多味倫太郎エピローグ
「先輩ー!」「先輩!」
後輩女子たちが駆け寄ってくる声がする。
そうか、私は負けたのだ。今の私には全裸で大の字に倒れている事しかできない。
まったく美肌も逸脱も、性転換能力も残したままピンポイントで強者を封じられるなんて。
見事に、一糸まとわぬ女の子の美肌をおがめる結果になったわけだ。
とんだド変態じゃねーか、真生徒会長。
「先輩!」「大丈夫ですか!?」
「ああ……脳震盪で動けそうにはないけど、なんとか生きてるみたいだ」
「よかった……」
「ゴメンな、みんな……」
「そんな、いいですよ。470万じゃ目標だった茶畑は作れないかもしれないですけど……
先輩は頑張ったじゃないですか」
「いや……その、そうじゃなくて、今まで騙してて」
「?」
「見ての通りだよ。私は本当は、女なんだ」
「?」
「え?今さらその話ですか?」「知ってましたけど」
「騙せてたつもりだったんですか?w」
「えっ」
「先輩、毎月20日前後に絶対体育見学しますよね」
「ギクゥ」
「先輩、トイレを個室しか使わないって本当ですか」
「ゲッ」
「先輩、3回くらいしれっと女子更衣室で着替えたでしょ」
「アワワワワ」
「先輩、合宿の時、よく似た女の人が女子風呂にいたんですけどあれ先輩ですよね」
「オゲエーッ」
「でもひとつ、腑に落ちない事があったんですよ」
「な、なにさ」
「先輩の家でお茶会した時、ベッドの下から、あ○にゃんの薄い本とか戦艦金○の薄い本とか
女子高生教の勧誘チラシとか好世様写真集とか他たくさん」
「ギャアー!」
「そうだよ……。私は、女の子が好きなんだよ……だからもう……許してくれ……」
「ふふ。先輩、最初は『憧れの美女のような残念イケメン』かと思ってたけど、
『憧れの美女のような残念イケメンのような女の子』だったんですね」
「いいですよ。許してあげます」「私も」「私も」
「えっ……本当かい」
「だって、ねえ。こんなカッコイイ残念な先輩が、健気にがんばって……先輩ってばホント、」
気がつくと後輩たちは、動けない私を囲むように並んでいた。
私の顔にも彼女らの影が落ちたが、彼女等が邪悪な笑みを浮かべていることはよくわかった。
「「「カーワーイーイー♪」」」
「ひッ」
「今までさんざんシゴイてくれた分これからは、私たちの言う事聞いてもらいますから、ねっ」
そう言って後輩たちは嗜虐的に笑い、私を見下ろした。
ああ、ずっと男が怖い、恐いのは男だと思ってきたけれど、女の人も、怖いや……!
それは全く屈辱的な景色だった。今まで上に立ってきた先輩としてありえないものだった。
でも、むしろ見るべきものはよく見えた。
左から水色、縞、ピンク。
見上げる景色も悪くないかもなあ。そう思った。
多味倫太郎エピローグ
『女の園に放り込まれたボクが実は女の子で……これからど~なっちゃうの!?』
おわり
最終更新:2016年10月16日 20:34