ウェンディは広場に走っていき、太陽の下で踊り始めた。
ウェンディ
さぁ、コトリもおいでよ！
さぁ、コトリもおいでよ！
ステップとともに、たくさんの鳥が空へ飛び立ち、トトリがその場に立ち尽くしているのを見ていた。
トトリ
本当に自由奔放な姿ね。
本当に自由奔放な姿ね。
ポラロイドレンズの中のウェンディの姿はややぼやけている。しかし、ピントを合わせる頃には、鳥はすべて飛び去っていた。写真の中にはウェンディの姿しか写っていなかった。
ウェンディ
（息を吹く）
（息を吹く）
トトリ
ひゃっ！耳が——
ひゃっ！耳が——
ウェンディ
また「日記」を書いてるの？
また「日記」を書いてるの？
トトリ
うん。
うん。
ウェンディ
何を書いてるの？
何を書いてるの？
トトリ
一緒に旅をしていることだけだよ……。
一緒に旅をしていることだけだよ……。
ウェンディ
（取り上げて）見せて。
（取り上げて）見せて。
トトリ
あっ！ダメ——
あっ！ダメ——
ウェンディ
ふむふむ……。
「ウェンディにとって、私は本当に大切な存在なの？もちろん、私にとってはそうだけど、ウェンディの目には、人間なんてつまらないアリとしか映っていない……」
「ウェンディが遊び飽きたら、私のもとからいなくなるでしょう。そのことを考えただけで——」
ふむふむ……。
「ウェンディにとって、私は本当に大切な存在なの？もちろん、私にとってはそうだけど、ウェンディの目には、人間なんてつまらないアリとしか映っていない……」
「ウェンディが遊び飽きたら、私のもとからいなくなるでしょう。そのことを考えただけで——」
トトリ
わああっ、声に出して読まないでよおぉぉぉぉ！
わああっ、声に出して読まないでよおぉぉぉぉ！
通行人
（視線が集まる）ジロジロ……
（視線が集まる）ジロジロ……
トトリ
べ、別になんでもないよ！
皆の前で他人の日記を読みあげていいわけないでしょ！
べ、別になんでもないよ！
皆の前で他人の日記を読みあげていいわけないでしょ！
ウェンディ
な～んだ。
トトリに元気がないのは、どうしてだろうと思ってたんだ。
（手を伸ばす）
ウェンディにいなくなってほしくないなら、手を握っていればいいんじゃない？
な～んだ。
トトリに元気がないのは、どうしてだろうと思ってたんだ。
（手を伸ばす）
ウェンディにいなくなってほしくないなら、手を握っていればいいんじゃない？
トトリ
……こんなに大勢の人の前で？
……こんなに大勢の人の前で？
ウェンディ
じゃあ、飛んでいっちゃおうかなぁ～
10、9、8、7……。
じゃあ、飛んでいっちゃおうかなぁ～
10、9、8、7……。
トトリ
むむむ……。
（手を重ねる）
こ、これでいいの？
むむむ……。
（手を重ねる）
こ、これでいいの？
ウェンディ
ダメだよ。
ただ手を上に重ねただけでしょ？これじゃあいつでも振り払って逃げちゃうよ。
（近づいて）こうやって——
指と指を絡ませないとね～
ダメだよ。
ただ手を上に重ねただけでしょ？これじゃあいつでも振り払って逃げちゃうよ。
（近づいて）こうやって——
指と指を絡ませないとね～
トトリ
（顔を赤くして）こ、これじゃあ……。
…………。
（顔を赤くして）こ、これじゃあ……。
…………。
2人は徐々に近づき、お互いの手がゆっくりと絡み合った。
トトリ
（ううっ、ウェンディの手は長いな……指も細い！ひんやりしてる……）
（ううっ、ウェンディの手は長いな……指も細い！ひんやりしてる……）
ウェンディ
これで安心できるでしょ？
これで安心できるでしょ？
トトリ
うん……。
うん……。
通行人
ちょっと、見て、あの2人。
本当に仲がよくて、うらやましいなぁ……。
おめでとう！
（拍手）パチパチパチ——
ちょっと、見て、あの2人。
本当に仲がよくて、うらやましいなぁ……。
おめでとう！
（拍手）パチパチパチ——
ウェンディ
トトリは他の人に見られていたら、恥ずかしいんじゃないの？
トトリは他の人に見られていたら、恥ずかしいんじゃないの？
トトリ
だっ大丈夫……。
こんな時間が、ずっと続いてほしい。
だっ大丈夫……。
こんな時間が、ずっと続いてほしい。
ウェンディ
まさか、トトリってムッツｒ……。
まさか、トトリってムッツｒ……。
トトリ
（手を振り払う）
（手を振り払う）
ウェンディ
…………。
……あちゃ～。コトリちゃんに嫌われちゃった。
…………。
……あちゃ～。コトリちゃんに嫌われちゃった。
トトリ
さ、さっきのは……違うよ！ウェンディを嫌いになったわけじゃないの！そうじゃないの！ただ恥ずかしかっただけ！
さ、さっきのは……違うよ！ウェンディを嫌いになったわけじゃないの！そうじゃないの！ただ恥ずかしかっただけ！
ウェンディ
でも、ウェンディの心は深く傷ついたよ……
コトリがハグしてくれないと立ち直れないなぁ……
でも、ウェンディの心は深く傷ついたよ……
コトリがハグしてくれないと立ち直れないなぁ……
トトリ
ああっ、まったく……ほら——
ギュッ——
ああっ、まったく……ほら——
ギュッ——
ウェンディ
エヘヘ～
……これからどこに行く？
エヘヘ～
……これからどこに行く？
