。写真も跡形も無く消す。」
レオナが弾正院の視界から飛び出すように膝のバネを思い切り使って横に跳ねる。弾正院は目で追うことも無く一言声をかける。
「それは大変だ。あの写真の入っているネガは学校の外の人に渡してある。僕が死んだら…って手紙も書いてね。」
攻撃体制に入ろうとしていたレオナは行動を躊躇し、一歩後ろに下がる。
「それならそいつも殺すだけ。」
再び攻撃体制に入る。
弾正院は鞄からファイル(男女*例外有りの仲良しフォルダー)を取り出し、中に入っているプリントをばら撒いた。
「それ拾ってくれ…あ。」
内容を一切見ていないレオナはファイル及びプリントを踏み潰した。
「そうだ。君良い体つきしてるし、さっき撮った写真もスキャンダルにしなくても一枚2k~5kで売れるよね!」
フォルダーを踏み潰された腹いせの冗談だったが、弾正院の周りで跳ね回っているレオナには少しだけ効いたようだった。レオナの足が少し止まったのに気付き、弾正院を護衛していた透明人間の一人がレオナに殴りかかる。ダメージは殆ど無いが、弾正院を念動力の使い手と思わせ、牽制することは出来た。続けて透明人間がもう一発叩き込もうとした時、写真云々に関して吹っ切れたレオナが俊敏な動きで弾正院の腹に鋭い突きを入れた。
「殺った。」
内臓を潰し、腹を貫通した感触を手のひらで味わい、標的の死を確信したが、そこには制服の腹は少し破けているが身体は無傷の弾正院が立っていた。身体に鈍い衝撃が響く。レオナは一旦距離を置いた。何が起こったか分からないが、普通に攻撃しても効かない、そう悟ったレオナは、最初に繰り返したように中庭を跳ね回った。しかしこれは先程行った攻撃体制とは違い、相手の死角に確実に入り込み、反応する時間を与えずに攻撃する算段である。高速で動き回ったレオナが最終的に移動を終えたのは、弾正院の延髄の上の辺りだった。
「今度こそっ!」
バキィッ骨が折れる音。今度は手だけでは無い。耳でも確認した。背骨、それも首の部分を折れば即死か、良くても戦闘不能に成る筈である。しかし、またしてもそこには無傷の弾正院がいた。死角にいたものの自らの聴覚を疑ったレオナはまた反撃を喰らう。もう良い、多少の反撃は気にせず、確実に攻撃を当てる。彼女はそう決めた
暗殺奥義『THANATOS-IF I CAN'T BE YOURS-』を使う事に決めたのだ。この奥義は今までの動きは何だったのかと言える程の速度で決める無慈悲な手刀だ。使えば自分も隙だらけになる諸刃の剣だが、当てれば、少なくとも今の弾正院では、透明人間が盾に成っても致命傷を負うことになっただろう。しかし弾正院はここで何よりも速く動く物、即ち『光』を用いた。カメラを取り出し、レオナのいる方角に向けて、シャッターを切る。眩いフラッシュが焚かれた。レオナは目が眩み、手刀を繰り出す事が出来ずに立ち止まった。
「卑怯な手を使って楽しいか。」
暗殺者はもう一度敵の方へ突っ込んだ。フラッシュなどという手には2度と引っ掛からない策を練って。彼女は敵のカメラにに掛ける指だけに注意して、それが押されるような動きがあったら目を瞑りながら攻撃することにした。敵の攻撃は見えないから、目を凝らしても仕方が無い。見えない攻撃に威力はさほど無いので、まずは自分の攻撃を当てる事を優先したのだ。弾正院の指が微かに動く。暗殺者はそれを見逃さず、目を瞑りながら弾正院の顔があるべき所に拳を叩き込んだ。鼻の骨が折れ、顔面が陥没する手応えがある。油断してはいけない事は経験で分かっているので素早く身を引く。やはり弾正院に傷は付いていないが、ダメージを無効化するのにも限界があるのか、汗をかき、深呼吸をしているようだった。あと一撃でも当てれば勝てる、そのような確信がレオナの中にあった。弾正院も、これ以上透明人間の数が減らされれば、戦闘行為は不可能になるだろう事を自覚していた。しかし、その両手はデジタル一眼を握り、目をファインダーから離さない。弾正院にとって中庭は戦場では無く、撮影会だとでもいうのか。
またフラッシュが焚かれる。レオナは弾正院の指を警戒するようにしていたので、光が目に届くより早いタイミングで目を閉じ、敵の攻撃を予想したバックステップで、透明人間の攻撃も避けられた。次の攻撃でこの戦闘は終わる。拳を握りしめ、敵の指を警戒する。そのまま一気に距離を詰め、正面から水月を殴りつける。
一瞬意識が飛んだ。指は動かされていない。レオナが何が起きたか理解する前に服が破け、足は妙な方向に曲がった。
弾正院の手元にカメラは無い。それはレオナの足元に落ちていた。弾正院はカメラを手首のスナップで投げつけたのだ。鼻にカメラが当たり痛みで動きが止まったレオナの服を、透明人間達が総動員で破り取った。そして無理矢理靴下を脱がそうとした個体のミスで脚が折られたのだった。しかしレオナには何が起こったか分かる筈も無かった。弾正院も透明人間の行動を全て把握している訳では無いので、右足を骨折させた事には気付いていなかった。
ジー パシャリ
デジタル一眼は仕掛けられたセルフタイマーで超ローアングルの写真を撮影した。透明人間の靴下要員は仲間からリンチを受けて死んだ。
デジタルカメラを拾った弾正院はレオナに背を向けた。これ以上の戦闘は不利でしか無いと分かっていたからだ。レオナはそれを追いかけ、拳を振り抜く。透明人間2人が粉砕される。少し届いた衝撃に、弾正院は二つ目のファイル(男女の仲良しフォルダーpart2)を落とした。今度こそレオナはそれを拾ったが、フォルダーの中身はレオナとは全く関係の無い人物の[ピー]撮り写真だった。しげしげとそれを眺めるレオナ。気付くとファイル内の写真全てを鑑賞していた。こうして中庭での戦闘は終了した。殺人ほど異常な写真では無かったが、レオナを興奮させる物はあった。次の試合で女子高生那自分賀好世に簡単に服を脱がされたのもその時の興奮のためと思われる。女子高生那自分賀好世もこの写真を拾い、興奮して斎藤ああああに倒され、ああああもこの写真を見て興奮、殺害されたという話もある。しかしここで話された全ては、弾正院が逃げ帰った後に広めた話なので真実なのかどうか確かめる事は出来ないのだった。






最終更新:2015年01月24日 16:08