第二十六章-第二幕- 対地対空同時包囲網
既に
FSノア49の戦力によって完全制圧された
ヴェール・シティを、敵の手から
人類の手に奪還するための戦いの最中、
勇者軍主力部隊はシエル、ジークらと無事に合流。
更に駆けつけようとする増援を待ちつつ、敵増援に対処中であった。
エリミノイドに加えて、謎の小型浮遊円盤が登場してきた。
機銃以外のまともな武器はほとんど持ち合わせていないようだが、
数で攻めてくる分だけ、非常に性質が悪い。
対して、有効な対空迎撃手段を持つ者は、人数の割に限られている。
空中を飛行出来るジルベルト、セシリア、フローベールの三名。
そして射撃を得意とするルシアぐらいのものである。
「ちょっとごめん、円盤の相手するから、下は頼むわ!」
ルシアが一言告げてから、対空攻撃に回る。
「了解! 俺等も一応加わってみるとするかね!」
一応弓を使えるコンラッドに、魔法に長けたリゼルも加わり、
対空攻撃要員が二名ほど増えた。ありがたい話だ。
他、ユイナ姫、ライナス、シルヴィア、ジーク、シエル、
ソニア、リュミエルは全て対地要員になる。
「むー!」
必死に円盤に食らいつくジルベルトだが、剣撃も砲撃も
ほとんど回避されてしまう。大振り過ぎてまるで命中しない。
人間とは違うので砲撃がかすめた程度では
受け流されてしまうという点では、相性が悪かった。
地上はこのままでも問題ないだろうが、空中では
自分一人が足手纏いな事にジルベルトは困っていた。
そもそもが立て続けての連戦で、ただでさえ消耗の激しい
絶壁砲剣『矛盾』を着用し続けて砲撃を乱射しているので、
ジルベルトの体力も魔力も底を尽きかけていた。
「
封神封魔流、速の秘剣――
精霊包囲弾!」
広範囲に結界を展開。その中で精霊が暴れ回る。
その範囲内の敵は一掃したが、ジルベルトの魔力が尽きた。
「うー……」
呻きながら何とか不時着するジルベルト。
そこに多数のエリミノイドが襲いかかる。
ジルベルトはもたもたと回避機動を取ろうとした。
ちゅどむ! ちゅどむ!
(誰!?)
ジルベルトの左右から銃弾が飛ぶ。エリミノイドを撃破した。
その左右からはテディ、ヴァジェスの二名が登場した。
後ろを見れば、
狙撃砲『アイズ・オブ・バーバリアン』を
久々に構えているドルカスが、引き続き狙いを付けている。
相変わらずの驚異的な予測射撃性能である。
「待たせたな、隊長! 任せろ!」
「勇者軍に手を出したのが間違いだったな……思い知るがいい!」
テディとヴァジェスはそれぞれにエリミノイドを蹴り倒す。
ヴァジェスは一足飛びに
ドラグーンから
ワイバーンへ、元に戻り、
そのままドルカスと一緒に浮遊円盤への攻撃を再開する。
「隊長、大丈夫か!?」
テディが聖杯ライブチャージャーの力を展開する。
ライブチャージャーには、力の源を生物から吸収し、
それをまた生物に還元する力がある。いわばエネルギータンクだ。
(ありがとなのー)
たちまちジルベルトに活力が戻り、向かない空中の高速機動戦は諦め、
地上のエリミノイドの殲滅に力を注ぎ始めた。
自分の適材適所というものが分かると、ジルベルトだけでなく、
勇者軍全体が滅法強かった。あっという間に敵の数が減っていく。
だが、それでも後から後から浮遊円盤が湧いて出る。
どうやら、エリミノイドは弾頭ハッチから出るため数は少ないが、
浮遊円盤は直接生産ベースらしき場所より送り込まれているようだ。
やや遠くから明らかに毛色の違う建物があり、そこから発進している。
「こういう大規模建築物の破砕は俺の出番だ!」
ヴァジェスはワイバーン形態のまま、全力を出す。
「レーザーブレス!」
きゅごぉぉぉぉぉぉん!!
ヴァジェスのブレスで、たちまち生産ベースの一基が撃滅された。
立て続けにジルベルトやドルカスなど、建造物の破砕が
得意な人員が、残りの生産ベースに向かって突っ込み、
あっという間に建物もろとも破壊していく。
「あとは残りカスだ! 踏ん張れ!」
その間も増え続ける敵に対して、テディが叱咤する。
「おおーッ!」
士気は更に上がり、すぐに戦闘は終了した。
一機残らずズタズタに破壊されたメカの群れの中で、
勇者軍は勝ち鬨をあげた。
明らかに静かになったのを察知すれば、市民達も
様子を見に出てきて、都市を奪還したのを理解するだろう。
これ以上ここに長居する理由も無かったが、
出来ればバスクがこの周辺にいるかどうかの確認だけはしたかった。
「ねえ、シルヴィア。あなたの手持ちの機材で生命探査出来るでしょ?
悪いけど、バスクを探さないといけないの。運が良かったら
この市街地の地下水路のどっかに引っ掛かってる可能性もあるし」
「はいはい、もう見つけてますよー」
「……え?」
予想外にも程があるシルヴィアの返答に、
シエルは心の底から困り果ててしまった。
「……見つけてるって……あるの? 生命反応?」
「ええ、シェルターの中にたくさん、いっぱいです」
「……そりゃそっか」
よくよく考えたら生きている人間はバスクだけではないのだ。
これは特定の一人を見つけるのには、骨が折れそうだった。
「……うむ? シルヴィア。一人、近付いてきていないか?」
「え?」
今度はシルヴィアが驚く番だった。
生命反応のうちの一つが、まっすぐこっちへと向かってくる。
「バスクなのか?」
「……とは限りませんが……」
ついさっきの、今である。敵である可能性は否定出来ない。
あらゆる可能性に対処すべく、勇者軍は一切警戒を解かず、
その生命反応の一つが、自軍に真っ直ぐ向かってくるのを、
ただただ待ち受けるしかなかったのであった――
最終更新:2011年08月20日 20:24