-Evil Flower- ◆z5z0unhh5U
バトルロワイアルの円滑な進行において重要な首輪。
殺し合いのルールを守らせる枷。
殆どの飼い犬は首輪をつけているが、その犬でさえも生まれて初めて着ける時は恐怖と違和感のため
攻撃的になったり動けなくなったりすることがある。
さらにバトルロワイアルの首輪には、首と胴体を切り離すほどの爆薬を搭載している。
人間ならばその恐怖は相当なものだろう。
しかし、恐怖はそれほど感じていないにも関らず強烈な違和感を感じている参加者が
ここに一人いた。
影よりも濃い黒衣を纏うその人物は、異様に光る双眼を前に見据え
暗い道をひた歩いている。
(……殺しあえということは依頼か。)
彼は『殺し屋』。このバトルロワイアルにおいて始めからアドバンテージを持つ人物の一人。
今まで多くのフレイムヘイズを殺めてきた懐刀サブラク。
だが、彼は今の状況に少なくはない不満を感じていた。
(仕事としてなら殺しには乗ってやる。しかし、この首輪は気分が悪い。
………誰か外せる物はいないのか?)
◇ ◇ ◇ ◇
桂ヒナギクは気が付くと灯台を前にしていた。
目の前で起こった非日常の光景が、いまだ瞼に焼き付いている。
一人で月明かりの薄暗い室内にいると死の気配が身近に感じ怖気がとまらなくなる。
(なんであんな酷い事…)
不気味な静寂が彼女を包む。
「っ正宗!」
たまらず愛用の木刀の名を呼んだ。
呼びさえすればいつも彼女ために飛んできてくれる正宗。
桂ヒナギクに戦う力を与えてくる物。
だが、静寂は変わらず心細さをいっそう増しただけだった。
「あの~」
「ひえっ」
背後からの突然の声掛けに素っ頓狂な声を上げてしまう。
「わっと、ごっごめんね。驚かしちまったかい!?」
振り返るとそこには赤毛をミディアムボブにした同年代らしき少女がいた。
害意がないことを示すように手を慌てて振っている。
「ああっと、私は櫛枝実乃梨っていうんだけど……バトルロワイアルって悪い冗談…だよね?」
「…」
ヒナギクはポカンとした表情で赤毛の少女を見続ける。
「およ?大丈夫?どうした!気を確かに持つんだ~~」
おどけた口調で言う実乃梨にヒナギクは笑みを見せる。
「いえ…なんだか、まともな人が居て嬉しかっただけで…」
ほーと息を抜く。
「私は桂雛菊と言います。」
「そっかそっか、よろしくね」
その後、灯台内に入り二人は簡単な自己紹介をしていた。
「なんと!ヒナギクちゃんは1年生で生徒会長やってるのかい!それはすごいねぇ」
一々、大袈裟な反応をする実乃梨。
「いえ、ただ友達に推薦されただけですから…むしろ櫛枝さんの方がすごいですよ。部活の後にバイトまで
するなんて、5~6個掛け持ちでしたっけ?」
「あれ?いくつだっけ?まあいいや、若人は働かないとね。時間があるなら勤労怪奇ファイルだよ」
「あはは、勤労の域を軽く超えていますよ」
恥ずかしげに頬をかく。
「へへ、やっぱり夢のためだからね…」
「夢、ですか?」
「…オリンピックに出たくてさ。そのためには、まずはソフトの強い大学かなって。その学費の為にね」
「へぇ…」
ヒナギクは素直に感心した。
夢を見つつもそれから逆算して身近にできることから頑張っている実乃梨に対して。
