【英子と四囲美の人間革命R 真・7日目】

―フォーリング部 部室―

携帯で掲示板のやり取りを眺めていた英子と四囲子が呆れたようにため息をつく。
どちらともなくふたりは顔を見合わせ合うと頷き合った。
結局、携帯に映し出された魔法陣の上、思案顔で膝を組み何やらデータ―集計をしている
その人物に声をかけたのは、いつも通りに四囲美のほうだった。

「あの女王様、いいですか―女王様、昨日レオナさんの反応全振り対応絶賛してましたよね?」

『ん?ああ中庭の展開であそこだけ読み間違えたからな。保身ゼロの一点張りとか、普通やるかね
お前どこぞの出前娘かよって感じだったからな。』

「で称賛するために掲示板を覗いたんですよね?」

『そうだな』

「ッ―――でなんでその褒めなきゃいけない人に盛大に喧嘩売って話終わらせてるんですか。
                       何様なんですかアンタ」

『宇宙皇帝だ。
んー不満なのか?。所謂一つの”女王よくあるある”じゃねぇか』

「「自分でいうな―!!」」


††


『まあ今後を考えると周りの出来がいい分、アイツが学園最大の懸念材料になりかねない
桂馬歩の餌食つーか、蓼喰う虫も好き好きというか…。
もしお前らが明日以降生き残るのなら、ひと肌脱いでもらうことになると思う。その時は頼むぞ。』

(…ぜ、全然ぴくりとも反省していやがらない…どういう神経してるんだ、このひと…)
しかも相変わらず何を言ってるのか全く判らない。とにかく彼女は言葉が足りないタイプの人間(?)だ。

『ともあれ、まずは目の前のことだ。これで”お前らにお願いされたこと”の準備はおおまか整ったわけだが…』

(わけだがって?…いや何が整ったの。準備って。お願い事ってそもそも何…)
そして最後まで何を言ってるのかさっぱり判らない存在だった。流石、のもじ先輩の相方である。

そんなあきらめムードの英子と四囲美をよそに女王は立体映像に映る小さな指を二本立てた。

『残るはお前達の選択だ。

生徒会室に向かい集まった真(かってなのりの)生徒会長に戦いを挑むルート
流血を止血し、その場で大会参加者とバトルを行い賞金を稼ぐルート

選択は二択。いつも通りお前達で好きなほうを選べ。
後者を選ぶならほぼ9割勝てれる相手が選べれる。前者を選んだ場合は全てが未知数だ、計算しきれん。


あと、今までと違う特記点が一つ加わる。”負ければ”お前達は死ぬ。』

「…。」
「…。」

部室に沈黙が落ちた。

『負ければ高確率で死ぬ。理由は説明せん。その上で選べ。』

大切なことなので二度言いました。

「あの…それは私達の『何か』が終わってしまうという比喩表現でしょうか?」
四囲美が恐る恐る彼女の顔を覗き込んだ。それを女王が動じることなく見返す。
そこには表情といったものがなく、彼女をしても一切の思考が読めなかった。

「死ぬってことですよね。私達が昨日殺したソフィアちゃんのお兄さんみたいに。」
青ざめる四囲美に対し、悟ったように英子が呟いた。

『そうだ。』

「行きます。生徒会室に」

即決で彼女はそう答えてきた。

「私達は―なんにも、結局なんにもできなかった。正義の味方のフリをして、いやそれすら満足に
できず、行く先も判らずあがいてモガイテいていただけでした。
でも、もし最後がもう決まっているというなら、最後だけはせめて盾になるなり捨て石になるなりで
誰かの為に役に立って死にたいです。最終決戦なら盾は絶対に必要な存在なんでしょう」

彼女は歯を食いしばるように言葉を絞り出した。

『正直、盾にすらなれんと思う―お前達は雑兵だ。運命にそうやって粗雑に扱われ、邪件にされてきた存在だ。
有終の美が飾れると思うほうがオコガマシイ。粋がってもその手のひら、なんら意義のある死すら与えられなく、
道端で襤褸ぞうきんのように踏みにじられて生涯を終えるのが御似合いだ。そうなること判っているだろう―――それでもいくのか?』

英子は首肯した。そんな英子の首に四囲子の腕が励ますようにそっと捲かれた。
英子は微笑むと手を優しくかける。四囲美の指は細かく震えていた。

泣いて立ち去るのはもう嫌だ。縮こまり隠れるのはもう嫌だ。もし”最後だ”というのならその瞬間だけでも
笑って生きていこう。自分の取り柄は精々笑うことぐらいなんだから。きっと上手くやれる――――

そこで女王が表情を変え、ぷっとふ噴き出す、そしてケラケラ笑いながら応えた。

『信じてんじゃねーよー馬鹿。
いいか、覚えておけ、生徒会室はこれから”そういう連中”の集まりになる。
何故ならこれは目の前の勝ち負けでなく、そこに命を投げだせる価値を見出した者だけが挑むことのできる馬鹿げた祭りだからだ。

道化師が手招いた『負け犬たちのサーカス』。
勝利の女神が靡く輩にはこの学園の悪夢は終わらせれない。真春の夢に酔う者は決して悪夢を見ることはないからだ。
血反吐を吐き地を這いずったもの達しかこの「アビメルム悪夢」を終わらせることは出来ないのだ。

足を掬え、とはいわん。
天井近くでフレンチカンカンを踊るあの退魔師が積みあげた足場の罪木、そのひとつでも抜いてこい。

必ず次につながる、お前達の骨を『拾ってくれる』奴がいる。だから安心して死んでこい。』



ふたりは部室から駆けだした。そして


―やれやれ手間のかかる。さあ採算度外視の馬鹿どもめ。でき得るモノなら全員揃って、帰って来い。―


彼女達は戻ってこなかった。

                            (「英子と四囲美の人間革命R 真・7日目」了)






最終更新:2016年10月16日 20:18