西暦20XX年。地球に異星人が来訪した。
その後の様々な混乱や試行錯誤はここでは省略するが、その結果人類は多くのものを得た。
挙げればきりがないが、大きなものの一つにクローン技術がある。
バックアップさえ定期的にとればいつでもその人間のコピーを記憶から意識までコピーして作り出すことができた。
(ただし、女性に限られたが)
いわば
命のバックアップ。これができて、定期的なバックアップが習慣化してから
人類の女性から老衰以外の死は無縁のものとなった。
もちろん、それほどの大きな恩恵を何の代償もなしで手に入れられたわけではない。
むしろ、後から考えればその代償に彼らに渡したもののために彼らはこの技術を渡したのかもしれないのだった。
その代償は…地球の女性を食料として提供することだった。
この話は、そうした利害関係が試行錯誤を繰り返した果てに一定の妥協を得て
人類と異星人が共存を果たした時代の話である。
「ええ?あたしがですか?」
オフィスの中に作られたパーテーションルームに島野由佳の素っ頓狂な声が響く。
「そうだよ。明後日のパーティーで是非とのことだ。先方からのリクエストなんだよ」
上司を前に、由佳は驚きを隠せなかった。
この会社は異星人向けの商品の販売を行っている。
その得意先の一つの社長である異星人からリクエストがあったのだという。
今度の会食で由佳を食べたいのだという。
由佳の視線は上司が出した一枚のカードにあった。
「リクエストカード」
異星人が地球人を食べたい時に提示するカードだった。
これを示されたら重複がない限り本人に拒否権はないのだ。
そこにははっきりと由佳の名前が書いてあった。
「…わかりました」
そういうしかないのだ。
「代わりのクローンは用意していただけるのですよね?」
由佳は念を押すように聞いた
「もちろんだ。可能な限りの意識と記憶は残してもらえるはずだ」
それは、リクエストカードを受け入れる代わりの条件であってことさら聞く必要はないのだが聞いておきたかったのだ。
由佳はリクエストカードを手に取った。
「処理施設には連絡がついた。明日11時に迎えが来るそうだ。そうと決まれば今日はもう帰ってよろしい。」
処理施設とは、女性を食肉に加工する施設のことだった。
「もう、この街をあたしが見るのも最後なのか」
クローンには意識は移されるが、あくまでコピーなので移された元の由佳がそのままクローンに乗り移るわけではない。
今の由佳には明日までの命であることは変わらないのだ。
由佳は、すぐさまお金をおろすと街へ繰り出した。
お金は残してもクローンが使うだけだし、そもそも会社からあたしを買った金がたっぷり入ってくるはず。
無一文になっても何の問題もないのだ。
といっても、ほしかった服やアクセサリーは手には取ったものの買う気になれなかった。
(買っても身に着ける暇もないもんな)
結局スイーツショップでちょっと高いスイーツを食べただけだった。
しばらく昼間の街をブラブラしていた。
こんな風景を見るのも明日11時までのことなのだ。
そう思うとどうしようもなく胸が切なくなった。
夕方、彼氏に「会いたい」と連絡をした。
もちろん明日のことは内緒だった。
口止めされていたのもあるが、余計な心配をかけさせたくなかったからだ。
いぶかる彼氏と最後のデートを楽しみ、今夜ばかりは由佳のおごりで高級ディナーを食べ、そのままホテルへなだれ込んだ。
由佳はむさぼるようにセックスを楽しんだ。
いつも以上に由佳は積極的になっていた。
普段は嫌がっていたフェラも、今日は素直にできた。
自分が自分でないような行為。しかし、今日は何をしても許されるのだ。
口の中に吐き出された精液を飲み干す。
由佳はベッドの上の彼氏のペニスを再び手と口で奉仕し、十分隆起したそれに尻を降ろす。
由佳は奔放かつ淫靡にベッドの上を泳ぎ回った。
疲れ果てて眠るまでお互いを求めあった。
翌朝、時間のすぎるのを惜しむように彼氏と別れた。
明日から会うあたしはあたしじゃない。
そう思うと、自分の複製であるはずのクローンに嫉妬心すら覚えた。
由佳は自宅に戻った。
一人暮らしの彼女の部屋に戻り、風呂に入る。
朝帰りだからというのもあったが、せっかくだから綺麗にしておきたかった。
入念に自らの体を洗っていた。
今まで以上に丹念に。
上がってから姿見で自分の体を見る。
自分で言うのもなんだけど形の良い胸。
ほっそりくびれたお腹
そして、女性らしい丸みを帯びたお尻と、そこからつながる適度に肉の付いた柔らかい太腿
この体が、もうすぐ食べられてしまう。
由佳は自分の体をじっとみつめていた。
