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第八章-第一幕- 哀愁のアイゼンカグラ





勇者軍はダイギン城を放棄し、空中戦艦に乗り込んだと思しき
シドミード国王と白虹騎士団を討伐すべく、
発進直前のタイミングで発見し、強引に乗り込む。
そして中を進んで兵士を蹴散らしつつ、
とにかくエンジンルーム、もしくはブリッジを探すのだった。
「おかしい……本当にここは戦艦なのか!?」
あまりにもあっさり侵入出来たことも驚愕だが、
接触した兵士の人数も少ない。気付かれていないとしか思えない。
それほどの不自然さである。そもそも勇者軍主力部隊は、
思い切り発見される覚悟で堂々と乗り込んできており、
発見されていないとすれば、むしろ理不尽であろう。
(もちろんクロカゲが何かした、ということでもないし、
 ましてや策士であるウォルフ王子やカイトが
 何かしたという事も、この短時間ではあり得ない事だ)
「……泳がされている?」
「そうかもしれないね」
ウォルフ王子がぽつりと呟く、カイトもそれを一旦は肯定した。
が、すぐに首を振って訂正した。
「……違うね。僕達は泳がされているんじゃない。
 シドミード国王に遊ばれているのかもしれない。
 彼は武門の出だというし、お手並み拝見というところかもね」
「なめたことを! エンジンルームへ行って
 エンジンを直接叩き壊してやろうか!?」
ローザが怒ってハンマーを振り回す。
「ちょっ、危ないッス! 落ち着いて!!」
慌ててレオナがそれを止めた。
「それにこれ以上探すところが見当たらない。
 一旦デッキに上がって別のハッチを探した方が
 ブリッジもしくはエンジンルームに近付けるかもね」
「よし、カイトの意見を採用するぜ、急げ!」
ロバートが是も非も無く受け入れるので、
上部ハッチを開けて、デッキに全員登った。
馬を登らせるのは一苦労だったが、流石は遺伝子調整動物。
実に器用にデッキに登ってくれて、内心騎兵一同は安心した。
巡航速度で飛んでいるらしく、勇者軍の脚力を持ってすれば
この程度の風は無風に等しく、安心して立っていられる。
戦艦自体が馬鹿でかいのも助けになってはいるが。

すると、すぐに上にペガサスナイトがいるのに気付いた。
「あれは……!?」
ずだん!
確認する暇も無くペガサスから飛び降りてきた女性がいた。
ペガサスは臆病らしく、あまり戦闘に適していないようだ。
「お久しぶりです、姫様」
「メゴ!」
「……その呼び方はやめて下さい。私は秘書兼副官の
 メゴ=アイゼンカグラ。王命により、
 あなた達を空中戦艦メガ・アルバトロスより排除します」
アンリ姫お付きのメゴ=アイゼンカグラ。
今はシドミード国王の秘書兼副官という立場らしかった。

「メゴ! シドミード王はこんな物騒な巨大戦艦を作って
 一体何を目的としておるのじゃ、答えよ!」
「姫様、答えが分からないとすぐに解答を求める……
 悪い癖でございますよ、相変わらずではありますが」
アイゼンカグラはすぐに攻撃を開始する。
弓による遠距離射撃だ。もしエリックが飛行可能なら
脅威となっただろうが、幸か不幸か、彼は飛べない。
「姫様、模擬戦で一度も私に勝利したことの無いあなたが、
 今この緊急事態に、落ち着いて私を退けられますか?」
「勝つ! わらわはもう姫ではない、それ故にじゃ!
 この胸に刻んだ反逆の魂が、燃えておるのじゃ!!」
「勇ましいこと……」
アイゼンカグラは引き続き弓で射撃するが、
アンリ姫が一気に距離を詰めると、弓をしまって
爪を装備して攻撃してくる。実に素早い動きだ。
「メゴ! 勇者軍にでなくともよい!
 わらわの事を想うなら、わらわと共に行くのじゃ!
 独裁の道をひた走ってはならぬのじゃ!」
「私は王国の戦士、それに逆らう道はございませぬ」
「ならばせめて手を引け、関わるでないぞ!」
「生きるためにはそれも難しゅうございます、姫様」
更に弓を持ち替えて近接射撃に切り替えるアイゼンカグラ。
この距離では命中は必至、重傷確定コースである。
「せっかくこうならないように逃がして差し上げたのに、
 わざわざ乗り込んでくるなんて……馬鹿な人達。
 大人しく自国の領土に帰っていれば良かったのに」
綺麗な顔をして凄まじい毒舌である。
アイゼンカグラは舌戦にも長けているようだ。

