断章-第二幕- 解放される力
イグジスター戦争からしばらく後、たまたま立ち寄った
オドネル・タウンにおいて、レイビーとゲイルは
ゲボラ・マフィアの横行と残虐性の高い犯行の跡を目撃。
数々の協力と情報により、相手が警察とすら手が出せないほどの
凶悪集団である事が発覚したため、義の名に基づき、
イノを中心とした主力編成で、奇襲攻勢を仕掛ける事になった。
「ええーいッ!」
ぼがっ!
門番二人を速やかに殺害した後で、ノーラが杖でドアを叩き割る。
「チーム・デルタ! エントリー!」
イノの指示に従い、彼女に続いて他五名が一斉に突入。
「なんだオラぁ!?」
口々に悪態をつきながら、構成員と見られる者達が、
明らかに護身用レベルでない武装を取り出している。
サブマシンガンやガトリングガン、ロケットランチャーなど
軍隊ともやり合える非合法武装がてんこ盛りだ。
この分だと
ミサイルが飛んで来てもおかしくないだろう。
「死ねえオラ!!」
ずだだだだだだだだ! ぼがんぼがんぼがん!
自分達の施設だというのに遠慮会釈無く重火器を叩き込んでくる
ゲボラ・マフィアの構成員。警察が手に負えないのも無理は無い。
むしろ警察の装備ではどちらかというと話にならないだろう。
それこそ軍警察あるいは軍隊を投入すべき相手だと見られる。
やむなく物陰に隠れて一時的にやり過ごす。
「ちっ、鬱陶しいでござる……!」
重火器の相手は苦手なゲイルがぼやく。
「俺が行って来るZE!」
ラケルが凄まじい勢いで飛び出し、サブマシンガン一丁を破壊。
「にゃろう! クソったれめがっ!!」
だが、重火器の数はあまりに多すぎた。
ラケルはやっとの思いで回避に徹するが、
退き際を失い、何発か命中しそうになる。
「ラケルさん!」
レオナは小さな壷を手に取り、ラケルの姿をすぐに思い浮かべる。
「召壷(しょうこ)フォーシブルサモン!」
するとさっきまで前衛にいたはずのラケルが強制召喚され、
小さな小さな壷からにょきっと出てきた。
「うお? レオナ、お前かYO?」
「危なかったッスね。これ、なかなか使えるッスよ」
得心するレオナに、イノも頷く。
「これは図らずとも実戦テストという事になりそうね」
「ならば、これは私の出番でござろう」
弓を取り出したゲイルが一瞬だけ廊下に飛び出す。
だが、彼もまた家宝の力を発動させていた。
「残輪(ざんりん)アザーセルフ、発動!」
『質量を持った残像』がゲイルの通過した地点に残され、
ひたすら弓を構えて囮を兼ねた援護攻撃を行う。
射線も当然そちらに向かうため、時間が稼げる。
更に敵の兵員も何名か駆逐出来たようだ。
「銃を撃つ人手が足りねぇ、誰か呼べーっ!!」
奥の方から声がしてくる。増援を呼んだらしい。
「ならば、ここは私の思いつきに任せてもらう」
レイビーは本を取り出す。コレも家宝である。
「想本(そうほん)インスパイアノート、我が閃きを具現せよ」
インスパイアノートに適当に書いた魔法コンセプトが、
魔力を代償に即座に具現化される。
ゲル状の不気味な物体が静かににじり寄り
敵の重火器の銃口や砲口を目詰まりさせた。
更にそのゲル状の物体は急加熱し、数千度の熱を放つ。
ぼばんぼがんどがん!!
火薬が暴発し、重火器類はすぐ使い物にならなくなった。
「うわあああああッ!?」
慌てて逃げ出す兵員達だが、勿論まったく逃がすつもりは無い。
「今度こそ俺の出番だZE!
色玉(しきぎょく)リコイルジュエル!」
ラケルの各関節部や身体の重要部分を守るように、
ビットのような、宝石のようなものが周囲に浮かび上がる。
それと同時に、魔力によってラケルの身体は強制的に宙に浮く。
両足の真下にもリコイルジュエルが配備されている。
「ソニックランナー、GO!」
ぼんッ!
足の下のリコイルジュエルが爆発。その重反動により、
ラケルは凄まじい勢いで前進する。
右折する曲がり角では左手を真横に掲げ、左手に配備された
リコイルジュエルが爆発。急制動で強引に右折。
こんな無茶な軌道を繰り返し進み、強引に敵に追いついた。
「HAHAHA!」
肘を保護するリコイルジュエルの爆発の反動でパンチを叩き込む。
離脱する時は足もしくは手を保護するリコイルジュエルで退避。
反動だけで機動を取る無茶なヒットアンドアウェイを繰り返し、
その場にいた敵兵士全員を捻じ伏せるのに成功したラケル。
「
フレイムバスター!」
「
ウィンドバスター!」
「
フリーズバスター!」
先程呼ばれた敵増援だろうか。魔法特化型の編成らしい。
重火器とは違った意味で鬱陶しい。
「私の出番ですね」
ノーラは周囲に鏡のような盾を顕現させる。
「鏡盾(きょうじゅん)カウンターミラーズ!」
次々叩き込まれる魔法をものの見事に弾き返し、
それらは術者に悉くヒットしていった。
打ち返された魔法を回避するような化け物みたいな者もいるが、
この程度の調練の度合いの兵では、どだい無理な話である。
ぼわっ!
