ダンゲロスホーリーランドクラブ 2ターン目1戦目SS

――グラウンド

ごうん、ごうん、ごうん

グラウンドに鈍い音が響き渡る。
重さ数十キロはあろうという大鎚が地面にめり込む。
槌に撃たれヒビの入った大地は、意志を持つかのように蠢き隆起し槌を弾き飛ばす。
そしてまた槌が地面に落とされる。その繰り返し。
今やグラウンドは原型をとどめておらず、槌による陥没と隆起した土壁によりまるで塹壕のような障害を形成している。
その中心にいるのは小柄な少女だ。
今にも形成されていく土壁と壕に守られていてもなお、少女の表情に余裕はない。

――!!

地響きとは異なる、鋭い音が響く。一拍遅れて土壁が一枚、中程よりへし折れる。
折れた土壁には拳の跡。
誰が打ち込んだのか、姿はない。
改めて周囲を見回してみれば、同じように倒れた壁が何枚も見つけられる。
外周部より始まり、内へ、内へ、彼女へと近づくように折れた壁が連なっている。

少女の顎を汗がつたい、ぽたり、と地面に染みをつくる。
目に入る汗も意に止めず、少女は能力の発動を続ける。
壁を
壕を
自分を守り相手を倒す、そのために能力を。

土壁が折れる、音が近い。相手の姿は見えない。
歯の根が合わない、頬を使うのが汗なのか涙なのか、もはや判別がつかない。
能力を使う。確かな手応えがある。
土を打つのとは異なる鈍い音。

――ここだ!

ありったけの能力を叩き込む。出し惜しむ余裕などない。
肉を打つ音、相手の生命を削る音が響く。
少女と土壁一枚隔て、土の柱が乱立する。そこにいる相手を倒すために。
壁越しの気配が薄れる。
肩で息をし、顔を伝う雫を拭う。
大丈夫だ、終わってみればなんてことはなかった。
自分にそう言い聞かせ、気持ちを落ち着けるために目を閉じ深呼吸を……
轟音、土塊が頬をかすめる。自分に迫る誰かの気配。
歯の根が合わないのは恐怖のせいか
目が開かないのは、見つめたくない現実から逃げているのか
それとも……

――彼女にとっての幸運は、恐怖の対象を認識する前に意識を絶たれたことだった

【第1ターン グラウンド初戦】
深見忌●―○ビンセント・タークハイツ 決まり手:不在票






最終更新:2015年04月25日 22:47