だが、彼女は読み違えている。
ロバート=ストレンジャーという男の将器を。
彼は、良くも悪くも破格なのだ。
「おうおうおうおう! 黙って聞いてりゃ好き勝手!」
「あなたが……勇者軍リーダー!?」
想像以上の柄の悪さにびっくりするアイゼンカグラ。
「たとえ貴様が勝とうとも、絶対にこのガキは殺らせねぇ!!
 胸に刻んだ反逆魂! 千里の道も一歩から!!
 不撓不屈の闘魂燃えて、咲かせてみせろ、矜持が華!
 哀愁反逆ストレンジャー! 貴様等の絆を繋いでやらぁ!」
「ロブ! 流石はわらわのツレなのじゃ!
 響いたぞ、その魂の髄、どこまでもなのじゃ!!」
きっ、とアイゼンカグラを一睨みするアンリ姫。
完全に闘志に火が点いている。
アンリ姫は銃を、それもかなりゴツいアサルトライフルを抜く。
「ちょっと痛いけど、我慢するのじゃぞ、メゴ!」
「小娘のくせに……!」
自分の技量にプライドがあるのか、アイゼンカグラは弓を構える。

「支援を!」
エナが手を出そうとするが、それをマリーが制する。
「あれは避け得ぬ一騎討ちだ。白虹騎士団の姑息な攻めや
 無謀な単騎駆けとは違う。それぞれ己が存在理由や
 相手への想い、そういうのを抱えての戦いなのだ。
 それを邪魔してはならぬ。たとえアンリ姫が負けても」
「……はい……」

先に動いたのはアイゼンカグラだった。
寸断無く速射で追い詰めようとする。多くが回避されたが、
それでも結構な数がアンリ姫をかすっていった。
アンリ姫も凄まじい速度で3点バースト射撃を見舞うが、
狙いが読まれて、まったく当たらない。
「正確過ぎる射撃……子供だわ」
アイゼンカグラが半ば呆れたように、
弾切れしたのを見計らって反撃に移ろうとした。
マガジン交換の隙をチャンスと見たのだ。
だが、アイゼンカグラが目を見開いた。
「フレイムシューター!」
射撃をしながらしっかり呪文を詠唱していたのだ。
アイゼンカグラは忘れていた。アンリ姫が稀代の
魔法のエキスパートでもある事を。当然、回避の暇など無い。
「あぐっ!?」
足を撃ち抜かれて大きく怯むアイゼンカグラ。
そこへマガジンを交換したアンリ姫が突っ込む。
銃口を容赦なく腕へと向け、腕も撃ち抜いた。
「あああああッ!」
激痛に悶え苦しむアイゼンカグラに更に銃を向けるアンリ姫。
今度は頭だ。王手を取ったのである。
「メゴ、王手は取ったのじゃ!」
「姫様……私の意表を突くとは、成長なされて……
 私は、とても嬉しゅうございます……」
「降参せよ、メゴ! わらわとそなたが討ち合うような
 痛々しい戦、見たくないし、したくはないのじゃ!」
「……分かりました……」

しおらしく膝をつくアイゼンカグラ。
「ヒナタ!」
かと思いきや、いきなり愛馬を呼んで、
撃たれていない方の左腕だけで跳躍して跳び乗る彼女。
「メゴ、そなたまだ諦めておらんのか!?」
「あのような口約束を信じるとは、甘すぎます。
 ですが負けは負け、とならば大人しく退いて、
 後は事の推移を、王のお傍にて見守らせていただきます。
 あなた達が勝つようであれば、道を交える日もありましょう」
アイゼンカグラと愛天馬ヒナタは別のハッチへ逃げていった。
「メゴーっ!」
「追うぞ。奴は王の傍で見守ると言った。
 ならば、奴の行った方向に重要人物がいる可能性がある!」
エリックがそう言うので、全員彼に続いて動く。

しかし、艦載機もアイゼンカグラが撃退された事で危機感を強め、
デッキ上で勇者軍を迎撃しきろうという動きに出始めた。
空中戦艦メガ・アルバトロスの戦闘は
激化の様相を呈しようとしていた。



<第八章-第二幕-へ続く>
最終更新:2012年05月21日 01:06