そのあと、服を着替える。
化粧をし直し、部屋を片付けているうちに11時になった。
呼び鈴が鳴ると、由佳は呼吸を整えて返事をする。
迎えの車で処理施設へ行く途中、由佳は風景をじっと見ていた。
施設に着いた。
まるでホテルのような建物だった。
中も綺麗で豪華そのものだった。
入ると、一人の係員が近づいてきた。由佳より背の高い女性だった。
「私があなたを担当します柏木美樹です。ご自宅の鍵をお預かりします。施設に着き次第最新のバックアップを取らせていただき、
クローンを作成します。今夜にはこの部屋に眠った状態で鍵とともに運び込まれ、明日朝から普段通りの生活を始めることができます」
彼女はきわめて冷静かつ事務的だった。
彼女は由佳からリクエストカードを受け取る。
続いて由佳の二の腕にタグをつける。
「承りました。これに従い島野由佳様は当施設において島野由佳様を食肉加工させていただくこととなります。
食肉として出荷されるまでわたしどもが責任を持ってお世話させていただきます。
このタグは食肉管理タグです。出荷まで外れないようになっています。」
「食肉」「出荷」…一つ一つの言葉が心に食い込んでいく。
あたし…これから肉になっちゃうんだ。
由佳はクローンのための最新のデータを取ったあと、奥の大きな扉へ通された。
「こちらの扉は中に入ると中から出ることはできません」
つまり、ここを通るともう後戻りはできないということらしい。
部屋の中はホテルのロビーのような空間が広がっていた。
「食肉処理はある程度人数がまとまったところで行いますので、こちらでしばらくお待ちください」
見回すとかなりの人数がすでに集まっているようだった。
制服の女子校生が一団になっていた。
全寮制のお嬢様学校として有名な学校だった。
「奉仕活動のようですね。クラスごとにお見えになっているようです」
この学校はお嬢様学校であるとともに、この「奉仕活動」が有名だった。
容姿の一定以上の娘だけが入学でき、学費は免除される。
在学中に、その容姿に磨きをかけることをモットーとしており、卒業後はアイドルや女優になるものも少なくない。
しかし、その代わりに卒業生は「奉仕活動」として自らの体を食肉として提供することが義務付けられている。
その「奉仕活動」の一団だったのだ。
さらに見回すと、一か所に人だかりができていた。
「あれ、もしかして…」
テレビで見たことがあった。有名なアイドルだった。
「アイドルや芸能関係者の方はよく見えます。
接待関係で自らの肉体を提供する方も多いのですが、オークションされて来られる方もいます。
彼女は先日のコンサートの後行われたオークションで落札されたようです」
アイドルが人気が絶頂期を過ぎる頃に、自分の体でもうひと稼ぎするために昔はヌードになるのが多かったそうだが
今はそれとともに自分の体を食肉としてオークションするのが多い。
美樹は続けた
「彼女のような人の場合、自分自身がこれから食肉処理されることと、相手も同じ境遇であることがわかってますから今回ばかりは
気軽に誰でも対応してくれることが多いようです。それでは、これから他の方の案内を行いますので」
そういって美樹は離れた。
」
再び人だかりに目を移すと、見たことのある顔があった。
「夏樹?夏樹じゃないの?」
「え?うそ?由佳?」
驚く彼女は由佳よりも幼く見えるが同い年だった。
大学の同級生で、親しく付き合っていたが、就職してからはめっきり会ってなかった。
就職したのが由佳と同じ業種のライバル会社であるということは知っていたが、まさかこんなところで会うとは思わなかった。
「そう、あたしね、明日異星人の取引先を迎えてパーティーをするの。
そこで自分から志願したの。あたしを食材に使ってくださいって。由佳はどうして?」
由佳は正直に今までの経緯を言った。
「夏樹はすごいなぁ。あたしなんか自分からそんなこととても言えないもの」
それからしばらく積もる話を重ねていたら、アナウンスが流れた。
「食肉処理される方は、これから処理室まで移っていただきます。担当の方が案内しますのでしばらくお待ちください」
その場にいた半数が美樹のもとへ集められた。
「では、これからみなさんを控室までご案内します。ここで服を脱いでいただいた後、順番に奥の処理施設に移っていただきます。」
控室に行く人たちから離れたところに別のグループができていて、彼女たちは個別に係員から説明を受けていた。
女学生やアイドルも係員から説明を受けていた。
それを見た誰かが美樹に質問する。
彼女たちは食肉処理されないのですか?
