「Z!(絶対に!)」
僕は女性限定水着パーティに参加するんだ!
紅茶部の女子たちが!
鬼雄戯大会に参加している女の子たちが!
無数の一般女生徒たちが!
プールサイドで待っているんだ……!
倫太郎は、回想する。
そう、あれは3年前の夏のことだっ(以下50ページ省略)
目の前にいる猫耳鉄仮面の少女は、まぎれもない強敵だ。
正直、倫太郎が今まだこうして立っているのも不思議なくらいだ。
だが……
「M!(負けられない!)」
相手がいかに強くても、倫太郎は負けるわけにはいかないのだ。
しかし、倫太郎よりも頭一つ低い小柄な身体になんというパワーを秘めているのだろうか。
しかも、普段のだぶだぶサーコート姿ではよく判らなかったが、三毛猫柄ワンピース水着になってみるとはっきりわかる。
ミケナイトの胸は……かなり大きい!
正体は貧乳少女である倫太郎は羨んだりはしない。
そのかわり、ミケナイトの豊かな胸をprprしたいという思いを強く感じた。
そういう性癖なのだ。
倫太郎は想像する。
あの鉄兜の下には、どんな可愛らしい素顔が隠れているのだろうか。
実は、倫太郎はミケナイトの正体である猫岸魅羽と会ったことがある。
倫太郎の苛烈すぎる熱血紅茶指導が問題となり、風紀委員会の調査が入ったことがある。
その調査メンバーの中に猫岸魅(以下50ページ省略)
「P!(パンチ!)」
倫太郎の熱血魂を形にしたような真直ぐなストレートが繰り出される!
極めてシンプルな軌道。
決して超高速とは言いがたい速度。
だが……
(……避けられない! いや、避けちゃいけない気がする!)
ミケナイトの魔法少女能力は『流体操作』である。
特に空気の流れを操ることに長けており、それを攻守に渡って活用して戦闘アドバンテージを得ているのだ。
ゆえに……空気の流れを読むことにも長けている。
延べ100ページを超える回想シーンを挟んだ必殺技を避けられるはずもなかった。
ストレートがミケナイトの胸の中央に突き刺さる。
そして猫耳の騎士は、ばったりと仰向けに倒れた。
コンクリートに打ち付けられた兜がぐわんと鳴る。
「ワンワン! ワンワン!」
意識を失った魅羽の脳裏に、馬たちの鳴き声が響き渡る。
まるで、プール防衛戦を果たせずに力尽きる自分を責めているような声だ。
水着パーティも守れない。
馬術部も守れない。
そんな私だから、馬たちに嫌われているのも仕方ない。
魅羽はそう思った。
(だから私は! そんな私を乗り越える!)
意識を取り戻した魅羽は素早く起き上がりながら特大スコップを振るう!
プールは守る! 馬術部も守る!
馬たちにも認めてもらう!
決意を乗せたスコップ斬撃!
言うなれば……ZMS(絶対に負けられないスコップ)!
多味倫太郎は油断していたのかもしれない。
ZMPの手応えは完璧で、相手が起き上がれるとは思えなかったこともある。
そして、紅茶部の試合はティーセットが整った状態で行われるものであり、ダウン状態から直接仕掛けて来るような不作法な攻撃には不慣れだった。
結果として倫太郎はスコップの直撃を受け、勝負はそこで決まった。
(=・ω・=)
青い空。白い入道雲。
背中のコンクリートが、熱い。
強い日差しを、猫耳の鉄仮面が遮った。
対戦相手のミケナイトだ。
「すみません多味先輩。男性である以上、通すわけにはいかないんです」
「いや、謝るのはこっちの方さ。能力オフにできないのに来てしまって悪かったね」
「どうして先輩は男装をしてるんですか?」
失礼な質問かもしれない、とも思ったが、魅羽は好奇心を押さえ切れずに聞いてしまった。
「そっ、それは……」
倫太郎は周囲をキョロキョロと見回し、近くに人が居ないのを確認してからミケナイトに耳打ちした。
(恥ずかしいから一度しか言わないぞ。実は僕は……女の子が好きなんだ!)
「なるほど、そういうわけでしたか」
秘密を打ち明けてくれた相手に仮面のままでは失礼なので、魅羽はフェイスガードを上げてにっこりと微笑んだ。
その笑顔は、鼻血まみれの酷いものだった。
だが、倫太郎は見覚えのあるその顔を見て、やっぱり可愛い子だったな、と思った。
「女同士を好きになるなんて、変だと思わないのかい?」
「うん。まー、そーゆーのもアリだと思うよ」
そう言って魅羽は、昨日の楽しかった一日を思い出した。
柊先輩と水星ちゃんは、それはもうお似合いのカップルだよなー、と思った。
水星ちゃんはさっきイルカ形フロートを小脇に抱えてプールに入って行ったところだ。
もちろん柊先輩も一緒だった。
薬袋さんと対戦するって言ってた。恥ずかしい目にあわなきゃいいのだけど。
「だから……多味先輩も頑張ってくださいね」
魅羽の励ましは心の半分は目の前の先輩に、半分は水星ちゃんたちに向けたものだったので、どことなくふわふわした感じになってしまった。
それでも倫太郎は嬉しく感じ、明日は紅茶部の子たちのためにもっと頑張ろうと思ったのだった。
(まあ、私は普通に男の子のほうがいいけどね)
今のところ、魅羽は特に好きな男子がいるわけではない。
ゴールデン・レトナイト大先輩、シベリアン・ハスナイト先輩、そしてセント・バーナイト君。
馬術部には素敵な男性がいっぱいだ。きっと素敵な恋も見つかることだろう。
ぶらーん。
魅羽の心の中で不吉な影が揺れた。
ぶらーん。ぶらーん。
(私は……)
ぶらーん。
(普通に男の子が……)
ぶらーん。ぶらーん。
(好き……な……はず……)
(『ミケナイトVS多味倫太郎』おわり)