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第2話

01
ケリア聖王国の最後の反撃は僅か20分の戦闘で制圧された。歴史的に見ても類を見ないほどの大敗北である。
ケリア聖王国は聖王都制圧という事態の直前に降伏した。
この世界での戦争は元の世界の中世と同じく支配階級の条件闘争の一種であった。そこに国民が関わらないので近代以降の総力戦のような悲惨な戦いにはならない。
戦争に敗北した場合賠償金や領土の割譲もしくは不平等な条約の締結を強要されることとなる。
だが、稀に今回のような完全な敗北による降伏という事態が発生することが有る。
その場合待っているのは滅亡の二文字だけだ。
しかし、この世界の常識は日本国に通用しなかった。
講和に当って日本側が示した条件はこの世界の常識では破格とも言えるほど寛大だった。
1.ケリア聖王国の外交権の日本への帰属と軍備制限
2.軍備制限を補償する抑止力強化のため旧ケリア聖王国への自衛隊の駐留。
3.日本国法律の旧ケリア聖王国への適用。社会状態などを考慮して法律ごとに適用時期を随時決定する。
4.旧ケリア聖王国の自治権の尊重。ただしこれは前項に抵触しないことを前提とする。
以下32項目
要約すれば日本国は政治体制をそのまま残し旧ケリア聖皇国を保護領としたのだ。
この講和に世界中が驚愕した。
もちろんその条件の甘さと宣戦布告(日本国は交戦権を発動していない)から講和までのスピードである。

しかし自衛隊側ではそれでも進撃速度は遅いと感じていたのも事実である。機械化部隊の進撃速度は徒歩の何十倍にもなる。その進撃速度が発揮できなかったのは何より道路事情の悪さが原因だった。
そして条件の甘さは何より直接的な併合による2流市民を大量に国内に抱え込みたくなかったからであった。
保護領としておけば、当座的にその地域の経済活動は従来のままであり、それゆえに人口の移動は最小限に抑えられる。
第1段階として日本の文化や技術を輸出する。そして中流層を増やす。これは同時に帰属意識を共同体から日本へと向けさせる効果を持つ。
第2段階で力を持った中流層が旧政治体制を打倒し、日本への併合を求める。その状態で併合すれば政治的経済的な変革は最小限で収まるので混乱は最小限で収まる。
そういった理由もあったが別の理由もあった。
それが同盟軍への圧力である。大陸に進出しようとする日本にとって同盟は邪魔者以外の何者でもなかった。
ケリア聖王国は同盟軍の柱の一つであった。それを短期間で降伏させることは同盟諸国への無言の圧力となる。
しかし、同時にこの戦争はケリア聖王国にとっては本土決戦だったが日本国にとってはあくまで超が付くほどの小規模局地紛争に過ぎなかった。
その戦争の始まりも、天然ガスパイプライン建設をある諸侯が狩の邪魔だといって現地作業員を切り捨てたことに端を発する。そのため身の危険を感じた日本人作業員達が大使館に避難。それを諸侯の依頼を受けた聖王軍が大使館ごと包囲した為邦人の保護と救出の為ケリア派遣戦闘団とF-15J改1個飛行隊とF-15EJ2個飛行隊が派遣されたに過ぎない。
もっとも初期目的は空自のCV-22と陸自のヘリによって開戦から僅か36時間で達成されたがそれはあくまで理由に過ぎない。
それを裏付けるかのように同時に自衛隊は空母、1個航空団、中央即応集団を動員した上陸演習を行っていた。そしてその戦力は命令一つでどの国へも投射できる状態だった。
そのためこちらが本命であると判断した同盟諸国は相互防衛義務にも関わらず宣戦布告を拒否し、資金援助と義勇軍の派遣のみに留めた。そして何より総兵力12万のケリア聖王国軍に対して自衛隊のケリア派遣戦闘団が3000名と40分の1に過ぎない点を重視したのであった。
しかし、蓋を開けてみれば機械化部隊の機動性を生かした自衛隊の電撃戦の前に40倍の兵士を抱えるケリア聖王国は短期間で降伏に追い込まれた。
そうなると現在も演習を継続している自衛隊の動向が無言の圧力となる。
同盟を維持して日本国と対立するよりも解消して友好関係をとったほうがいいと考えるのはごくごく自然なことだ。
相次ぐ離反で同盟は事実上有名無実となり、日本国はこの世界のパワーゲームに参加することとなった。

最終更新:2006年08月01日 10:56