「彼女たちはここでは食肉処理されません。ここに隣接しています
レストランでお客様の目の前で調理される人たちです。
生きたまま解体されたり調理されるのには全く違う処置が必要になるために別途案内させていただいております」
解体をショーとして楽しみたい人や食べられる女性と最後の会話と楽しみたいなどといったそういうニーズもあるのだが、
無制限の誘拐や殺人の偽装を避けるために専用のレストランでしか許されていない。
より希少価値が上がるために自分を高く売りたい人たちが利用する。
女学生たちの「奉仕活動」。その仕上げとして行われる卒業記念解体販売も、このレストランで行われる。
控室は簡素な空間だった。
十数人の女性が、思い思いに服を脱ぎ、自分の名前の書かれた箱に服を詰めていく。
その服はクローンとともに自室に返却される。
しかし、服を脱ぐ女性たちの表情は多様だった。
ここで服を脱いだ後は、食肉処理されるだけ。
全員が、服を脱ぐことを人間から食肉への境目と感じていた。
空を見つめて静かに気持ちの整理を行いながら服を脱ぐ人。
決心が鈍ることを恐れたのかことさらに素早く服を脱ぐ人。
こらえきれなくなったのかうずくまって泣き出す人。
夏樹は風呂にでも入るようにそそくさと服を脱ぎ、奥の扉を開けていた。
由佳は、服を脱いだ後、一度深呼吸してから奥の扉を開けた。
扉の向こうの廊下はコンクリート打ちっぱなしだった。
そこに全裸の裸足で入っていく。
ひんやりとした感触が薄気味悪かった。
扉の向こうで長い列ができていて、夏樹は前の方にいるのを見た。
前を歩く夏樹の足が心なし震えているのが見えた。
一列に並んだ女性たちは、一人ずつ係の女性に股間を広げさせられて、陰毛を剃らされていた。
夏樹も由佳も、股間を完全につるつるにされてから再び並べさせられた。
うう…なんか恥ずかしいなぁ…
そして、彼女たちの剃毛が終わると前の扉が開けられた。
そこに見えた光景を見て、由佳は息をのんだ。
ベルトコンベアーが奥に向けて回り続け、その奥で多くの機械が動いている。
多くの娘がベルトコンベアに四つん這いで乗せられ、首を機械にはめられ、足は鎖の付いた輪っかで固定されている。
首をベルトコンベアと同じスピードで動く首輪にはめられた娘はそのまま機械のトンネルに入る。
そこには、高速回転する鋸が首の位置で唸っていた。
彼女の首を拘束する首輪は鋸を挟むように通過した。
トンネルを抜けると、首のない裸身が血を流しながら吊り下げられていた。
それに続いて二人目の娘の裸身も機械から出てきた。
下を見たら、目を見開いた娘の生首が転がっていた。
「人間牧場からの娘の食肉処理が終わりましたら皆様の番になります。あちらの処理台に順番に入ってください」
今処理されているのは食肉用クローンらしい。
道理で同じ顔の娘ばかりが何人もいるはずだ。そう思って次々と機械にのまれていく顔を見る。
同じ顔が続き、たまに一人だけ違う顔がいたかと思えば同じ顔が続く。
その顔はさっき見たアイドルと同じ顔だった。
人間牧場では買う側からのリクエストが多いアイドルなどのクローンが多いのだそうだ。
アイドルはオリジナルは成長期に出世のために業界内の誰かに食べられ、そのあとのクローンもオリジナルより味が落ちても
「本人がさっきまで生きていた肉」という理由から高値がつく。
成長期は業界内で、絶頂期が過ぎると一般客にと何度も自分の体を売るのだという。
