雨竜院暈哉2回戦の後で
「暈哉、鼻血止まった?」
半左が暈哉に話しかけるが、呆けたまま反応を示さない。鼻血は止まっていないので新たなティッシュを鼻穴に詰めてやる。
1回戦ではチンチラが気になって(ごめんなさい)埴井葦菜に破れ、2回戦では仮面忍者剣嵐に破れ、精神が1になってからこの調子だった。Lみたいな姿勢で椅子に座り、トイレに行ったり食事を摂ったり、時折「バリヤード絶対に許さねえ……」と理不尽に呟いたりはするが話しかけても返事は返ってこない。
「暈哉、今は野球が流行ってるんだってね」
「実は傘部の応援もスワロゥズファンみたいに傘を振るって設定があったけど消化せずに来ちゃったね」
何を言っても反応しない。目の前で手をブンブンしても眉一つ動かさない。
「まずいよ……今きっと精神0.5くらいだよ。このままじゃ0になっちゃう」
半左も部員達も心配していた。
「ねえ、暈哉……」
半左は冗談混じりに、耳元でふっと息を吹いてみる。
「あっ……」
暈哉が小さく声をあげた。
「暈哉?」
やっと反応を示した暈哉に半左は繰り返し息を吹いてみる。すると「あっあっあっあっ」とポックルめいた声が続く。
他の部員も同じようにするが、反応は無かった。
「半左さん……」
「ええっ? 何それ!?」
部員が思いつき、耳打ちした内容に半左は困惑するが、1時間後……
「か、暈哉……ちょっと恥ずかしいけど、頑張って応援するから……暈哉も3回戦頑張って……」
暈哉の目の前には傘を手にしたレインコート姿の半左がいた。
レインコートは部員に貸してもらったが、何故か下は履いておらず、生白い太腿から長靴に包まれたふくらはぎまでが顕になっている。
「がんばれ❤ がんばれ❤」
傘を広げ、スワロゥズ式に応援する半左。部員にならった振り付けでは無駄に腰をフリフリ、捲れた裾からボクサーパンツの端が見えたり見えなかったり。
恥ずかし気に裾を気にしながら(でもパンチラしながら)の扇情的なダンスが始まって1分程経った頃……
「は、半左!」
暈哉が叫ぶ。
カッと目を見開き、虚ろだった瞳には生気が宿っていた。
「暈哉、よかった……」
「部長!」
「皆、心配かけたな……ありがとう」
暈哉に戦える精神力が戻ったことを皆が喜んでいた。
しかし依然精神1。次に負ければ死を待たずして再起不能だ! どうする雨竜院暈哉! どうなる雨竜院暈哉! 果たしてバリヤードに負った借金300万を返せるのか!?
「ところで暈哉、何でL座りのままなの? 立たないの?」
「いや、なんだ、ちょっと……立てないというか勃ってるというか……」
ちゃんちゃん♪
最終更新:2015年06月21日 21:06