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第三十章-第二幕- ミーム・フォーメーション






勇者軍主力部隊とザン共和王国民政部の連合軍は、
ドルカスの奇襲を合図に、離陸しようとする
FSノア49に強引に乗り込んで中から破壊法を模索する戦法を取り、
一部のメンツを置いて、大多数が突入に成功したのであった。
そして、FSノア49が遂に本気を出し始めた。
周囲に毒ガスまで放射し始めるという遠慮会釈の無い攻撃を
地上にいるメンツに対してかけてきたのである。
「けほっ、けほっ!」
毒に対してまったく防御手段のないリルルを筆頭に、
ソニアも、ルシアも、コンラッドも次々と毒に冒されていく。
「リュミエル、十八秒ほどちょうだい! 防御を!」
「出来てるわ! 防御結界!」
防御結界が展開されるが、毒に冒されたものは元に戻らない。
だが、ここには優秀なヒーラーが残っていた。
「マスターレジスト!!」
最高位の状態異常解除呪文だ。あっという間に
全員の毒気が抜かれていく。圧倒的ですらあった。
「すみません、シエルさん! 助かります!」
リゼルが礼を言いつつも、すぐに反撃の態勢に移る。
「フレイムシューター! プラズマブラスター!
 フリーズキャノン! ライトランチャー!」
あらん限りの攻撃呪文をもって猛攻撃を仕掛けるリゼル。
それに続けとばかりに、ルシアやシャルルの援護攻撃が入る。
コンラッドも弓で射撃、ドルカスも狙撃砲で砲台を駆逐。
リュミエルは懸命に毒ガスを防ぎ続けている。
「アースナックル!」
そしてソニアは土塊を両腕に纏う。
「今のレオンハルトさんの見て思いついたの! やってみる!」
ソニアは両腕を前へと突き出した。
「アースナックル・バスターショット!」
先程のレオンハルト同様、弾丸の如く土塊を発射。
「ダブルアームパワードぉッ!!」
もう片腕の土塊もすぐに射出。両方とも多くの砲門を破壊。
「どうよ!」
どや顔をするソニアだが、彼女に向けて多くのミサイルが飛んでくる。
「させません……!」
リルルは全てのソーサーを自分の周囲に展開。そして彼女自身が
一枚のソーサーの上に乗っかってみせた。
「スピンソーサー!!」
自分が乗ったソーサーを念動力で動かすリルル、いやシャルル。
そのシャルルの周囲にはぐるぐると彼女自身の周囲を
旋回しつつ猛回転する多くのソーサー群。
そのまま彼女は突貫し、ミサイルを切り裂きながら
出鱈目な機動で移動する。とてつもない捨て身の技である。
これを先の戦いで使われていたらもっと苦労したであろう。
その技量とアイディアに、思わずソニアは舌を巻いた。
「やるわね……!」
素直に賞賛しながらも、自らもミサイルを叩き落す。
「あれを見て!」
リュミエルが上を指差して言う。
「!?」
今までは浮遊円盤都市底面部のみからの全力射撃だったのが、
今度は上からも同時に砲火が展開され始めた。
上から降ってくるのは爆雷や誘導ミサイルが主力である。
光学兵器こそほとんど無いものの、これはこれで
単純な力押しであるだけに厄介極まりなかった。
更にいつか見た小型円盤まで降下してきている。
多勢に無勢ぶりが、より加速してしまった。
「ジルベルト君、みんな……急いで。いくら皆の魔力が豊富でも、
 そういつまでもは保たせられそうにないから……!」
歯噛みしながらも、ソニアは指揮を忘れない。
地上での激闘は、未だしばらく予断を許さないのであった。

