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第二十六章-第一幕- 逆撃の勇者軍






ライナス、リュミエルと合流後、
ザン共和王国民政部ライディング・アーマー、
『ホークマンEXエディション』に搭乗するメロウ=クミンを
撃退後、進路を崩壊したヴェール・シティへと向けた
勇者軍主力部隊であった。

「……水路の見取り図をもらったのだが、
 随分と長々と続く下水道だな。
 こんな所まで来ることになるとは思わなかったぞ」
と、いきなりジークはぼやいた。
こちらは勇者軍主力部隊からやや離れた距離にいる、
ジークと愛馬エンテ、それにシエルと、
彼女が一時的に保護しているバスクの愛馬、
ヴィッセルの編成で動く遊軍であった。
彼等はあれ以降、ジークの治療もそこそこに、
必死に見取り図を入手し、そこを辿って下水道の
最終到達点の一つであるヴェール・シティに向かっていた。

もし流れに流れてくるならこの位置にいる可能性があったし、
そうでないならないで、いよいよ地下への突貫も考えなくては
ならないだろう、と二人は考えていたからである。
無論、ヴェール・シティが壊滅状態なのは知っていたが、
地下にある下水道まで丁寧に破壊し尽されているとは
到底思えなかったし、事実シェルターに民間人も
篭ったままだと聞くので、行く価値はあるはずであった。
「ねえヴィッセル。お前のご主人を見つけないと、ね?」
「ひひぃぃん」
シエルが優しく問いかけてやると、ヴィッセルは応じた。
ここしばらくの旅で、随分シエルにも懐いてくれた。
傷を治療してやったのが大きかったのかもしれないが。
「……しかし、気になる」
「何がよ?」
ジークは頭をばりばり掻いて悩みだした。
「民間人だ。確か勇者軍メンバーが救援に入ったおかげで、
 無事に退避できた者がほとんどのようだが、
 例の『FSノア49』とやらが撤退した後でも
 民間人が出てきたというニュースはとんと聞かない」
「復興計画を立てに行った人も民間人じゃないらしいしね。
 それは確かに気にならなくもないかしら」

そして、二人はヴェール・シティの入り口に立った。
と、いきなり人型機動兵器の襲撃を受けた。
「例のエリミノイドとやらか!?」
ジークは斧を早速構える。
「なるほど……答えは単純だったわけね。
 完全制圧されてるから、篭るより他、手は無いってこと?」
シエルは乗馬しながらの戦闘は出来ないので、
ヴィッセルを少し遠くへ退避させ、徒歩で戦闘準備をする。
その間の攻勢はジークが上手く防いでくれている。
どうやら怪我もすっかり治っているようだ。

「うむ、数が多いようだな。不利か?」
斧が思ったより通らないのを見て、ジークがぼやく。
「不利ね。主力部隊がもうじき来る、とも聞いたけど、
 ここからお兄ちゃんにテレパスが届くかしら……?
 まあ、本人がアンテナを立ててないと意味無いけど」
シエルは駄目もとで念じようとした。
(シエルー! ちょっと待ってー! 今行くのー!)
なんと、向こうから送られてきた。
今までは受信しか出来なかったはずなのだが。
(これは……お兄ちゃんの能力が……肥大化しているの?)
しかし、これで勝機は充分にある。
「ジーク! お兄ちゃん、すぐ近くまで来てるみたい。
 少しの間だけ、凌いでちょうだい! フォローを!」
「良かろう。任せろ!」
意気軒昂のジークが大暴れを始める。
「プラズマブラスター!!」
シエルも攻撃呪文で援護を始めた。

ほどなくして、ジルベルト率いる主力部隊が駆けつけた。
「シエルぅー!」
何やらメイベルのスカーレット・アーマー並みに
ごつい鎧を着た兄らしき者がばたばた走ってきた。
続くのはライナス、ユイナ姫など多数の人員。
何故か見慣れない妖精族までいる。
「お兄ちゃん! よね?」
(手伝うのー!)
練習用に使っていたボールをサイコキネシスで動かす。
実戦で使うのは初だったが、撹乱の役に立つはずだ、と確信し、
ジルベルトは強く念じる。
(念動集中!)
ボールは素早く、鋭い軌跡を描いて動き回る。
不規則に動くそのボールを、エリミノイドが追いかける。
「サイコキネシス!? いつの間にそんな技を!」
シエルも、ジークも驚愕した。
彼女達の知っているジルベルトはそこまで有能ではなかった。
マキナ戦役のことは聞いていたが、こうもまざまざと
成長ぶりを見せつけられるとは予測もしていなかった。