「あ、ごめんよ。変な自分語りしちゃって!イカンねぇ、おいらもちょっとテンパっちゃっているのかも」
「そんな事ないですよ!夢を持っているなんてすごいなって」
「やめとくれよ。恥ずかしいじゃないか~」
頬を赤らめる実乃梨。
その先の最後のドアを開けると厨房らしき所へ出た。
「お、キッチンだ。ここで荷物チェックしようか?」
そう言って先に入っていく。
厨房までやって来た二人は荷物の確認を始めた。
さすがに電気をつけるのは躊躇われた為、ありったけの毛布を集め遮光しランタンの光だけで我慢する。
上なら月明かりでも大丈夫だろうが、ヒナギクが高所恐怖症と言ったため最初から選択肢にはない。
「ふむう、私は三人だね。この逢坂大河って子と高須竜児君と川嶋亜美ちゃん。ヒナギクちゃんはどう?」
名簿に目を通していた実乃梨は顔を上げてヒナギクに聞く。
「私は綾崎ハヤテ君に三千院ナギ、マリアさん、鷺ノ宮伊澄さんですね……四人もいる。」
「そうか~、じゃあまず仲間を見つけないとね。皆無事だといいんだけど」
なるべく軽い調子で話しかける。
「でも、もし戦いに乗っている人がいて本当の殺し合いになったら私たち……」
そう言いヒナギクは俯いてしまう。
「……」
信じたくはないが人の死ぬ瞬間を見てしまったのだ、恐れ慄いていても仕方ない。
同じく俯きそうになった実乃梨だが、キッと前を見据える。
「大丈夫だよヒナギクちゃん!私、体力なら自身あるし。いざとなったらソフトと連日のバイトで鍛えた私
が守ってあげるから!」
屈託なく笑顔を見せる実乃梨。
「それに、見て見てほら。私のバッグの中にあったバットだよ。私にこれを渡せば百人力!鬼に金棒!不審
者なんて即刻撃退なんだからねぃ♪」
「あっ、それなら私も剣道をしているから、竹刀や木刀みたいな物があれば大丈夫ですよ!」
明るく振舞う実乃梨を見て、やっと元気が出てきたらしいヒナギクが言う。
「それはまったく頼もしい事だな」
気配もなく、彼女らの背後から第三者の声が聞こえた。
毛布を払うとそこには、マフラーを幾重にも重ね、黒ずくめのマントを揺らめかせる男の影が室内に現れて
いた。
……その姿は正に。
( (…へ、変態さんだ!!!))
二人はそう思う以外に無かった。
空気が凍りつく。
灯台に強く打ち付ける風の音だけが聞こえる。
突然の来訪者に二人は困惑していた。
なにより、その手に握られた巨大な刃物が二人の動きを止めていた。
「ところでお前はこの首輪を外せるか?」
対する男は何でも無いように淡々と言い放つ。
「え?」
「へ?えっと、おじさん何を言って…」
徐々にバットを構えながら実乃梨は問う。
「もう一度だけ聞こう。この首輪を外す当てがあるか?」
「え?いや、鍵穴もないのにどうやって!?」
男は静かに近づいてくる。
「ならばお前は要らないな」
横一閃。目にもとまらぬ速さで黒衣の男は手にした鉈を実乃梨の胴に目掛けなぎ払った。
「っ!」
そして実乃梨は目にする。切り刻まれ飛散する自身のブレザーと肉色の臓腑を。
「ひ、ひぎっ。あ、ぁあぁああああ゛あ゛!!」
ショックで全身の力が抜け膝をつく実乃梨。
ヒナギクは一瞬で変わっていく状況に足が固まる。
(何が起こっているの?意味が分からない………!!!)
