猫岸タマ太

オスの三毛猫は、大変珍しく貴重な存在だ。
三毛猫となるためには、X染色体上にある茶色遺伝子がヘテロである必用があるため、通常は性染色体がXXである雌にしか生まれない。
例外は、クラインフェルター症候群によるX染色体過剰、一個体に複数の遺伝子情報が混在するモザイク、Y染色体への茶色遺伝子乗り換えといった遺伝子異常。
ゆえに、雄の三毛猫が生まれる確率はおよそ三万分の一。
その稀少性から雄の三毛猫は幸運の守り神として珍重されたが、タマ太はそんなことは知らないし、三毛猫であったことは不幸でしかなかった。

“姉”である猫岸舞がハルマゲドンで命を落としてから数ヵ月後。
舞の父親は、普段通りに仕事へ出掛けたきり帰ってこなかった。
何があったのかは分からないが、これでタマ太は完全に天涯孤独となってしまった。
可愛い猫のお嫁さんを迎えられそうなチャンスは何度かあったものの、うまくはいかなかった。
クラインフェルター症候群のために、タマ太は子を成すことができなかったからだ。
孤独によってタマ太は魔人となり、長命を授かった。
能力は不明。ただ、孤独な時間が長くなっただけだった。
主の居なくなった家で、タマ太は“姉”の遺影に狩りの獲物を供えながら、何十年も孤独に生きた。

およそ40年後。2014年11月22日。
タマ太は、一匹の仔猫が捨てられているのを見つけた。
雌の三毛猫だった。
タマ太は、まるで“姉”に拾われる前の自分を見たような気がして、その子を連れて帰り育てることにした。
タマ太はその子を“ミウ”と名付けた。

タマ太はミウに狩りと生きるすべを教え、大切に育てた。
ミウは健康に、すくすくと育っていった。
そんなある日、ミウが仏壇の写真を見て、これは誰なのかと尋ねてきた。

「ニャーン(ああ、姉さんのことかい。姉さんは酷いイタズラ者でね、それでオバケに連れてかれて消えちゃったのさ。ミウは良い子にしてなきゃいかんぞ)」

「ニャーン(うん。みう、良い子にするよ)」

ミウは良い子らしく、そう答えた。
タマ太は思った。
この子だけは何としても守り抜いていかなければならないと。
そして、タマ太の強い思いが高まり……魔人の能力がついに発動してしまった。

能力名『M.I.U. (マイ・イデアル・ユニバース)』
効果:対象を理想の女の子に変える
制約:一度しか使えない

そしてミウは、“人間”猫岸魅羽となった。
タマ太は八方手を尽くし、魅羽をなんとか希望崎学園に入学させることに成功した。
そして、猫であった時の記憶を失っているらしい魅羽を密かに手助けするために、馬たちに怯えながらも馬術部に潜入して影ながら魅羽の手助けをしていった。
その後は、みなさんが御存じの通りである。

(ミケナイトのエピローグ『騎士叙勲』につづく)






最終更新:2016年10月16日 20:31