第1T終了後 関係者は語る
大グラウンド野球場、野球神が存分に野球を楽しんでいる光景を眺めつつ
希望崎学園野球部キャプテン鷹棟 九(たかとう きゅう)は浜星と志筑の試合、いや『死合』について考えていた。
「あれが噂に聞く文芸…文学少女…相手に文を読ませ、殺す者」
鷹棟は震えていた、あのような奥義があの速度で完成し相手を刈るのならば、
「野球に勝ち目は…無い」
野球とは"視る"競技である、打者の構え、捕手のサイン、監督の指示、投手の投球、打者が打った球、
全てを視なければ相手の攻撃はこちらの守備を流れるようにすり抜け、こちらの攻撃は相手の守備を乗り越えることはないだろう。
無論浜星もあの死合にて相手を視続けた、野球ではそれが当然だからだ、そして文芸を読んだ。
「アウトレンジで投げ続けていれば勝機はあっただろうか…いやそれでは攻撃力が足りない上に
相手に行動を読まれ投球を止める文芸を読まされ終わっていただろう、あれが最善だったのだ…」
相手に気まぐれがあれば勝機はあったかもしれない、だが相手は殺人野球も経験してきた鷹棟でさえ経験したことの無い
どす黒い殺意を持って文芸を冷酷に読ませ切り、浜星は最悪に近い眼球喪失という結果を以ってグラウンドに斃れた。
終了後浜星は即刻保健室へ搬送され、部室に帰ってきたのは眼球喪失の治療費500万円の領収書だった、
100万円はスペシャルユニフォームに付いたスポンサーにより賄えたが残りの400万円は野球部の借金として残った。
「やはりあの時止めておくべきだったか…だが最早始まってしまった事だ、借金を返せるようあいつをサポートせねばなるまい」
鷹棟は生徒会室へ帰る野球神を見届けると彼もまた帰宅しようとする。
「さてどうサポートしたものか、今まで1年程キャプテンをやってきたがその経験が通じる場では無いな」
最終更新:2015年02月07日 13:17