「ふはははははははは! そう来たか!
 流石は我が兄貴殿だ! ならば我々も張り切るか!
 ひとつやるとするぞ、シエル!!」
「ユニゾンアタックね。即席だけど、いいわ!
 プラズマバスター!!」
とりあえず電撃魔法をジークに浴びせるシエル。
ジークはそのプラズマバスターを全て受け止め、
体内で自分のパワーとする。敵陣の真ん中に立ち、
即席のユニゾンアタックを最大出力で炸裂させる。
「ボルトコンダクション・バスターショット!!」
通常のボルトコンダクションは敵に直接電流を
流し込む技だが、それが長射程を帯びた。
敵陣を一直線に貫き、多数のエリミノイドを破壊する。

「バスターショットって何よそれ!?」
シエルが訊いてくる。
「ソニアが奥技のアレンジをしてみせたと
 報告書にあったのでな。真似をしてみた!」
「ああ、そういう事ね」
あっさりとシエルは納得した。
「ひょっとして、私が何か流行を作ったのかしら?」
「かもね」
嬉しそうなソニアをルシアは軽くスルーした。

「野郎に続け! 俺等も遅れを取るな!」
コンラッドの指示で、全員がいつも通りに暴れる。
既に勝手知ったるエリミノイド程度では、
本気を出した勇者軍の相手ではなかった。
「…………!」
ライナスが、端末への通信に気付いた。
『こちらライナス=ジーニアス! 誰だ!?』
『俺だライナス! テディ=カレンだ!!
 戦闘中で忙しいようでちょうど良かった。
 近くへ来ているので加勢をさせてもらおう!』
『近くにいるのか!? それは助かる!!
 ちょうど君を迎えに行こうと考えていたところだ!』
『なら願ったり叶ったりだな。
 ドルカス、ヴァジェスと一緒に行くぞ、待ってろ!』
『君が来る前に終わらせてがっかりさせてあげるよ!
 せいぜい急いで来ることだね、テディ!』
このタイミングに嬉しい増援である。
完全制圧された影響なのか、エリミノイドの数が
いつもより遥かに多い。どうやらあらかじめ
相当の数のエリミノイドが配備されていたらしく、
これでは待ち伏せに遭ったに等しいと言える。
シエルとジークが加わったとはいえ、楽ではなかった。

「って、見て下さい、あれ、あれ!」
フローベールが指差す空には浮遊円盤。
FSノア49ではない。サイズ的にかなり小さいからだ。
絵に描いたような空飛ぶ円盤だ。どうやらあれも
FSノア49に配備されている兵器なのであろう。
実際に浮遊円盤は、機銃をもって攻撃してきた。
「増援!? いや、これも配備済みのものか!」
ここに来ての新兵器にコンラッドも驚いた。
制圧した都市に対して、ここまでの周到な設備を
投入してくるとは、誰も予想していなかったからだ。
「これはただの無差別破壊ではないですね。
 例えて言うなら……いえ、例えなくても、侵略でしょう」
ユイナ姫が持論を述べた。恐らく正解だろう。
だが、FSノア49にそんな明確な目的があったとは
誰も想像していなかった。それだけに盲点だったのだ。

久々に対面したシエルとジークを加えて、
ようやくFSノア49の目的を掴み取った勇者軍主力部隊だが、
テディ、ドルカス、ヴァジェスの到着までは、
どうやら物量差によるジリ貧を強いられそうであった。
既にただの瓦礫の山であるヴェール・シティの中で、
味方しか守るものの無くなった戦いは、
果たして希望を生む事が可能となるのか。

その結論は、勇者軍の手に今、委ねられている。
たとえ、民政部の真意がどこにあろうとも――



最終更新:2011年08月20日 20:18