ボトボトと塊の血が厨房の床に血だまりをつくってゆく。
実乃梨の胴の空白になった箇所へ上の内臓が少しずり落ちる。
「ぁアァぁア―あアァアアァ!?」
目を剥き半狂乱になって落ちた臓器をかき集め腹に戻そうとする。
だが体を支える力が無くなり、その赤毛よりも緋い血溜まりへと前のめりに倒れこむ。
「あ゛ガッ、―ァ――」
血の中でその瞳から光が消えていき、やがて動かなくなった。
「……く…し…枝さん…」
ヒナギクは呆然と血塗れの死体から目を離せない。
全身がガタガタと震え、冷や汗が噴き出す。
先ほどまで話していた人が、今やただの有機体の塊として横たわっている事実を信じることができない。
「弱いな、赤毛だが炎髪ではなかったということか、紛らわしい事この上ない」
黒衣の男はぼやきつつ、近くにあった毛布で鉈に付いた血脂を拭き取っている。
「お前はどうだ、この首輪は外せると思うか?………二度は言わんぞ」
ヒナギクの方を向いて訊ね、その呆然とした姿をみて付け加える。
「……え」
ビクリと身を震わせ振り向く。
男は無造作に鉈を構えヒナギクの方を値踏みするように見ている。
彼が殺し合いに乗っているのは間違いない。
(ここで間違えたら…)
実乃梨の死体をチラリと見る。
「し、調べてみるまで分からない。それに私の知り合いでこれに参加している三千院ナギって子ならもしか
したら!」
声が裏返りながら、勢いに任せて捲くし立てる。
(…それか、ハヤテ君か)
言い終わって気づいたが余計な事は言うまいと黙り込む。
沈黙が舞い降り、ヒナギクに重い圧迫感が迫る。
「ハッタリかどうかは知らんが、この首輪を外す当てがあるということだな?」
興味があるそぶりも見せず男は淡々と言う。
「お前の名は?」
「桂雛菊…」
表情を硬くして答える。
「我が名は懐刀サブラク。殺しの依頼を請け負う事を生業としている」
(殺し屋!?)
ヒナギクはその言葉を聞き驚愕する。
そして自分の命の危険が去っていないことを今更ながら確信した。
「さて首輪を外す為にはその解析がいる。そして解析の為にはサンプルが必要だ。そうだろ?」
実乃梨の荷物を拾いながらサブラクは問う。
そして、鉈の持ち手をヒナギクの方へ向けた。
「?」
「鉈を貸す。その死体の首輪はお前が外すんだ」
「………………え?」
普通の会話の口調で話しているが現実感の無い言葉を聞き、また動けなくなる。
「安心しろ、そいつは既に死んでいる。肉を捌くのと同じだ。
我が手でやってもいいが、手が滑ってお前を切るかも知れんぞ…」
(試しているというの…)
下唇を噛み、震える手で鉈を受け取った。
鉈を持ち、うつ伏せに倒れている実乃梨の死体の方を向く。
傷口が見えない為、血だまりの中で寝ているようにも見える。
だがその強烈な死臭がヒナギクを怯ませた。
後ろではサブラクが実乃梨の持っていたバットといつの間にか手にしていたナイフと包丁を玩んでいる。
(この鉈があれば…)
そうは思ってみたが、先程の人間離れしたサブラクの居合いが脳裏によぎる。
(やらなきゃ…私が…)
再び死体を見やり、首輪に沿って鉈を添えた。
頚椎の繋ぎ目を探し、首筋に刃を当てる。切れ味が良いのか触れただけで薄皮を切り細い血が流れ出す。
心を無心にする。
余計な物は何も見ない。
刃が垂直に入るように調節する。
目を瞑りそのまま全体重を鉈にかけた。
腕に返り血が浴びる、ゴリゴリという骨を絶つ音が全身を通して伝わる。
カクカクと首が揺れ、髪が手を擦る。
まだある体温が今はとても不気味だ。
鉄の濃厚な臭いが鼻腔をさす。
(…っ)
永遠にも感じられる時間の後、唐突に刃は肉を断ち切り地面に落ちた。
首輪の乾いた音が床に響く。
ヒナギクは目を開ける。そして目が合う。
もはや何も映さない二つの双穿。
首を切った衝撃で転がったらしい、
「ぅあ……」
鉈を取り落とす。
その開ききった瞳孔がヒナギクを責めるように見続ける。
実際は彼女がそう感じているだけだが…。
そして、恐怖と緊張の喫水が崩壊する。
胃液の苦味とともに大量の唾液が一気に咥内を満たす。
(だめ…)
そう思う間も無く、腹部が痙攣し半消化の胃の内容物を嘔吐した。
ヒナギクはその汚物の着地点の向きを変えようと必死で首を動かそうとする。
「あっ…かッぉえっ」
しかし無常にもかつて実乃梨だった物へと降り注いだ。
サブラクは苦しそうに喘ぐヒナギクを尻目に落ちた鉈を掠め取る。
「どうした、その程度で?」
刃についた血脂をふき取りながら見下すように嘯く。
「…だってこんなの…悪魔の…することよ…」
涙目になって必死に反論する。
「どれが悪だの正義だの分からない物だ。それに、世界は何が起こっても不思議じゃあない。あの壇上の五
人にとってはこれが正義なのかも知れんぞ?だが正義こそ最も人を殺す思想。ならば、自らが悪となって生
き抜くしかないだろう?……私は依頼を遂行する達成感が正義だがな。」
怒りを込めた目でヒナギクはサブラクを睨み付ける。
(型に嵌る事のできない馬鹿のロジックよ、そんなこと言ったら何でもありじゃない……!!)
