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第三十章-第三幕- 勇者軍の切り札






勇者軍と民政部の連合軍は、遂にFSノア49の内部へ到達。
自爆、あるいは機能停止へと至らせるべく、
戦場全域を管理するシルヴィアと怪球ミームを残し、
中枢部を探して各自、散開するのであった。
それは良かったものの、どうにも中は驚異的に広かった。
全長十キロメートルという巨大さは伊達でも酔狂でもないのである。
しばらくは地道な探索に時間を費やした。
地上で奮闘しているソニア達も心配だったが、
ここをしくじると元も子も無いので、時間をかけなければならない。

そして十数分後、今度はゼクウから連絡が入った。
「見」
発見した、という意味だろう。情報が怪球ミームによって
全員の脳裏に書き込まれる。位置も特定出来ていた。
ただちに全員が集まり、その部屋へと押し入った。
「待」
待ちわびた感満載でゼクウが道を譲る。
さっそくシルヴィアとバスクが機械をいじり始めた。
「バスク君、ハッキング、出来ますか?」
「すみません、それは流石に無理です」
「では、ここのマシンから手がかりを集めてみて下さい。
 上手くいけば情報が何かしら残っているかもしれません」
「了解!」
「怪球ミーム、強制アクセス開始」
怪球ミームによるマシンのハッキングが始まった。
自爆用と機能停止用のプログラムを流し込む。
「私が取りうる最良の手です。これで駄目なら
 後は力押ししか無い事になりますね」
「頑張れ、シルヴィア!」
みんなが応援する。

一方バスクは、手記らしきデータを見つけた。
「これは手記? どうやらこのFSノア49には
 相当数の人類がいた模様で、内乱で滅んだようです。
 しかし何故、このFSノア49のみが未だに
 フルオートで機動しているか、その理由は
 途中で切れているため、書かれていません……
 ですが、貴重な情報もあります。スプレッダーは元々
 FSノア49が立ち寄った星の原住生物であり、
 戦闘ログを見たのですが、どうもスプレッダー戦役の
 スプレッダーは、このFSノア49が侵略の尖兵として
 送り込んできたものだったようですね……」
「他に! 他に手がかりは!?」
強い口調でシルヴィアが問う。
「ありません。その手記が全てです。
 恐らくこれを書いた人が最後の生き残りなのでしょうか……」
「仕方ありませんね……ハッキングを継続!」
「みー」
怪球ミームは引き続きマシンシステムに干渉する。が――
「みーっ!」
突然干渉をやめて怪球ミームが中枢部から離れる。

ビー! ビー! ビー!

警報が鳴り出した。どうやらファイアウォールに
防がれてしまったらしい。かなり強力な防壁であった。
怪球ミームの力をもってしても、防壁突破には至らなかったのだ。

がしゃがしゃがしゃがしゃ!

壁からドアから機械から天井から床から、機銃がたくさん出てきた。
「ちいッ!」
いち早く動き出したライナスやギースがことごとくを破壊するが、
中枢コンピュータからも光学兵器を発射してくる。
「駄目です、ハッキング失敗です!」
シルヴィアも慌てて退避。
「ジルベルト、やってくれ!」
レオンハルトが砲撃を要請するが、ヴェルファイア首相が止める。
「駄目だ。あの砲撃の威力は我が目で見たぞ。
 ここで使えば良くて全員生き埋めだろう。
 こうなれば、自爆も機能停止も諦めるしかあるまい」
「では、どうすれば!」
セシリアも珍しく狼狽して慌てる。
「単純な力押ししかあるまい。全世界の火力を
 集中砲火すれば撃墜は不可能ではないはずだ。
 場合によってはこちらもNBC兵器を使う」
「NBC!?」
苦渋の決断だったが、やむを得ないかもしれない。
だが、それもユイナ姫が止めた。
「とにかく脱出しましょう! 勇者軍も無為無策で
 過ごしてきたわけではありません。奥の手を使います。
 まずは脱出! 話はそれからでも遅くないです!」
「何!? 策があるのか!?」
ヴェルファイア首相も驚いた。この期に及んで
まだ正攻法での対抗手段があるとは思わなかったのだ。