一方、FSノア49に乗り込んで侵入ルートを模索する部隊も
苦戦を強いられていたのであった。建物からは遠慮の無い
機銃や光学兵器の猛攻、そして建物の下からはエリミノイドの
これでもかというレベルの大軍である。
「フローベール! セシリアさん! 機動力で撹乱を頼むぞ!」
テディの依頼に、両者とも無言で頷き、そしてひたすら動く。
「ヴァジェスさん、私達も続きましょう!」
「応!」
イシュタリアはワイバーン状態のヴァジェスに騎乗。
両者同様、機動力で多くの砲門を撹乱する役割を果たした。
一方のジルベルトやライナス、それにメロウは
もっと直接的戦法を取った。
「…………!」
「烈風剣!」
「邪魔ね」
砲撃が、烈風剣が、ミサイルが、
建物もろとも砲台を壊滅状態に追い込む。
巻き込まれるエリミノイドこそ哀れとさえ思えるほどの
高火力を発揮し、これら三名が先頭に立って大暴れを展開。
船上でもレオンハルトやバスク、ユイナ姫が機動力で撹乱。
特にユイナ姫は幻杖レプリアーツの力をもって、
かなりのやりたい放題の攻勢をかけていた。
しかし、こちらにも例の小型円盤が出てきて攻撃を仕掛ける。
「聖杯ライブチャージャーを無駄遣いさせるな! 少し節約しろ!」
テディが一応釘を刺すが、あまり誰も聞いてはくれなかった。
「ギース、ゼクウ、フィアナ!」
ヴェルファイア首相が三名の名を呼ぶ。
「君達が鍵だ。侵入ルートを探し出せ!
 手段は問わん! 必ず侵入出来るようにしてくれ!」
「ああ……!」
「是」
「了解!」
三者三様、戦闘の隙を縫って暗躍する。
「ミミックマン、君もだ! 君ならエリミノイドの真似ぐらい、
 どうという事もなかろう? 違うか!?」
「違います!」
即座にツッコみながら攻撃するミミックマン。
流石に無機物の真似は専門外らしかった。
「すみません、ミームの力を展開します。誰か援護を!」
「俺に任せろ!」
テディがシルヴィアのフォローに入る。
「怪球ミーム、お願い!」
「みー」
怪球ミームのS-LINKシステムが機動した。
FSノア49の上にいる面々の詳細な位置と動きがつぶさに
全員の脳裏にリアルタイムで書き込まれてくる。
「ほほう、これは便利な」
レオンハルトも動きを変えてシルヴィアの援護に入った。

すると、間もなくギースから報告が入った。
S-LINKシステムの力によって、いちいち端末を使うまでもなく、
戦術的思考がリアルタイムで各員の脳裏に叩き込まれるからである。
「ギースだ。主戦場から北を0時として4時方向へ七百メートル。
 その地点で侵入経路らしきゲートを発見。開錠済みだ。来てくれ」
「分かった!」
どうやら侵入できそうな地点が見つかったようである。
なので、S-LINKシステムを一旦遮断し、
まず真っ先にシルヴィアが走る。次いで他の者も走る。

ギースが待っている地点へすぐに到着した。
「ここだ! 中に入れるようだぞ!」
ギースの案内で中へと入る。
エリミノイドがうるさいので扉も閉めた。
どうやらエリミノイドはシェルターの件から見ても明らかなように、
何かで遮断されると、情報の上書きが無い限りは、
敵の探索をやめてしまうようであった。
もちろん爆撃や光学兵器も直接向けられる事は無くなった。
中を破壊しては身も蓋も無いからであろう。

その代わり、中では小さな虫型のマシンのようなものが
あちこちで動き回っていた。これが今まで修理を担当していた
マシンなのだろう。凄まじく膨大な数を見かけた。
後に判明するのだが、これはリトル・バグというメカである。
だが、もはやそんなものに構っている場合ではない。
中では防衛網もロクに働かないらしく、
コントロールルームを探す事に集中出来た。
「出来れば機能停止に追い込むか、あるいは自爆させるか、
 まあそんなところが上出来だろう。コンパネを探すぞ!」
ヴェルファイア首相の愛竜コモドや、
メロウの『ホークマンEXエディション』なども
平然と動ける広さだ。流石に巨大である。
だが、その広さは部屋数の少なさも意味しているはずだ。
勇者軍・民政部同盟軍はそれに期待し、
再び散開して、とにかく周囲を探し回る。
シルヴィアと怪球ミームのS-LINKシステムを再度展開して。

地上と内部、それぞれの戦いは終局へと近付く。
更なる激闘を誰もが予感しながら――



最終更新:2011年10月08日 22:31