オーブンからあたしの裸身が引き出される
犯されて身体を解体されるまでの苦痛に満ちた時間を経て頭部を切り落とされたあたしに感覚はもうない
ただ、一時間前まではあたしのものだった体が料理となって頭部以外が料理として再会しつつあるのを眺めるだけだった
持ち主のあたしでさえ見たことのない内臓は煮込まれて大きな皿に乗せられている
あたしの胴体はさっきオーブンから引き出された
そして、手を加えられていないあたしの頭部が料理の飾りつけとしてあしらわれる
もう、私は人ではなく肉であり料理なのだ
動くことも歩くことも話すこともできないまま異星人に食べられるだけの料理
食べられた後はこうして残った頭部も骨もゴブリンに食べられる
それで私の人生も終わるのだ
私は家族の借金のカタに自分の体を売った
その結果として家族を救える金と引き換えに私はブラックマーケットで売られて再生することもなく食べられる
ブラックマーケット
本来なら
クローン再生が行われるはずの食肉少女と違い生身の人間を取引する市場
違法であるのだがその肉を欲しがる異星と女性の肉以外に得るものを持たない地球の立場の違いゆえに半ば放任されたまま公然の秘密として存在している
そんなブラックマーケットで私は売られて食べられる
他にも拉致されたり騙されたりもっと理不尽な理由で肉になる娘もいた
それに比べたら自分で納得しただけましだ
そう自分に言い聞かせていた
料理となった自分が食卓まで運ばれる
運んでいるのはきちんとしたウエイトレスの服を着た自分と同い年くらいの娘
片方は服を着て人として生きているのに自分は料理となって食べられる
その違いに理不尽なものを感じる
なぜ私が、私だけがこんな目に合うのか
目の前の調理された女性の体を大きなナイフで切り裂いては皿に乗せて異星人にふるまう
「さあ、ちょうど食べごろですよ。太腿の肉をもっと切り分けますか?」
太腿にナイフを突き立てては解体していく
本当は罪の意識とか感じてもよさそうだけど、もうそんなのは慣れてしまって目の前の裸の娘には何のも感じなくなってる
あたしはこの
レストランで働く女子高生
バイトだけど実入りがいいから結構長くやってきてる
最初は料理された同い年くらいの女の子を切り分けるのに抵抗とかあったけどすぐ慣れた
「え?子宮もほしい?わかりました。今から切り分けますね。うわ~おいしそう」
お腹を切り開いて湯気を立ててる女の子の臓器を引き出し取り分ける
一人にひとつしかないものだから本当は貴重な部位なんだけどこのお客さんは相当のお得意さん
だから無理は聞いてほしいといわれてるので二つ返事でソースをかけて皿に盛りつける
目の前で裸で料理となって横たわっている娘だったものを見ても何も思わない
だってブラックマーケットで売られてこうして食べられる娘って自分から肉になるのを望んでる娘ばっかり
だったらちゃんとこうして料理として扱うのが正しいことじゃないの?
あたしはそう思う
だからこうして太腿の肉に子宮をもりつけて異星人に渡しても料理をとりわけしてるのと変わらない感情しかわかない
え?あたしがこうなったら?
嫌に決まってるでしょ
死んだ後にこうやって裸を晒して体をバラバラにされて食べられるなんて
だからなんでこうやって食べられたがる娘がいるのかあたしにはわからない
ここで扱うのは自分の意志で食肉になるのを選んだ娘ばかりと聞いている
とびっきり綺麗な娘も少なくない
ああ、もったいないな。こんなおっきいおっぱいなのに…
でも、好きでこうなったんだから仕方ないか
乳房を切り取るとじゅわっと脂が出てくる
美味しそうにそれを見る異星人に愛想をふるまいながら乳房の肉を皿に盛りつけた
あれ?店長がさっきの異星人と何か話してる?
またいつもの週末のゴルフの話かな?
「お疲れ様でした~」
あたしは仕事を終えて着替えに向かう
ロッカーを開けて…
不意にあたしの口に何がを押し当てられた
むぐっ…むぐぐっ…
抵抗したけど急に意識が遠くなっていく…
ゴウン…ゴウン…
意識の底に響く音で目が覚める
ここ…どこ…?