(僕はユイナ姫の言葉を信じるのー)
ノリノリでユイナ姫の作戦を全肯定するジルベルトの顔を見て、
全員信じてみる気になったのか、とにかく脱出を急ぐ。
内部から飛び出ると、まだ残っていた砲門やエリミノイドの攻撃が
一斉に勇者軍主力部隊へと襲い掛かってくるが、
今更そんなものは物の数とは言いがたかった。

しかし場所は既に空中である。無傷で降りるには
銃弾の飛び交う中ではなかなかにリスクが高かった。
しかもミサイルまで飛んでいる。かなり物騒だ。
ジルベルトは真っ先にアズール・アーマーを装着し、飛ぶ。
続いてメイベルが飛翔。メロウはフィアナを乗せて飛行。
ヴェルファイアは愛竜コモドの跳躍力と滑空により離脱。
フローベールはシルヴィアを乗せて脱出した。
セシリアも二ノンの翼で脱出するが、彼女は比較的自由なので、
ミサイルを撃墜したりして援護に回ってくれていた。
残りは陸戦部隊と騎兵、そしてヴァジェスとイシターだ。
「イシター! ドラグーンを解除しろ!
 俺が援護する! 全員を乗せてやってくれ!」
「本当は嫌ですけどしょうがないですね……」
渋々水竜モードへと戻るイシター。
「さあ、乗って下さい。今日は特別ですよ!」
ヴァジェスに比べて随分と巨大なイシターの身体には
歩兵と騎兵ほぼ全員が乗っても余裕だった。
ヴァジェスがブレスで援護する中、ほぼ全員を乗せたイシターが
悠々と脱出に成功したのであった。

そんな中、何故かギースだけが乗り遅れていたが、
ギースはギースで、ミサイルに掴まって脱出するという
離れ業で地上へと帰って行ったりしたのであった。
最後に援護していたヴァジェスとセシリアが離脱。

そして地上へと戻ってきた主力部隊。
「ソニアさん!」
ジルベルトが真っ先に降りてくる。
「おかえり、ジルベルト君! みんな怪我してるけど、
 何とかまだ生きてるわよ、で、どうなの!?」
(自爆も機能停止も無理なのー。ユイナ姫の作戦を出すのー)
「ユイナ姫の!? そんなのあったっけ!?」
(僕も今さっき初めて聞かされたのー)
「大丈夫かしら……」

その横では次々とメンバーが帰ってくる。
ユイナ姫は端末でアーム城と連絡を取っていた。
「お父様、お母様、例の軍機を使います!
 アーム城から総員を即時退避させて下さい、急いで!」
『分かった。使いたくはなかったが、
 NBC兵器を使うよりは遥かにマシだろう。準備するよ!』
端末の向こうからイスティーム王の声が聞こえてきた。
「さあ、ジル君! 後はアレが到着するまで、
 メインメンバーは何とか無事なまま耐えないとね!」
「って、どういう作戦なのよ!」
ソニアが叱責するが、ユイナ姫は答えない。
「最重要軍事機密です。それに来れば分かります!
 ほら、今は足止めと防衛、気を抜かないで!」
ユイナ姫の警告は確かに的確で、今まで空中のジルベルト達に
向いていた分のミサイルまでが地上へと降り注ぎ始めた。
さっきからあちこち破壊しているが、即座に修理されて、
あまり大して意味を成さないのが虚しいところだ。

ユイナ姫の作戦の真意は未だ不明ながら、
どうにかNBC兵器の使用を避けるべく、
全員最終局面の戦闘に全力を注がざるを得なかった――



最終更新:2011年10月08日 23:00