魅羽と輝海ちゃんはとっても仲良し。
いつも休み時間にはお話しするの。
「魅羽ちゃん。じつはさっき門司くんからメールが届いたの」
「すわっなんで輝海ちゃんのアドレスを!?」
「ニャーン(ストーキングだな。ゴミとか漁るんだ)」
「え?このあいだ体育館で待ち合わせるために交換したんだよ」
おっと失敗。先入観は目を曇らせます。
「あははそうだよね。あの頃はまだ知らな……」
「あの頃はまだ……?今日の魅羽ちゃんなんだか変だね」
「そっそんなことないよ!それよりメールなんだったの?」
「ニャー(ホテルへのお誘いだな。やりたい盛りの男子だぜ?)」
「まだ読んでないんだけど……あれ?動画サイトのアドレスが」
輝海ちゃんは何気なくリンクを踏みました。
ほんとに動画サイトに繋がるかは分かりません。
怪しげなサイトに飛ばされて色んなデータがぶっこ抜かれるかもしれません。
ほんとだとしてもどんな動画が待ってるか分かりません。警戒心!警戒心が大事です。
「キャー!」
とつぜん輝海ちゃんの悲鳴が響きます。やっぱり罠だったのです。
「ニャーン(この子、口を閉じたまま悲鳴を上げるなんて器用だな)」
おやおや?それはおかしな話です。
よく見ると悲鳴は輝海ちゃんのスマホから聞こえてきます。
『キャー!』
『まだまだ。もう一度だ!水墨龍(すいぼくどらごん)!!!!』
スマホの画面の中では門司が仕込み筆を目にもとまらぬ速さで抜刀!
黒いドラゴンのオーラが輝海ちゃんに襲い掛かります。
ふたたびキャー!という悲鳴を上げ倒れこんだ輝海ちゃんの右足が変な方向を向いています。
「これって……」
「うん、体育館で私と門司くんが戦ったときの動画だね。」
画面の中では場面が切り替わって、今度はグラウンドでふたりが戦っています。
『一文字!』
『キャー!』
開始早々に門司は痛烈な横薙ぎで輝海ちゃんの左足を打ち据えます。
そして倒れた輝海ちゃんに必殺技で追い討ちをかけると、
右!左!しつこく足を打ち据えます。ついに左足が変な方向を向いたのを確認した門司は、
悠々と刃を収め、必殺水墨龍の構えをとり、瞬間!画面いっぱいに暗黒のオーラが溢れ、
画面に再び光が戻ったとき、そこには瀕死の輝海ちゃんが転がっていたのです。無惨!
「なんでこんなものを輝海ちゃんに!」
「ギオッ(ていうかわざわざ撮ってたのかよ!)」
「これを見て研究しなよってことかな?」
輝海ちゃんはひどい目にあわせられた相手に対して前向きです。
なんらかの心理的防衛機構が働いたのでしょうか?それは果たしていいことでしょうか?
「魅羽ちゃん、さっきからなんだか胸がドキドキする!」
それは当然トラウマというものでしょう。自覚は無くても心の傷は残っているのです。
「男の子からメールを貰ってドキドキ……これって、これって恋?」
あ、違う。この子ダメな子だ。その瞬間魅羽は確信しました。
恋に恋して拗らせて、ちょっぴりトラウマブレンドして、斜め上に飛んでっちゃった。
でも……本人が幸せならそれでいいのかもしれません。
現実に直面させて、心に血反吐を吐かせるのがいいことなのか。
そもそも魅羽だって恋愛についてはなんだか最近ちょっと迷走気味?
人様の恋に意見をすれば、それが自分の恋の方向性を決定付けてしまいそう。
頭がぐるぐる、目玉がぐるぐる。ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる回って。
何にもいえなくなった魅羽は一言ズバリと告げました。
「ニャー!!」(ばたり)