■第五ターン 三戦目 vsカツオ■

第五ターン開始より十数分、中庭に集った歴戦の闘士二十余名も残すところ一桁となった。
戦場には余裕綽々で次の対戦相手を探す者もあれば、大怪我を負い虫の息の者もある。

この戦いは正に前者と後者の戦いであった。

長い地中生活から抜け出し、ついに羽化した無垢なる“最強”の闘士カツオ。
これまでの敗北は全てこの時の布石。
このターン果敢に龍に挑み、王の正当後継人・弾正院を壮絶な打ち合いの末捻じ伏せ、惑星を全力の一撃でもって破壊し、それでもなお余力有り。
その勢い破竹の如し。

対するは、同じく“最強”を自負する正体不明の野球帽を被りし小柄の闘士。

だが、二人のコンディションには圧倒的な差があった。
無傷のカツオに対し、耳が聞こえず、右大腿骨が完全骨折し、同じく左足関節が完全骨折し、右肺の強打により呼吸が整わない野球帽。
片や余裕綽々、片や虫の息。
この二人の対戦結果は火を見るより明らかである。

それでも二人は戦った。

左膝・両拳の3点を支えに、辛うじて倒れていないだけの野球帽。
しかし、彼女の闘志は健在。
破竹の勢いを足に乗せ、次の対戦相手を探し求め文字通り疾走していた半裸の男を呼び止めた。

それが開始のゴング。

「さいッッッきょおおおおおおおッッ!!」

野球帽の存在を認めると同時に、歓喜に震え、カツオは吠えた。
彼を取り囲んでいた空間が瞬く間に沸騰し、爆ぜる。

「――――はッ! 上等ォ!」

カツオの咆哮を、カツオの天を衝かんばかりの闘気を正面から受け、それでも野球帽の唇は不敵に歪んだ。

両者に打算はない。
カツオは野球帽を倒す価値のある「敵」と認め、野球帽もまたカツオを倒す価値のある「敵」と認めた。
故に戦いが生じるのは必然。
両者に打算はない。
そこにあるのは全力の一撃と、純粋なる闘志のみ。
お互いの掲げた“最強”の御旗を賭けた、魂の勝負。

弱攻撃「俺のパンチだ」 vs 弱攻撃「鋲(びょう)」

「俺の―――――」

カツオが力強く踏み込み、右の拳を引く。
野球帽が左手の拳を広げ、五指を地面に突き刺す。

「――――パンチ――――」

カツオが引いた右の拳を、肩・腰をはじめとした全身を使い打ち出す。
野球帽の左腕が一瞬だけ倍ほどに膨れ上がり、もはや死に体と思われた本体を驚異的な速度で打ち出す。

カツオの拳を最大速度に達する前に額で受けた野球帽は、鍛えこまれた右手の一指を喉仏に向かいノーモーションで突き入れる。

≪兵藤宗流・鋲≫

「――――だァァァッらッしゃああああああッッッ!!!!」

カツオの拳が、防御を、技を突き破り、振り抜かれた。
紙一重カツオの速さが上回り、紙一重野球帽の防御が届かなかった。

「最ッ!強ォーーーーーーーーーーッ!!!」

放物線を描いた野球帽の落下を見届けることなく、手に残った勝利の感覚をかみしめ、カツオは再び駆け出した。


(○)カツオ - (×)野球帽
決まり手:俺のパンチだ(弱攻撃)






最終更新:2016年10月16日 19:14