喉まで出掛かった言葉を実乃梨の方をちらりと見て飲み込む。
「ふっ、そういえばヒナギクと言ったか、仲間の死体の首を切るとは、さしずめ悪の華と言った所だな。」
何も言わないヒナギクを見てどう思ったのか、そう言い哂った。
「………」
「付いて来い、ちゃんと首輪を解析しておけ」
「首輪を外せたとしても殺すんでしょう?」
実乃梨の血塗れの首輪を手にし、立ち上がりながら言い捨てる。
「ここで逃げても殺すがな」
サブラクは振り返らずにそう言い歩き続ける。
(どちらにしても殺されるなら…)
そう思い、桂ヒナギクは一歩を踏み出し、目の前を歩く黒衣の男に付いていく。
「櫛枝さん…ごめんなさい」
死体となった実乃梨を振り向き呟く、自分がしてしまった業を忘れない為に。
まだ死にたくない、その一心で歩を進める。
たとえその行為がサブラクの言う通り、自らを悪の華と定める事になっても。
「…しかし大体なんで我が身が突然こんな所につれて来られたのか。
依頼なら正規の手続きでもってだな…我が本体はどこだ…54人は多…
だが、依頼は果た…首輪は気分が悪…しかし本体が不明ならばこの身が滅びたら…
理不尽な依頼…武器がいる…宝刀があれば…とりあえずもっと剣を…」
その間にもサブラクはブツブツ不平を言い続けていた。
◇ ◇ ◇ ◇
夢を見える物といい、まっすぐ一直線に一途に追い求めた少女の遺体。
櫛枝実乃梨という人間だった魂の依り代の器は灯台の厨房に放置された。
見えていたはずの夢を咲かせること無くその命を散らした。
夢見た奴が無様を見るのか。
闇は深く、陽はまだ昇らない。
【櫛枝実乃梨@とらドラ! 死亡】
【残り55人】
【I-01 灯台/1日目・深夜】
【サブラク@灼眼のシャナ】
[状態]:普通、不平不満。
[装備]:竜宮レナの鉈@ひぐらしの鳴く頃に
[道具]:基本支給品×2、不明支給品0~4、ホーミング金属バット@涼宮ハルヒの憂鬱、
灯台の厨房にあったナイフ、包丁。
[思考・状況]
基本:依頼として殺し合いには乗る。
1:首輪を外せそうな者を探す。
2:依頼は果たす。
3:宝刀があれば奪う。
[備考]:参戦時期は次の書き手さんにお任せします。
【竜宮レナの鉈@ひぐらしの鳴く頃に】
竜宮レナの持っていた鉈。
【ホーミング金属バット@涼宮ハルヒの憂鬱】
野球大会で使用した物。
誰が使っても100発100中でホームランを打つことのできるバット。
【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態]:恐怖、罪悪感、腕が実乃梨の返り血に汚れています。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品0~3、実乃梨の首輪
[思考・状況]
基本:死にたくない。
1:サブラクには逆らえない。
2:首輪の解析が最優先。
3:ナギ、ハヤテたちも心配。
4:いずれ実乃梨をきれいに埋葬したい。
[備考]:アニメ第一期終了後より参戦。
[その他]
- 実乃梨の死体(首輪なし)は灯台の厨房に放置されています。
- 実乃梨の首と胴は切り離されています
最終更新:2009年08月01日 02:54