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第七章-第三幕- 白虹騎士団のリーダー





ダイギン城の城門に到達した勇者軍主力部隊は、
クロカゲを呼び戻す暇も無く、城門を撃砕し、
いよいよ敷地内へと踏み込むのであった。
「…………!?」
だが、アンリ姫はその異常な静けさに気付く。
誰の気配もしないのだ。文字通りに。
「王子……これは……」
「ええ……止まりなさい、ロブ!」
「どうした、ウォルフ」
ウォルフ王子がロバートを止める。
「あまりに静か過ぎる。空城の計……でしょうか?」
「……あり得ん事も無いが、意味は何だ?」
「……躊躇してもしょうがありませんか。
 そもそも真っ向勝負を挑みに来ているのですから」
ウォルフ王子が嘆息する。
罠なら跳ね除ければいい。そもそもそれだけの実力が
勇者軍に備わっている事を失念していたようであった、と
ウォルフ王子は一人、思うのだった。
「進撃!」
「よし、行くぞ!」
ウォルフ王子の号令に従い、再突撃する一行だった。

だが、城の中に入ってもやはり、人がいない。
廃墟なら分からないでもないが、妙に小奇麗なのが逆に不気味だ。
「俺達は城を制圧しに来たんじゃねぇ、
 奴等に反逆しに来たんだ。これじゃ意味が無ぇ」
ロバートがぼやくが、マリーは冷静だった。
「玉座の間へ移動だ。そこに何も無ければ本当にもぬけの殻だろう」
「おし、行くぜ!」
更に奥へと突き進む。

玉座の間に到達すると、一人の騎士が玉座の前に立っていた。
琥珀色とも思えるが、おおむね橙色と表されるべき色の騎士。
今までのパターンからして、明らかに白虹騎士団だった。
「本当に来るとは……自らの実力に傲慢な勇者軍らしい」
「一人で粋がるんじゃないッスよ!」
レオナが相手の態度にカチンと来たようだ。
「ふ……徒党を組めば勝てると思う方が愚物よ。
 我が名はアンバーナイト。白虹騎士団を統べる者よ」
「リーダーってわけかい。流石に偉そうな態度だな」
エリックが挑発するも、黙って剣を取り出すアンバーナイト。
「黙れ。このマルチプルブリンガーの錆にしてくれるわ」
敵が取り出したのは一本の巨大な剣だが、それだけでもなさそうだ。
「かの名高きマルチ・マジック・ブレードの最新進化系……
 その威力と巧妙さは己が身で確かめるが良いわ!」

アンバーナイトが突撃する。ターゲットはレオナだ。
「来るッスか! ナノ・マシン展開!」
「絶対耐性にそんなものが効くか!」
「なっ!?」
ジャミング・ナノ・マシンはまったく効いていない。
無視して突っ込んで斬りかかってくる。
「くっ、させないッス!」
何とかかわして反撃に移るが、相手もさるもの、防御も完璧だ。
「ハイパーガード!」
凄まじい防御力でガードする。まったく通じていない。
「テレパス!」
こちらの心を読み、後ろへ回り込んだアンバーナイト。
だが、エナがそれを防ぎにかかる。
「ソーサー!」
10個のソーサーの半分を攻撃に回し、レオナを支援する。
そのおかげでかろうじて、レオナは直撃を受けずに済んだ。
「ありがとッス!」
「余所見をしている暇があると思うな!」
セルフバサークと呼ばれるバーサーカー特有の技能を展開する。
防御力と精神力を代償に、攻撃力と敏捷性を引き上げる技能だ。
「この器用貧乏めが!」
見るに見かねて、マリーやローザがアンバーナイトに仕掛ける。

どがん!

凄まじい攻撃がアンバーナイトを襲う。
思いの他、直撃は容易で、しかも与えたダメージは大きかった。
が、彼は慌てず、騒がず魔法を展開。
「ヒールシューター!」
自らへの回復だ。しかもハイパーヒールによる
回復量増加が尋常ではない。
「なんて……野郎だ!」
純粋なスペックだけならブルーナイトなどに劣りそうではあったが、
こうも技能が多彩では攻めあぐねてしまう。とにかく手数も足りない。
「だから言ったはずだ。己が技能に傲慢である、とな」
アンバーナイトは笑うかのように身体を揺する。
「さあ、まずは一人始末といこうか」
構えた。スタッブと呼ばれるアサシン特有の暗殺技能だ。
クリーンヒットすれば一撃で昇天する危険も秘めている。
ターゲットは明らかにアンリ姫だった。
「かわせーッ!」
ローザの指示が飛ぶが、もう遅かった。

がきん!!

だが、スタッブはスタッブで止められた。
止めた主は言うまでもない。離れていたクロカゲだった。
「させぬ……!」
「増援の可能性を考慮していない、とは甘かったね。
 ロバート、ウォルフ王子。助けに来たよ」
隣にはカイトまでいる。どうやら外で合流したらしい。
「さて、この城にはNBC兵器を叩き込ませてもらう。
 君も、死にたくなかったら逃げた方がいいと思うけど?」
「何ですって!?」
ウォルフ王子が驚く。カイト本人からもそんな話は聞いていない。
「正気か。市民が巻き添えになるぞ」
「気にしてもいないのに、気にしている振りはやめた方がいい。
 これだけやってくれたんだ。僕も手段を選ばないよ」
「ちっ……狂っておるわ!」
カイトの発言に脅威を感じたのか、アンバーナイトは離脱する。
「たわけ、止めるのじゃ! 市民を巻き添えにしてはならぬぞ!」
アンリ姫が足りない身長で必死にカイトの胸ぐらを掴む。
「安心していいよ。あれ全部嘘だから」
「嘘ぉ?」
拍子抜けする一同。アンリ姫も手を放した。
「あんなハッタリに引っかかる辺り、まだまだだね、王子」
「……あなたには敵いませんよ、カイトさん」
肩をすくめる王子だった。

「それより、クロカゲ君と急いで来たのは理由がある。
 まずは白虹騎士団についてだが、
 ナイトギルドに該当データがあった。
 ただし、全員死亡扱いとなっている七名、であるとの事だ」
「死んだはずの奴が暴れているのか?」
エリックが問い詰める。
「白骨死体も見つかっているんだ。ただし装備は行方不明なので
 彼等に成り代わっている何者かである可能性が高いだろうね」
「奴等……やはり……不気味……
 手応え……薄い……人間……違う!」
彼等の異常さを、そう説明する二人。
「それに情報部がごく最近掴んだ最新情報がある。
 どうもダイギン城の庭の地下に、異常な熱源反応があるらしい。
 それがシドミード国王の真の切り札である
 可能性があると推測されるね」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!

地響きがした。方向は庭の方だ。
「早速切り札を出してきやがったか、行くぞ!」
ローザの号令に、皆が駆け出す。

そして、庭に出てみれば巨大な戦艦が出てきていた。
離陸準備を行っているようだ。
「今離脱されるとせっかく掴んだ所在が不明になる!
 急ぐんだ、絶対に逃がすんじゃねぇぞ!!」
「おう!」
ロバートの声に全員が従い、また走り出す。
シドミード王国の空中戦艦での戦いが始まろうとしていた。
シドミード王の真の目的も未だ見えぬままに。



<第八章-第一幕-へ続く>
最終更新:2011年12月16日 03:45