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「勝負だドラゴンスレイヤァーッ!」
「やめましょう!? だって野球帽さん、レオナさんとの戦いで両足が折れてまともに歩くこともできないのに!」
「クハハッ、聞こえねぇなぁー。お互い瀕死なことか? だからいいんだよ! 一撃勝負、受けてもらうぜぇーっ!」
「聴覚も失ってる……! やるしかないっ!」
「確認させてもらうぜ! プールで『砕月』を避けかけたのはマグレだったのかどうかをな!」
野球帽は四つん這いの体勢から腕と膝の力で野獣の
如く跳んだ。
ミケナイトの首を右手で掴み、右足を左手で刈る!
疲労のためか。野球帽の技の切れが以前よりも増していたためか。ミケナイトは避けられない!
後頭部に衝撃! 意識喪失!
そして……野球帽の身体の下敷きになったミケナイトの右足は、異常な方向に折れ曲がっていた。
『砕月・赤滅』。この骨折は、野球帽がミケナイトのことをまぎれもない強者であると認めた証である。


事後のドラゴンスレイヤー



窓の外が明るい。もうお昼を過ぎてるかもしれない。
魅羽は寮の自室で深い眠りから目覚め、ベッドから起き上がった。
(昨日の戦いは激しかったもんなぁ……)
寝坊したのは無理もない。
魅羽は激戦を回想し、嬉しそうに頬を赤く染めながら下着と部屋着を身に付けた。

壁に立て掛けてある愛用の武器を見て、魅羽は違和感を覚える。
スコップに、チェーンが取り付けられている。
龍と戦う前に、セント・バーナイト君が取り付けてくれたものだ。
もちろん知っている。でもなんだろう、この違和感は。
説明しようのない不安に、魅羽は頭の上に手をやり、自らの猫耳をふにふにと触って気持ちを落ち着けた。

「……ねえ、かもめちゃん」

予告もなしに昨夜遊びに来てそのまま部屋に泊まり込み、好き放題した疲れでまだ眠りこけている友人を揺り起こす。

「……ああ、ミケ姉様。もう朝ですのね」
「むしろ昼だよ。あのさ、私の武器のスコップ、なんて名前か知ってるよね?」
「当たり前ですわ。屠龍大円匙(とりゅうだいえんし)。変なことをお聞きになりますのね?」
「うん……でも、斬馬大円匙って名前じゃなかったっけ?」
「うふふ、私の愛を試しているのですね。龍を退治した記念に改名したとおっしゃったの、ちゃあんと覚えてますわ」
「ん、よくできました」

魅羽は、かもめのことを抱き締めて頭を撫でた。
ひんやりとした肌が気持ちいい。
たぶん、気のせいだろう。
世界も、可愛いかもめちゃんも昨日とおんなじだ。

――実は、気のせいではない。
世界は既に改変されている。
ドラゴンスレイヤーとなったことで、ミケナイトの未来は変化したのだ。

遅い朝食のトーストと豆乳をお腹に収めると、魅羽はベランダに出て青い空を見上げた。
馬肥ゆる秋晴れのよい天気。
魅羽は唇に指を二本あて、口笛を吹いた。
すると、馬術部の馬小屋からミケナイトの愛馬が駆けつけ、ベランダの外の空中に止まった。

ミケナイトの愛馬は、空を飛ぶ巨大な馬だ。
額に大きな傷があり、見るからに獰猛な面構えだが魅羽の言うことはよく聞く賢い馬である。
オリエンタル・ドラゴンという珍しい品種の馬で、名前を“龍”と言う。

「今日はいい天気なので、温泉にでも行こう!」
「まあ素敵ですわ! 私、城崎に行ってみたいと思ってましたの!」
「かに王国かぁ……日帰りで行けるかな?」
「ギャオオオーン!(大丈夫! 行けるぜ!)」

馬が力強くいななきました。
そして二人は龍の背にのって旅立ちました。

魅羽とかもめはとってもなかよし。
いつも二人でお散歩するの。
遠出の時は愛馬に乗って、地の果てまでもひとっ飛び!

タマ太はどうしたのかって?
もちろんタマ太も一緒です。
いつでもタマ太は、魅羽の胸の中に。
永遠に、一緒です。

(ミケナイト暫定エピローグ、おわり)





最終更新:2016年10月16日 19:42