6ターン目、暈哉は生徒会役員・デビルオクトパスを倒した。その後疲弊したところを暗殺者・レオナに倒されたが、前ターンに続きステータス的にも大躍進である。
怪我も2つ抱えているが、賞金額3位にまでなった。
「『クトゥルフスレイヤー』……って。
『蛸殺し』くらいで良かった。恥ずい……」
その暈哉はこんなことを言って呻いている。あの時のノリはやはり頭を打ってどうにかしていただけらしい。
「僕はかっこいいと思うよ。『クトゥルフスレイヤー』」
半左空がそう慰めた。クトゥルフスレイヤーも語呂が悪くてかっこいいとは思わなかったが、蛸殺しはもっの無い。もちろんそんなことは言わないが。
凹んだ暈哉を半左が慰める。大会前半にはお馴染みの光景だったが、精神が急成長した今では暈哉も敗戦に動じなくなっていた。
半左はそれを嬉しく思いつつも少しだけ寂しくもあり、だからクトゥルフスレイヤー恥ずかしいとか、そんなどうでもいいことを気にしている暈哉が何だか可愛いとも思っていた。
「真生徒会長なんてのが出てきましたけど、クエストに参加しますか?」
「それは更に次のターンにしよう。まだ分が悪い気がする。このターンはステータスを伸ばすことに注力しよう」
「ヴェータと戦るんスか?」
「いや、それはミケナイトでいいよ。早い者勝ちだ。
でも、中庭みたいに人はいっぱい来るだろうから、そこで対戦相手を探す」
部員達と7ターン目の相談をする暈哉の姿を半左はじっと見つめる。
あと3ターン。いよいよ終盤だ。もちろん生き残って欲しい。
暈哉の告白に如何なる返答をするのか。自分は暈哉が好きなのか。まだ結論は出ていない。
そして、その結論次第で、半左には明かさねばならなくなることが一つあった。
元女ということでは無い。もっと根源的、且つ重大な秘密。
親にも、嘗て恋した親友にも明かしていない、半左空が墓まで持っていくつもりだった秘密。
(暈哉……)
7ターン目、大グラウンド。
暈哉には大きな見落としが2つあった。
まず、1ターンに治せる怪我は1つなのを(中の人が)忘れていて、負傷したまま激戦地に飛び込んだこと。
そして激戦地ならば自分と相性最悪の相手がいる可能性は高く、そいつは当然相性のいい相手を探していて、且つその希望が優先される権利を持っていること。
ミケナイトに対して言ったのよりももっとシンプルな意味で、この大会は「早い者勝ち」なのだ。
「おっす3位。『1位』だけど」
砂煙を纏い、疾風迅雷の速さで立ち塞がった男。3ターン目に惨敗した一太郎より速い最速にして最強の男。
「真野……来人」
続く。
最終更新:2016年10月16日 20:16