「…はあ、こりゃどういうことだよ」
風景画、油絵、彫刻、絵本。
あらゆる芸術品が置いてある建物。
所謂、美術館というところに、俺…高須竜児は居た。
「バトルロワイアル…小説で読んだことはあったが、現実にあるとはな…」
…というか、バトルロワイアルは学生が主催する物じゃないだろ。
それに、学生じゃない奴なんてうようよいるじゃねーか。
それどころか、背中から羽根みたいなの生えてる奴とかいたし…。
なんて、突っ込みたいところは色々あるが…それよりも。
一番の問題は『これからどうするか』だ。
先述したとおり、この殺し合いは妙だ。
年齢は様々だし、恐らく日本人じゃない奴もいる。
なにか共通点があるのか、或いは適当に選んだのか。
そして、あの少年少女は何を目的としてこんなゲームを開催したのか。
小一時間考えてみても、さっぱり頭には浮かんでこない。
諦めた俺は暗闇に四苦八苦しつつ、デイパックから幾つかの物を取り出した。
(…これが地図か。7×7マスの正方形で…俺のいる場所は美術館。
ということはE-1か…気づかなかったが、海に近いんだな。
えーっと…ここから近い建物は…神社、廃村だな。
神社にいっても何も得られなさそうだが…)
そんなことを思いつつ、俺は地図内の建造物の位置、名簿を確認する。
そして気がついたことは、名簿の裏にありったけ書き込むことにした。
(こんなところか。…それにしても、俺すげぇ冷静だな。
既に人の命が三つも失われているのに…っうぷ)
思わず、あの凄惨な死体が頭に浮かぶ。
俺は喉まで上ってきた嘔吐感を無理矢理に押さえ込む。
ちょうどその時だった。
俺のいる位置から数mほど離れた位置から人の声が聞こえたのは。
「…誰か、そこにいるのね?」
「!!」
俺は声を出しかけるが、寸前で止める。
ついでに息も、止める。
「ねえ、いるんでしょ?
一応言っておくけど、私は殺し合いには乗ってない」
「……」
信じられるわけがない。
何故って、このゲームに於いて他人を信用することは危険極まりない行為なのだ。
それどころか知り合いだって、危ないかもしれない。
と、そこで俺は息を止めていた所為で酸欠になりかけていることに気づいた。
「ぷはぁっ!! 死ぬところだった!」
「ッ!? やっぱ居たんじゃないの!」
「おぅっ!?待ってくれ!俺だって乗ってない!」
「信じられないわね…乗ってないなら返事をするべきだったんじゃない?」
「俺だって…急に話しかけてくるお前が信用できねぇよ!」
俺は、身の危険を感じて大声で弁明する。
やはり冷静ではなかったらしい…その証拠に、必死で出した俺の声は震えていた。
そんなことはいい、まずはこの相手をどうするかだ。
出来れば、すぐにでも逃げたいところだ。
…若しくは、顔を見せて脅し、逃げてもらう。
だが、脅すにはリスクがいる。
まず電気をつけなきゃいけないし、それに相手が武器を持っていたらお終いだ…。
そんなことを熟考している間に、相手――声からすると少女か?――は移動していたらしい。
竜児の耳に、小気味よい音が響く。
カチッ
「うお、まぶしっ!」
「ったく…これで信用できたかしら?」
「え…?」
音の正体は、照明のスイッチだったらしい。
俺は目をごしごしと擦ると、相手の姿を確認する。
「ちゅ、中学生か」
その人の姿を見た瞬間、恐怖や不安が消える。
身長も竜児には遙かに劣り、顔は…美人と言うより可憐。
どこからどう見ても一般人で年下です、本当にすいませんでした。
「悪かった。…まさか武器も持ってないとは思わなかったよ」
「ええ、まあこちらこそ驚かせてごめんなさい。
でも…武器を持ってないのはお互い様だし、私の支給品はこれよ」
少女が手を持ち上げ、出した物は…金。
小銭を布の袋に詰めた物だった。所謂――外れアイテムである。
「…結構な価値になりそうな額だが…ここじゃ役に立たないな。
支給品はそれだけだったのか?」
「いや、特に調べてないだけ。それに、硬貨が一枚あれば十分なのよ」
「へぇ…、投げて戦うのか?そりゃ幾ら何でも無理があると思うんだが」
「投げるのよ?」
「だよな、流石にそりゃ……って、え?」
唖然とする俺を一瞥すると、少女はそれを一枚を取り出した。
レールガン
「ねぇ、超電磁砲って知ってる?」
「れーるがん?…あー、電磁石を使う兵器だっけ?」
「そう。意外に知ってるのね、そんな顔で」
「……あぁ、ありがとう…?」
俺の一気に下がったモチベーションを無視して、少女は100円玉を宙に弾く。
そして、俺の傷ついたハートを無視して、銀色に光る物体は回転しながら少女の親指へと載り、
「――――見せてあげるわ」
少女が、意味不明な台詞を俺に告げ。
俺が異変と耳を劈くような音に気づき、後ろを振り向くと。
「……………え?」
先ほどまで背を預けていた誰かの彫刻は木っ端微塵になり、さらにその後ろにあった美しい風景画は、額縁だけ残して消えていた。
俺は、理解できず眉を顰める。
因みに彫刻に感情移入して怒っているのではない、単に驚いているのだ。
「…え、え?どういう事だ?」
まったく以て、意味が分からなかった。
あの少女がコイン一枚で何をしたのか。
何故、彫刻や絵が壊れたのか。
「私が言いたいこと、分かるかしら」
「言いたいこと?寧ろ俺は訊きたいことが山ほどあるわけだが!」
「じゃあ一つだけ教えてあげる。あの彫刻を破壊したのは紛れもない、私。
それと、忠告しておくわ」
「忠告?」
「この場所では常識を捨てた方が良いわね、ということよ。
まぁいいわ、準備をして。もう移動するわよ」
少女は、曖昧な言葉を残してデイパックを肩に掛ける。
それにつられて俺も荷物を整えるが、頭の中は疑問が飽和して、何も考えられなかった。
「――って、こんな状態じゃ駄目だな。
ところで…えーと、名前は」
「御坂美琴よ。あなたは?」
「高須竜児だ。で、御坂。これから何処へ行くんだ?」
「んー…そうねぇ、とりあえず街に向かってみようと思う。
建物が多いからいろんな物が得られると思うしね」
それだけ言うと、御坂はすたすたと歩き出す。
俺は、年上って分かってるのに敬語使わないのか、なんていう感想を抱きながら足を速めた。
【E-1 美術館/1日目・深夜】
【高須竜児@とらドラ!】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
1:御坂についていく
2:知り合いを捜しても良いが、なるべく人と会いたくない
【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康
[装備]:布の袋
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本:対主催
1:北の市街地へ向かう
2:知り合いを探す
【布の袋@現実】
何の変哲もないただの袋。
中には100円玉がいっぱい入っていて、割と重い。
振り回して攻撃すれば戦闘で使える…かも?
最終更新:2009年07月14日 22:33