だが、跳ね返した火の魔法はたまたま術者を外れ、
ダイナミックにゲボラ・マフィア本部施設を火事にしてしまった。
「うぎゃあああああああ!」
逃げ惑う敵兵員。既に死傷者も出ているが、
そんな事イノ達には知った事ではない。
「最初からこうすれば話は早かったかもしれない」
むしろ乗り気ですらあった。
「そんな事言っている場合ではござらぬ、脱出を!」
「分かってる。施設より退避」
急かすゲイルの進言により、総員施設より脱出。
「
チーム・アルファ、ブラボー、チャーリーは出口を封鎖。
一人たりとも逃がさないで欲しい。賊は殲滅あるのみ」
イノの指示で、各員バリケードを設置する。
恐ろしいほどの手際の良さであった。
「イノちゃん、ボスの顔とか見なくても良かったッスか?」
「興味が無い。どうせ見ても滅するだけだから」
恐ろしい事を淡白に話すイノ。
もちろん正面を担当する主力部隊のイノ率いるチーム・デルタは
誰一人逃がすつもりも無く、インスパイアノートの力で
物理結界を展開し、逃げ道は完全に塞いだ。
これで相手はことごとく焼死、あるいは窒息死だろう。
だが、数分後……
ずばぁぁぁぁぁん!
建物をぶち抜いて、人型巨大兵器ライディング・フレームが
一機飛び出てきた。恐らく首領のものであろうか。
「この
ゲポラ=ゲボラ様を
よくもここまでコケにしてくれやがったな!
警察は脅しに数百人殺すだけで済ませたが、
手前ェ等は皆殺しだ!このライディング・フレーム
『シャル・カーニ』で叩き潰す!!」
「……さるかに?」
「シャル・カーニだ!」
ボケ倒すレオナに律儀にツッコむゲポラ=ゲボラ。
「死ねぇい!」
ミサイルを乱射してくる。市街地である事もお構いなしだ。
「レオナ! 例のを!」
「
ナノ・マシン! ピンポイント展開!」
シャル・カーニに向けてのみナノ・マシンが展開され、
彼の制御するミサイルは明後日どころか、何処へと知れぬ方向へ
さっさと飛んで行ってしまった。
「さあ、この
ヘレティックガンホークの
実戦テストに付き合ってもらう。
あなたの存在意義は、もはやその程度にしかならないから」
イノはガンホークを構えて、高々とジャンプ。
「つぇいッ!」
一撃でメイン・カメラ……
ライディング・フレームの頭部を斬り落とす。
暴れるシャル・カーニ及びゲポラ=ゲボラには構わず、着地。
即座に砲撃モードに展開しなおし、斧の盾を構える。
跳弾は全てそれで弾き返すに至った。
「ガンホーク、フルバーストモード」
砲口から魔力が漏れ出てくる。魔力を出来るだけつぎ込み、チャージ。
「斬神斬魔流最終究極奥技!」
「ひっ!」
ゲポラ=ゲボラは不利を悟り、退避準備に入るが、遅すぎた。
ちなみに斬神斬魔云々は、イノのただの思いつきだったりする。
「
運命弾劾穿!!」
ぎゅあああああああッ!!
閃光が闇夜を貫き、光を描き、そしてシャル・カー二を一撃で穿つ。
バリアのような防御装置を
展開していたようだが、まったく意味が無い。
ぼぼぉぉぉぉぉん!
空中で爆散し、ゲボラ・マフィアは首領や建物もろとも滅び去った。
「すげぇ……!!」
端で見ていた一部の市民が呆然と事の成り行きを見て呟いた。
それに気付いた
魔神軍一同が近寄って言う。
「……終わった。思ったより時間がかかってしまった」
「いや早すぎるから充分!!」
彼等の見積もりでは持久戦に持ち込んで、
消耗したところで軍警察の救援待ちで
勝てるかと思っていたぐらいだ。
「早過ぎる……? やはり
勇者軍と比べて軽く見られていたのね。
まあいい。覚えておきなさい。私達は魔神軍。
勇者軍のカウンターとして生きる者達の集団よ」
「はぁ」
と言われても市民には実感がまだ湧ききらない。
化け物集団なのが分かりきっている勇者軍ほど、
地域に浸透しきっていないのだ。
だが、この戦果を見れば勇者軍同様に
異様な集団だというのは分かる。
恐らく、これをきっかけに知名度は更に上昇していくだろう。
そう思うと、レイビーはほくそ笑むのを止められなかった。
と、格好良く決めていたところに、
ポメラニアンが寄ってくる。
「きゃんっ」
「お散歩から帰って来たのね」
イノが優しく抱き上げてやると、ポメラニアンのクロは
へっへっへっと犬らしいリアクションを取り、甘える。
「そ、それは?」
「ウチのワンちゃんよ」
妙に可愛らしい表現をして、一瞥もくれずに去って行くイノ。
「それじゃ、また何か大事があったら
魔神軍を遠慮無く呼んで下さい。
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グリーン・クロスなので
そちらでも受け付けますから」
「24時間いつでも、ってワケにはいかねぇが、
常識の範囲内でよろしくちぃーっス!!」
「はあ」
最後に、ノーラとラケルがしっかり売り込みして後を追う。
「……結局何なんだろう、魔神軍って?」
「よ、よく分からんがありがたやー、ありがたやー!」
盛り上がる民達は、口々に魔神軍の勇名を各地に広めた。
以降、魔神軍の勇名は悪名高きゲボラ・マフィアを叩き潰した
精鋭私設軍として各地に轟く事になり、いずれは勇者軍と
双璧を為す人類史上最強の私設軍となっていくのであった……
だが人々よ、記憶せよ。
この物語さえも、伝説の一端に過ぎない。
ましてこれは、その断章である故に……
<勇者の館R 完結>
最終更新:2016年05月20日 02:23