「殺し合い……殺し合いねぇ…」
桃色、という特徴的な髪を持つ少女ルイズは、主催者の述べた言葉を反芻していた。
別段恐怖があるわけではない。貴族の娘である以上、そんな醜態をさらすことはない…つもりだ。
かといって、ゲームに乗る意志は持っていない。
バトルロワイアルという、意味不明かつハイリスクノーリターンな遊戯に不満があるからだ。
優勝者は願いを叶える? …馬鹿げてる、そんなこと出来るわけないのに。
「…とはいえ、主催者に立ち向かうことは不可能でしょうね」
それには問題が二つある。
一つ目は、場所。先ほどまで自分たちがいた場所とは違い、ここはどうやら森の中のようだ。
多分、出ることは無理。その理由が、二つ目だ。
ルイズは、自分の首に巻き付いた金属の首輪を、指でなぞり感触を確かめた。
二つ目の理由は、首輪。
これが厄介で、人間である以上逆らうことが出来ない。
多分、ずっと同じ方向へ歩き続けたところで爆発するだけ。
それに解除するには、もっと器用な――たとえば、タバサのような――人が必要だろう。
つまり結論は、最初にも述べたように現段階では不可能。
では現在、私がすべき行動は何か?
答えは簡単、武装である。こんな森の真ん中にいては、夜中とはいえ目立つのだ。
ルイズは、早急に支給品の確認を始めた。
デイパックから出てきた物は、主催者の説明通り。
あとは、気になる物が何点か、という処だ。
「高須棒…ってなによ、杖みたいな物かしら」
ルイズは割り箸にティッシュと輪ゴムを着けたそれを、興味深そうに見つめ――
投げ捨てた。こんなもの、殺し合いの場に必要ないだろう。
「…如雨露、ね。飾りにセンスはあると思うけど」
投げ捨てた。綺麗ではあるが、必要性がない。
精々鈍器に使えるかもしれないが、腕力に自信のないルイズには邪魔にしかならなかった。
「そして、最後は―――」
「こんばんわ」
「!?」
突然聞こえた声に、ルイズは思わず飛び退いた。
心臓の鼓動は激しく、眉は動揺でつり上がる。
(危なかった!この子が乗ってたら死んでた!)
数秒経ち、ルイズはやっと落ち着きを取り戻した。
その間も――後に聞いたらルーミアと名乗っていた――少女は、ルイズの返事を笑顔で待っていた。
◇
その後、二人は打ち解け会話を楽しんでいた。
ルイズは自分の知人について、ルーミアは幻想郷という世界について話した。
情報交換が済んだ頃だったか。
それとも、二人の支給品を確認し合ったときだったか。
それとも、これからの行動方針を話し終えたときだったか。
悪夢という名の時計の針が、終わりの時間を伝える。
時とは恐ろしい物で、残酷だ。
ぎゅるるるるる……
シンデレラに登場する城の鐘とは大きく違う。
気品さはなく、あるのは生物としての本能。
ある意味芸術とも言えよう。鈍りきった人間の、本性を現してくれる。
―――ルーミアの、腹の音が鳴った。
ルイズは、それを笑ってみていた。「小さい子は何をしても可愛いなあ」と、平和呆けしていた。
だが、その笑顔は次の瞬間に消える。
ルーミアは、ルイズの手にかぶりついた。
直後、悲鳴。
ルイズは、身の危険を察知し、直ぐに逃走する。
(何が人間の本性よ、ただの化け物じゃない!!)
仕方がないのだ、妖怪である以上人間を喰らうのは常識。
それが非常識だからこそ、幻想郷という世界があるのだが。
そう、ルーミアは妖怪だった。故に、ルイズを食べようとした。
「ていうわけでさ、おとなしく食べられてよ」
「ひぃッ!?」
貴族と野生の妖怪では全く違う。
動きは素早いルイズでも、森林での動きではルーミアに劣る。
ルイズは、後ろ襟をつかまれ地面に叩きつけられた。
「痛……ッ!!」
「いた?戴いてもいい、ってこと?」
「な訳ないでしょ、離しなさいよ!!」
「話す?私の思い出話が聞きたいの?」
「違う、っていってんでしょ!」
これは態となのか。いや、天然なのか。
どちらにせよ凶悪である。つーか笑顔でこっち見るな。
このままでは間違いなく殺される。
それよりも食われる。
生きたまま頭を食われる!
「そんなこと、させるわけないでしょ!!」
ルイズが右手に持った杖を振り上げる。
刹那、森の中に閃光が瞬いた。
◇
「げほっ…げほっ…」
炎が上がり、煙が舞う。
湿度の高い森の中でエクスプロージョン、所謂爆発呪文なんて行う物ではない。
水素の爆発が起きてしまったのである。
幸い怪我はそこまででもなかったが、ここにいては煙で中毒死してしまう。
ルイズは、燃え広がる炎から転がり出ると、自らの指を確認した。
「酷すぎる…初っぱなからこれはないんじゃないの…っ」
不幸に涙が出てしまう。なんせ、右手の指が全て消えていたのだから。
痛みは感じられないが、きっともう少し立ったら襲ってくるだろう。
それよりも早く、この場から脱出しなくてはならない。
「初っぱな、ってなに? もう終わりだよ、ルイズ」
「え」
―――ぐしゃり。
頭が潰れる独特の音と伴に、ルイズの意識はすぐに途絶えた。
◇
森の中、少女の鼻歌が聞こえる。
その姿は酷い。腕は黒く焦げ、服は布きれと化している。
しかしそれでも頭部、脚部に大きな怪我が見られなかった。
少女は、妖怪。
人々を脅かす能力を持ち、強大な妖力を持つ。
それ故に、かつて賢者に封印された妖怪。
封印は、いとも容易く破られた。
髪に結い止められていた、赤いリボンは姿を消してしまった。
少女の名は、ルーミア。
人を喰らう妖怪にして、闇を操る程度の能力を持つ狩人――――。
【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔 死亡】
【H-6 森/1日目・深夜】
【ルーミア@東方project】
[状態]:腕に重傷、頭部・脚部以外に軽傷、服がボロボロ、EX状態
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:お腹がすいたら誰かを食べる
1:ルイズを食べる
2:服を探す(ルイズのを着る?)
※ルイズの支給品、ルーミアの支給品は全焼しました。
※高須棒・如雨露は助かっている可能性があります。
【高須棒@とらドラ!】
高須竜児が掃除に愛用している棒。
松居棒とは一切関係ございません。
【翠星石の如雨露@ローゼンメイデン】
ローゼンメイデン第三ドール、翠星石の武器。
彼女はこれを使い、植物を操ることが出来る。
【杖@現実】
フィクションで登場する魔法の杖を再現した物
力を秘めているわけではないが、魔法使いはこれで力をコントロールする。
最終更新:2009年12月05日 11:49