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第三十章-第一幕- 総力戦、展開






勇者軍とザン共和王国民政部は、FSノア49を擁護するという
ヴェルファイア首相の嘘にすっかり騙されていた。
真相が明かされた今、両者は不平不満を抱きつつも共闘戦線を張り、
初めてこちら側からFSノア49を完全撃墜するべく、進軍するのだった。
「でさ、FSノア49っていう名前はどっから出てきた?
 単純に適当に付けたらそんな意味ありげな名前にならんだろ?」
と、テディが道すがら、ヴェルファイアに尋ねる。
「貴君等はメシアタイプのスーパーコンピュータで
 情報を探さなかったと見える。あれはな、純然たる
 惑星アース製の移民船団用の旗艦だよ」
「移民船団用?」
全員が知らないのか、首をかしげる。
「そう。フロンティア・シップ『ノア』の49番艦だ。
 だから、略称はFSノア49。我々はそれを調べあげ、
 各種データと照合した結果、知ったのだよ」
「ちょっと待て、あれが惑星アース製だっていうなら、
 どうして惑星アースに戻ってきて、しかも攻撃してくる?
 人間が乗っているとしたら辻褄が合っていない」
「……乗っておらんのだよ、人間など」
ライナスのもっともな問いに、
ヴェルファイア首相はどこか哀しげに独白した。
「あれは完全に自動で動いている。我が軍の戦闘機が
 懸命に戦闘中、生命反応を無制限で探査してくれたが、
 ただの一つも生命反応らしきものは見つからなかった。
 あれはただの機械だ。何故か無制限の破壊を振り撒く、な」
「つまりあのFSノア49は、宇宙暦の移民船団ノアの
 第49次移民船団の旗艦で、恐らく移民船団自体が
 虚しくも壊滅してしまったのだろう……」
レオンハルトも続けて独白する。
「何をどうして惑星アースに戻ってきたかは知らんが、
 こうして災厄を振りまく以上、こちらとしても
 手段を選ばず、完全撃墜しなければならない。
 なまじ旗艦として高い能力を持っているだけに厄介だしな」
ヴェルファイアの言葉に、民政部全員が頷いた。
いつの間にやらメロウの機体まで新しく届いている辺り、
彼等の意気込みも相当のものがある。
「止まれ」
メロウの言葉で、全員が制止した。
今まで森を通ってきたおかげで発見されなかったが、
これ以上接近されば森を完全に抜けてしまい、発見される。
その森を出た先には、当のFSノア49が浮上しかけていた。

「見えるか? ブレインフォックス」
「ドルカスよ。見えてるから大丈夫」
レオンハルトの言葉を訂正してから、肯定する。
「まずは敵を混乱に陥れたい。そのためには先制攻撃と我輩は見る。
 諸君等が、FSノア49の方へ先に仕掛けた事はあるか?」
「無いわ」
「ならば尚更作戦は確定だ。先手を打って敵の混乱を誘う。
 その隙に出来るだけの人員を内部へ送り込み、
 内部からの破壊を模索し、失敗したら力押ししか無い。
 後者の場合の勝算は心もとないものがあるがな。
 あくまで主力は勇者軍だ。最初が肝心なので、頼むぞ」
レオンハルトが念を押してくる。
「アイズ・オブ・バーバリアンの出番ね。いくわ。
 合図と共に各自、任意に奴の中へ入って頂戴。
 出来るだけ多くでいいわ。入れなかったものは撹乱よ」
「了解」
全員が頷く。
「カウント5、4、3、2、1……」
全員が飛び出す準備をした。
「ファイア!」

がどん!!

凄まじい破壊力の弾丸が敵の砲台の一つを叩き壊す。
それを合図にFSノア49から警報が聞こえ始めたが、
委細構わず、あらん限りの健脚を持って全員が乗り込み始める。
真っ先に先陣を切ったのは二ノンの翼を展開したセシリア、
次いでブースター装備のジルベルトとメイベル、更にメロウ。
その次に空中機動力のあるヴァジェス、イシュタリア、フローベール、
更に継続的機動力のある騎兵のユイナ姫、ジーク、バスク、
それにヴェルファイア首相とレオンハルトが続いた。

ここまでは問題無く内部への突撃に成功したが、
歩兵はそうもいかない。ここからは純粋にスピードの勝負だ。
敵も遅れながら迎撃態勢に入り、浮上を急ぐ。
図体の大きさのせいでスムーズにいかないが、
砲弾や爆雷を雨あられと降らせてくるおかげで、
随分と足止めを食らうメンツが多くなってきている。

浮上を始めたせいで、高所恐怖症のソニアは早々に諦めた。
またドルカスも、もっとも出遅れた事で撹乱に徹する事に決めた。
ゼクウとライナス、ギースはスピードスターというべき存在なので、
敵の猛攻を回避しつつ、難なく乗り込む事に成功した。
その横をこっそりとシルヴィアが通過。シエルは出遅れている。
コンラッドは船での援護の期待可能性を考慮してわざと残った。
リゼルも、魔法攻撃力の優秀さを考慮して、自ら判断し、残った。
テディはリュミエルの援護を受けた事でギリギリで突入に成功。
そのリュミエルは惜しくもルシア共々届かなかった。
ミミックマンは猛爆に怯みつつ、ギリギリで突貫に成功。
フィアナはこっそり迷彩をかけて近寄り、楽々と潜入成功。
リルルは念動力による援護に徹し、シャルルとして現場に残った。
なお、それぞれの愛馬や愛竜、愛猫達は主人にくっついた形となり、
全員がFSノア49への突撃に成功していた。

これにて突撃に成功したメンバーは、
勇者軍メインメンバー一同と、フローベール、バスク、
ジーク、ギース、ゼクウ、ヴァジェス、イシュタリア、
それとリルルを除く民政部一同であった。
突撃に失敗もしくは援護のために突貫を断念したのは、
ルシア、ソニア、コンラッド、リゼル、リュミエル、
シエル、ドルカス、それにリルルである。

そして、FSノア49は完全に離陸を終えた。
これによって残ったメンツが乗り込む事は出来なくなったが、
やる事はまだまだ残っている。出来るだけ地上から援護射撃をしたり、
敵の砲火をこちらに向けさせて可能な限り足止めしたりと、
むしろこちらの方が重要であると言っても良いぐらいだった。
「お兄ちゃん達が戻ってくるまで、何としても支えるわよ!
 現場指揮官を今すぐ決め……そうだ、ソニアさん、お願い!」
「ええっ、私!?」
びしっ、とシエルに指差されて戸惑うソニア。
「お兄ちゃんの心を誰よりも理解して、支えてきて、
 一緒にやってきたのは一体誰だと思ってるの!
 お兄ちゃんの代わりぐらい出来て欲しいところね!
 さあ、指示をちょうだい、指示を!」
「わ、分かったわ! 全員、ここからは文字通り総力戦よ!
 勝利以外の選択肢は許さないわ! 総員に健闘を期待します!
 全員、散解! あらん限りの方法をもって敵の砲火を止めるわ!」
「了解!!」
突然のしかかった重圧をあっさりと跳ね除け、
ソニアは指揮官代行の仕事を果たそうとしていた。
そして地上はあらゆる攻撃が飛び交う危険区域と化すのだった――



最終更新:2011年10月08日 21:26