そして、人気のあるアイドルならさらに人間牧場にデータを売ることで儲けるシステムが出来上がっていた。
思い思いに処理台の首輪に頭を乗せていく。
一人ひとり自らベルトコンベアに乗り、首に機械をはめる。
彼女たちは一様に顔面は真っ青になって、手足は震えていた。
左側の機械から順番に処理されるのだそうだ。
当然右側から先に埋まっていく。覚悟はできていても後の方がいい。たった今処理される絵を見せられたからなおさらだ。
残った中からいちばん右の処理台に乗り、首を乗せようとしたところでへたり込む夏樹の姿が目に入った。
「夏樹?どうしたの?」
夏樹はさっきとは打って変わって泣きそうな顔だった。
「どうしよう…ここに来るまでは、いちばんきれいな顔でお料理になろうと思っていたのに、
だんだん怖くなってきて…動けなくなっちゃった…怖いよ…う…」
見ると、処理台はあらかた埋まり、残るのはいちばん最初のものだけだった。
「夏樹、ここに入りなよ。少しでも遅い方がいいでしょ?」
夏樹以外全員が処理台に乗ったのを見た由佳は処理台を降りてそう申し出た。
「でも…いいの?」
「いいよ、夏樹だもん。その代り、あたしの最期を見届けていて。」
本当にそれがよかったのかはわからない。最初の処理台で一思いに処理された方がよかったのかもしれない。
だが、夏樹は由佳の気遣いに背中を押されたようにゆっくりと由佳がいた処理台に入り、首輪をはめた。
そして、由佳が最初の処理台に乗り、首輪をはめる。
係員が足に輪をはめた。
ガタン
処理台が動き出した。
ベルトコンベアに沿って一列に処理されていくクローンの列の後に由佳たちの列が続く。
隣のクローンを見ると、恐怖に怯えた顔をしていた。
彼女たちはこの日のために生きていくように教育を受けていて、覚悟もできているはずだったが、
それでも怖いものは怖いのだ。
肉として育てられる彼女たちにはバックアップはない。
それに比べたら、自分はまだマシだ。
そう思うと気が楽になった。
そうだ、これで少しだけ我慢したら、あたしの意識はこの体から離れてクローンに移る。
少しだけ我慢、我慢
そう思うことにした。
夏樹の方を振り向くと、四つん這いのまま由佳の方をじっと見ていた。
自由になる片手で夏樹に手を振って見せる。
ゴトリ
前の娘が首を落とされる音だ。
一瞬で現実に引き戻される。
機械が近づく。唸りを上げる鋸の音が近づく。
恐怖を紛らわすために夏樹の方を見た。
夏樹に目で最後の別れを告げた。
じゃあね。先に行ってるよ。
由佳は目を閉じた。
鋸の音、刃物の冷たい感触、鈍い痛みが伝わる。
そして、体の感覚がなくなった。
「あちらが先日指名なさった島野由佳です。ごらんのとおり、無事食肉として処理されましたのでご希望通りにお届けさせていただきます。」
処理施設のさらに上に大きな窓が開いていた。
その向こうで、美樹が大きな体の異星人を見上げて話す。
異星人は満足そうな顔で、首のない由佳の体を見下ろしていた。
彼が由佳の姿を見たのは地球に来た翌日のこと。
廊下を歩く女性たちの中で、ひときわ美しいスタイルの女性がいた。
彼女の体を味わってみたい、そう思った彼はそばにいた地球人に彼女の名を聞き、すぐにリクエストカードを書いたのだった。
今、改めて首のない食肉となった由佳の裸身を見て、彼は喉を鳴らした。
由佳の体からはすでに血が抜かれていて、マネキン人形のような肢体をさらしていた。