おぼろげによみがえる意識の中で徐々に回復しつつある感覚
視界が開けると、あたしはステンレスの台に手足を縛られて横たえられているのに気づいた
「え?なんで?なんで?あたし…もしかして?」
全身を冷たい風が撫でる感覚、そして動かない体で必死に視界を動かして映る自分の裸身
もしかして…ここは?
(え?ここってうちの厨房?なんであたしこんなとこに?助けて)
必死ででしゃべろうとするが声にならない
あたしを取り囲む異星人たち
大きな包丁を持った異星人たちが自分をどう見ているかは視線で明らかだった
「あたし…食べられるの?」
異星人の一人が動かない体に調味料を擦り込む
恐怖におびえるあたしの目の前にかざされた包丁があたしの喉元へ向かった
この日のディナーのメインディッシュが出る時が来た
「さあ、今日のメインディッシュは昨日までここで料理をふるまっていた江藤恵美です。
恵美さんは調理される寸前まで自分が食べられることを知らされてませんでした。
ですのでこちらの頭部も自分が食材になることへの恐怖と驚愕があふれています。
恐怖感がもたらす美味を是非ご賞味ください。言うまでもないですが、この娘が昨日までのウェイトレスであったことを今日のウェイトレスは知りません。
なにとぞうかつなひとことにはご注意を…」
挨拶が終わるとウェイトレスが綺麗に料理された裸の胴体と手足を運び入れた
そして、彼女の裸身は恐怖の表情を浮かべる彼女の目の前で食べられていった。
彼女を注文した異星人は綺麗に調理された太腿を口に入れる
昨日まで生きていた娘の肉は弾力を持って異星人の咀嚼を受け入れるが、あるところで抵抗がぷつりと途切れて肉に食い込む異星人の歯を受け入れる
それと入れ替わりに彼女の肉から受わっと肉汁があふれ出る
食肉のために育成された食肉少女と違う純粋な女性の味に満足した
そんな異星人を驚愕の目で見下ろす頭部を見ながら異星人は乳房を口に含む
期待通りふくよかで柔らかな乳房はマシュマロのように異星人の口の中で変形しては乳房を構成する脂をじゅわっと溢れ出させる
太腿と乳房に続き内臓に手を伸ばす異星人は自分の胃袋の許す限り彼女の命と肉体を味わっていた
その横に控えるウェイトレスは昨日までの同僚のお腹を切り開いては湯気を立てる内臓をふるまう
ウェイトレスの中でも彼女が昨日までの同僚であった者はいないし、先の挨拶を聞いていたものもいない
みんな目の前で料理となった女性が自分から志願して肉になったと思っていた
だから、目の前に引き出された料理についても特別な感情は持たなかった
「この娘も可哀そうにね。死んでからもこんなふうに体を食べられちゃうんだから」
その声を動かぬ表情で聞く頭部は調理の際に使われた薬剤の作用で意識を残していた
昨日まであたしが着ていたウェイトレスの制服に身を包んだ娘が皿に乗ったあたしの体をバラバラにしていく
まさかあたしがこんな目にあうなんて…
包丁で腹部を切り裂かれて内臓を引き出され、調味料を空洞となった腹部に擦り込まれる
そこまでの苦痛を動かぬ体は必死に受け止めるしかなかった
その苦痛の果てに頭部を切り落とされる瞬間、あたしは死への恐怖で一杯だった
その表情のまま頭部を切り落とされ、その瞬間あたしの体から感覚が遮断された
そのまま死ぬのかと思ったらどうしたわけか意識だけはそのままに調理されて変わり果てたあたしの身体と内臓が食べられるのを目の前で見せられた
ああ…今まであたしがふるまってきた女の子もこんな感じだったのか…
もう思い出しても仕方のない思いとともに苦痛の果てに人間でなくなった自分を無心の笑みで切り裂くウェイトレスが恨めしく思えた
こうしてウェイトレスの肉体が異星人にたべられ終わるころ、娘の意識も消え果てていた
その頃他の異星人が店主と話をしていた
「あのウェイトレスさん。美味しそうだよね。食べられる?」
「そろそろ肉質も食べごろと思いますよ。明日あたりどうですか?」
最終更新:2016年01月24日 13:27