魅羽とタマ太はとっても仲良し。
今日も仲良くお散歩するの。
「昨日はひどい目に遭ったなぁ……」
「ニャーン……(ミステリアスパートナーの全裸とか誰得……)」
「とにかく、人を裸にして喜ぶとか許せない!」
「ニャーン(それは許せるけど)」
「化学部の薬袋さん! いつか風紀を執行してやる!」
「ニャー!(風紀はともかく脱衣姉ちゃんとの対戦は是非して欲しい!)」
「さて、とは言え薬袋さんの居場所はわからないから、脱衣デスマッチをしてた人に風紀を執行しよう!」
「ニャーン!(賛成っ!)」
「ついでに門司さんに会って、輝海ちゃんの脚を折ったことについて問い詰めたいな!」
「ニャーオゥ!(無抵抗の女の子に酷いことする奴は殺せーっ!)」
そんな感じでミケナイトに変身した魅羽とタマ太が大グラウンドに向けて歩いていると、家庭科部の平井律先輩に会いました。
「こんにちは。私、馬術部のミケナイトです」
「ニャーン(わーい、りっちゃんだー)」
「こっちは三毛猫のタマ太」
「ニャァーン……(癒される……なんて素晴らしい家庭的おっぱいだ……)」
「こんにちは。ミケナイトさんはどちらへ?」
話をしてみると、平井先輩も脱衣デスマッチは快く思ってなかったそうで意気投合。
二人と一匹は連れ立って、大グラウンドに向かいました。
願うは風紀正しい平和な学園!(タマ太は別に願ってない)
しかし……
(=・ω・=)
「あなたの本当の姿、ぜひ知りたいですね」
「フォオオーッ! なんてキメ細かな美肌! 興奮しちゃうーっ!」
ミケナイトたちが到着した時には、ディゾルバーまみれでもつれ合う薬袋品と好世はもはや全裸寸前でした。
希望崎の風紀は、もう手遅れです……。
美女の誉れ高い女子高生教の二代目教祖と、密かにファンの多い科学部長の対決に集まったギャラリーも大興奮!
不倫は文化部の面々も首魁の試合そっちのけで隠し撮りに励んでいるようです。(だから弾正院さんが負けたのは無理もありません)
「うーん、仕方ない、平井先輩と戦いますかー」
「えっ、ちょっと待って、他の人と戦おうよ?」
「待ったなしです! 猫耳の騎士・ミケナイト、参ります!」
「ニャーッ!(ヤッター! 品ちゃんの全裸だーっ!)」
デスマッチの決着を告げるタマ太の声援を合図に、ミケナイトは突進を開始しました!
ミケナイトは全力で踏み込み、全力で特大スコップ『斬馬大円匙』を振るいました!
水星ちゃんとの戦いでは『辰星鉄』を警戒してたので出さなかった全力のチャージング斬撃です!
(これが……この子の本気の攻撃なのね!)
平井律は猛烈な攻撃を避けきれず、肩口に手痛いダメージを受けます。
でも、避けられなかったとしても。防ぎ切れなかったとしても。
ミケナイトの攻撃に対応できなかったわけではありません。
「大振りの攻撃! ……隙だらけですよーっと!」
フライパンでミケナイトの足元を掬い、スコップ打撃の遠心力をも利用してひっくり返します!
「ぎゃんっ!」
一回転して背中から叩き付けられるミケナイト!
「ニャーン!(おおっ! 好世様が立ち上がった! いけない! 大破状態で更に戦うなんていけないぞ!)」
(うぅ……全力攻撃は返しのダメージがキツいな……)
ミケナイトはスコップを支えにして立ち上がります。
そこに、立ち上がるのを待ち受けていた平井先輩の平手打ち!
ぐわーん!
猫耳フルフェイスヘルム越しに平手打ちの衝撃が伝わり、脳を揺らします。
「あなたの攻撃なんて、効きませんよ!」
平井先輩は鋭い視線でミケナイトのことを射抜きました。
ミケナイトはたじろぎます。
怯みながらも反撃のスコップを突き出すミケナイトでしたが、それは腰の入ってない弱気な攻撃でした。
スコップがぺしんと平井先輩を打ちます。でも、先輩は涼しい顔。
ぐわーん。さらに必殺のビンタ!
ミケナイトが放つ反撃のスコップはまたしても弱々しく。
ぺしん。スコップの直撃を食らっても平井先輩は余裕の笑みを返してきます。
でも……実際に押されているのは平井律の方でした。
平気な顔をしてみせているけど、律は特大スコップ攻撃を何度も受けて倒れそうなのを必死で堪えてたのです。
(かなりまずい……な。うまくあのスコップを防いで返し技を決めないと……。耳鳴りが酷い……できるかな……)
律のスコップ攻撃を防御するためには、相手を萎縮させて攻撃リズムを単調にする必要があります。
震える心を押し隠し、強い視線でミケナイトを穿つ!
家庭科部を守るため、平井律、決意のポーカーフェイス!
「ニャーン(ふむ、好世様の次なる敵は門司くんかー)」
律先輩の強い視線を、魅羽はまともに受け続けることができませんでした。
(これが……これが家庭科部を背負う人の実力……やっぱり見習い騎士の私じゃ勝ち目なんか……)
まっすぐ先輩の顔を見ることもできなくなった魅羽はうつむいて、先輩の足の辺りを見つめます。
(あれ……?)
魅羽は気付いてしまいました。
先輩の足が、小刻みに震えていることに。
(もしかして……本当はスコップが効いてる?)
視線を上げて、律先輩の顔をまっすぐに見てみます。
先輩はやはり涼しい顔で強い視線を向けていますが……。
(もしかして……先輩も戦うのを怖がってる?)
魅羽にはわかってしまいました。
平井律先輩は戦いが好きではないことを。
本当は、戦いを怖がっていることを。
それでも、恐怖を乗り越えて家庭科部のために戦ってるからこそ……先輩の瞳は鋭く胸を打つのです。
もう、魅羽は迷いませんでした。
猫耳ヘルムの奥で光るミケナイトの瞳には、律先輩と同じ鋭さが宿っていました。
「ニャオオーッ!(いいぞ! その意気だ! 脱がせ門司くん!)」
タマ太の声を合図に睨み合う二人が動きだしました!
平井律のビンタがみたび放たれます!
しかしミケナイトは更に鋭く踏み込み!
ぺちん。自ら当たりにいったミケナイトによって打点をずらされたビンタの威力は半減!
(今だ……!)
必殺技を防がれ体勢の崩れた平井先輩に、ミケナイトは反撃の斬馬大円匙を叩き込もうとします。
しかし、平井先輩はまたも鋭い瞳でミケナイトを射抜きました!
視線に怯んだミケナイトの動きが一瞬止まり、その一瞬で平井先輩は体勢を立て直します。
それでも。恐れる心を飲み込んで。ミケナイトは全力で踏み込みます!
ズガアッ! 決意を乗せた斬馬大円匙が平井先輩を打ち据えました!
「ニャアアオーン!(決まったーっ! 好世様の美しき全裸がいよいよ白日の下に晒されるーっ!)」
大円匙を振り抜いたミケナイトは止まりません! 更に一回転して再度全力斬撃!
ズガアッ! 辛うじて持ちこたえていた平井律が連続攻撃でついに倒れました!
「ニャバーッ!?(ギャーッ!? 好世様の股間にちんアバーッ!?)」
魅羽は大きく深呼吸して、タマ太の方を向きました。
「やったよタマ太……って死んでるーっ!?」
めでたしめでたし。