その体は無駄がなく引き締まっていて、それでいて太腿や乳房には十分なボリュームがあった。
あの太腿に今すぐかぶりつきたくなった。
あの姿をそのままローストするのもよいし、ソースに浸して濃厚な味を味わうのもよい。
どんな料理にして彼女を食べさせてくれるのか。
今夜彼女を食べるのが待ち遠しかった。
彼が立ち去るころ、処理施設では夏樹が膝を震わせながら機械に入っていくところだった。
処理を終えた由佳の胴体が梱包されて、切り離された首とともに箱に入る。
同じころ、夏樹の胴体もすでに食肉となっていた。
由佳たちはトラックに積まれて出荷された。
由佳は会場に着くと、そのまま調理場へ運ばれる。
手際よく下味をつけた後、女陰に香味野菜を詰め込んだ太いチューブを差し入れる。
太腿は大きく開かれて紐で縛られる。
そのままオーブンに入れられる。
熱を帯びたチューブが動くとともに意識のない体が跳ねる。
それとともに体内に収まりきれなくなった肉汁が飛び散る。
それを、由佳の生首がじっと見ていた。
生首はスタイリストによって化粧されていく。
化粧を終えると、スタイリストは閉じていた目を開いた。
それとともに、じっくり焼きあがった由佳の裸身がオーブンから取り出される。
首を切り落とされて、体の感覚がなくなった後、ごろごろ転がる感覚だけが暗闇の中伝わる。
あ…あたし…首を落とされたんだ…え?でも?なんで意識があるの?
不思議な感覚だった。痛みも暑さも寒さもない。
体を動かすこともできない。
でも、意識と感触だけはあった。
大きな手に抱えられる感触とともに、首がないまま肉として処理された自分の体とともに由佳の首は梱包されて箱に詰められた。
荷物として運び出される感覚は独特だった。
熱いとか寒いという感覚はなく、ただただ荷物として遠慮なく運ばれていく。
中に女の子が入ってるなんて配慮は全くない。
目を開けることもできない暗闇の中でどれくらいいただろうか…
視界が開けたのは一瞬だった。
目の前をこんがりと焼きあげられた女の子の体が通る。
太腿と手を大きな包丁で切り離されて、胴体だけが大きな皿に乗せられる。
え?あたし…食肉処理されたはずなのに…
食肉処理されたんだからあたしの体は死んだはず。
意識はクローンに移っているはずなのだ
じゃあ、今のあたしは何なの?
目の前で大きな皿に乗った体は、ローストされてキツネ色に変わり、
さらけ出された女性器はぱっくり開き、体内からあふれ出た肉汁がとどまることなく流れ出ている。
とてもさっきまでの自分の体とは思えない。
しかし、変わっていない胸の大きさ、体の形をみれば、それは明らかに自分の体だった。
あ…あたしの体だ。
あんな風になっちゃったんだ。
ぼんやりとそんなことを思う。
由佳の首は胴体の脇に乗せられて運ばれる。
自分の体をこんな形で見るのも初めてなら、そんな体を惜しげもなくさらされるのも初めてだ。
取引先の異星人だけでなく、同僚や上司も視線をローストされたあたしの裸に向ける。
視界が開けたのは一瞬だった。
目の前をこんがりと焼きあげられた女の子の体が通る。
太腿と手を大きな包丁で切り離されて、胴体だけが大きな皿に乗せられる。
え?あたし…食肉処理されたはずなのに…
食肉処理されたんだからあたしの体は死んだはず。
意識はクローンに移っているはずなのだ
じゃあ、今のあたしは何なの?
目の前で大きな皿に乗った体は、ローストされてキツネ色に変わり、
さらけ出された女性器はぱっくり開き、体内からあふれ出た肉汁がとどまることなく流れ出ている。
とてもさっきまでの自分の体とは思えない。
しかし、変わっていない胸の大きさ、体の形をみれば、それは明らかに自分の体だった。
あ…あたしの体だ。
あんな風になっちゃったんだ。
ぼんやりとそんなことを思う。
由佳の首は胴体の脇に乗せられて運ばれる。
自分の体をこんな形で見るのも初めてなら、そんな体を惜しげもなくさらされるのも初めてだ。
取引先の異星人だけでなく、同僚や上司も視線をローストされたあたしの裸に向ける。
地球人の同僚や上司たちは自分に近い人たちが同じような姿になることが多いだけに
あまり好奇の視線などはむけず、同情に近い視線の人も多いが、
自分を食べようとする異星人たちの視線には遠慮がなかった
「あの娘の肉、おいしそうだよな」
「あの股間からあふれる肉汁なんかたまらないよな」
「あの性器がまたおいしいんだよ、ほら、近づくと実にいい香りが」
そういいながらあたしの股間に鼻を近づける。
うう…恥ずかしいなぁ
乾杯が行われ、会食が始まる。
由佳の手足は綺麗に皿に盛りつけられて、異星人の口に入っていく。
やがて、時間がたち、料理人があたしの体に近づく、
包丁をあたしのお腹に入れ、一直線に切り開く。
切り口から湯気とともに、あたしの内臓が見える。
料理人は、切り口を広げ、内臓を遠慮なく皿の上に引き出していった。
包丁で切り口を下に切り開き、股間を抉り取る。
切り出された股間は女陰と膣、子宮卵巣までがくっついて別の皿に乗せられた。
肋骨から乳房と胸の肉を切り分け、鎖骨に沿って包丁を入れて肩の肉をそぎ落とす。
最後に脊髄に沿って包丁を入れて背中の肉を肋骨と脊髄から切り落とす。
あたしの体はあっという間に骨の周りの肉をまとわりつかせた骨だけになってしまった。
手際よくあたしの体は切り分けられて周りの異星人にふるまわれていく。
自分の体や内臓が目の前で食べられているなんて…
切り分けられて、もうどこの部分かわからなくなった内臓が異星人の口に入っていく。
まるで普通の肉を食べているような光景。
しかし、その肉はあたしだった。
指名をした異星人はあたしの股間を振るまわれていた。
肉汁を垂れ流している女性器をおいしそうに頬張っている。
あたしの女の子の部分が異星人に噛み切られて、口の中に入っていく。
目の前でなくなっていくあたしをみて、自分が食べられているのだという実感がわいてきた。
それをみて、不思議なことに安心している自分がいた。
もう、こうなったら元には戻れない。
せめて、自分の体は美味しく食べてほしかった。
そして、会食は終わった。
骨だけになったあたしの体は首と一緒に下げられて、別のビニール袋に詰められる。
その先の行き場は分かっている。
食材になった人間専用の処理場だた。
さっきまで自分のものだった肋骨や腰骨と一緒にまたもや無遠慮に運ばれていくあたし。
あたしの意識、いつまで残っているんだろ…
他の娘の食べ残しと一緒に運ばれながらそう思っていると不意にビニール袋が破れた。
あたしか誰かの骨がビニール袋を破ったらしい。
転がり出るあたしの首は同じように転がり出た首の隣に落ち込んだ。
(夏樹?)
夏樹の首は、満足そうな顔だった。
(そうか…夏樹も食べられたんだ)
その瞬間、目の前の視界が開ける。
大きな機械。
そこに、ほかのトラックから投げ落とされた骨や肉の食べ残しが投げ込まれると、粉々に砕かれて、下へ落ちていく。
そのすぐ後、由佳や夏樹の首もその機械へ投げ落とされた。
「あ…もうこんな時間だ」
目覚めるあたし。
「そうか、あたし食肉処理されて、施設へ行ったんだっけ。
それで、書類を書かされてから…」
そのあとの記憶はなかった。今の由佳はその時点までの記憶しかないクローンだったからだ。
由佳はベッドから起きると、会社へ行くための身づくろいを始めた。
最終更新:2012年11月28日 22:53