ウェンディ
ええっ、映画館なの？
ええっ、映画館なの？
トトリ
うん。自分で好きな映画を選んでいいよ。
ウェンディは映画を見たことあるの？
うん。自分で好きな映画を選んでいいよ。
ウェンディは映画を見たことあるの？
ウェンディ
たくさん見たよ。これでもベテラン映画ファンなんだからね！
あれれ？どうして私の知らない映画ばかりなの！？コトリが選んで！
たくさん見たよ。これでもベテラン映画ファンなんだからね！
あれれ？どうして私の知らない映画ばかりなの！？コトリが選んで！
トトリ
…………。
適当に選ぶね。
…………。
適当に選ぶね。
トトリ
うぅ……うぅ……。
うぅ……うぅ……。
ウェンディ
そんなに面白い？
大きなサメも、地球めがけて落ちてくる隕石も出てこないで、会話ばかり。おまけに画面は白黒だし。ねむ～い。
そんなに面白い？
大きなサメも、地球めがけて落ちてくる隕石も出てこないで、会話ばかり。おまけに画面は白黒だし。ねむ～い。
トトリ
（鼻をすする）ずずずっ……それでもベテラン映画ファンなの……。
ジョーはアニー姫が出ていくのを見つめながら、1人で広間に残るんだよ……。
でも結局、誰も来てくれなかった。
悲しいと思わないの？
（鼻をすする）ずずずっ……それでもベテラン映画ファンなの……。
ジョーはアニー姫が出ていくのを見つめながら、1人で広間に残るんだよ……。
でも結局、誰も来てくれなかった。
悲しいと思わないの？
ウェンディ
うーん……。
あまり印象に残ってないな。
ヒロインがきれいだったことしか覚えてないなぁ。特にショートヘアにした後。
うーん……。
あまり印象に残ってないな。
ヒロインがきれいだったことしか覚えてないなぁ。特にショートヘアにした後。
トトリ
むむ、ちょっとムカつく。
むむ、ちょっとムカつく。
ウェンディ
どうして怒るの？
どうして怒るの？
トトリ
だってウェンディが私と同じ気持ちじゃないんだもの。
だってウェンディが私と同じ気持ちじゃないんだもの。
ウェンディ
だけど、見て分からないものは分からないよ。
だけど、見て分からないものは分からないよ。
トトリ
分からない……。
ウェンディは、まだ私が何をしているのか知らないのね？
分からない……。
ウェンディは、まだ私が何をしているのか知らないのね？
ウェンディ
人間は皆仕事しているけど、コトリが仕事しているところは見たことない。
だからコトリちゃんは働かない「ニート」なんでしょ？
人間は皆仕事しているけど、コトリが仕事しているところは見たことない。
だからコトリちゃんは働かない「ニート」なんでしょ？
トトリ
ちょっと。
ちょっと。
ウェンディ
冗談だよ～。コトリは何をしているの？
冗談だよ～。コトリは何をしているの？
トトリ
簡単に言うと——
簡単に言うと——
通行人
（通信）対象を確認。2人はレストランの中にいます。
（通信）そうです。理事からの指示です。作戦を前倒しするようにと。
（通信）救出作戦開始。
（通信）対象を確認。2人はレストランの中にいます。
（通信）そうです。理事からの指示です。作戦を前倒しするようにと。
（通信）救出作戦開始。
トトリ
簡単に言うと、私の役割は「崩壊」の形成・発生メカニズムの研究、崩壊エネルギーの抽出・転換・応用、崩壊生物の行動学、崩壊影響下における土地の管理……。
簡単に言うと、私の役割は「崩壊」の形成・発生メカニズムの研究、崩壊エネルギーの抽出・転換・応用、崩壊生物の行動学、崩壊影響下における土地の管理……。
ウェンディ
ストップ、ストップ。
意味不明なんだけど、もう少し簡単に説明してくれない？
ストップ、ストップ。
意味不明なんだけど、もう少し簡単に説明してくれない？
トトリ
…………。
簡単に言うと、私の仕事は「崩壊」を研究し、そして「崩壊」を倒すことなの。
この世界の力になる素晴らしい仕事なの。
…………。
簡単に言うと、私の仕事は「崩壊」を研究し、そして「崩壊」を倒すことなの。
この世界の力になる素晴らしい仕事なの。
ウェンディ
じゃあ……ウェンディはあなたの敵？
じゃあ……ウェンディはあなたの敵？
トトリ
そ、そう……でしょ？
そ、そう……でしょ？
ウェンディ
そ、そう……なの？
そ、そう……なの？
トトリ
…………。
そしてあなたに宙へ浮かべられ、ずっと一緒に遊んでたら、仕事をしなくなったわ。
…………。
そしてあなたに宙へ浮かべられ、ずっと一緒に遊んでたら、仕事をしなくなったわ。
ウェンディ
だって、仕事には「オフィス」が必要でしょ？
ああいう大きくて、何階もあって、夜でも電気がつけっぱなしで、中でたくさんの人がパソコンに向き合っているような場所。
つまり、トトリは「社畜」なの？
だって、仕事には「オフィス」が必要でしょ？
ああいう大きくて、何階もあって、夜でも電気がつけっぱなしで、中でたくさんの人がパソコンに向き合っているような場所。
つまり、トトリは「社畜」なの？
トトリ
違うよ……。
いえ、違ってもいないかも……。
違うよ……。
いえ、違ってもいないかも……。
ウェンディ
それで、今はトトリにとって休暇なんでしょ。
仕事に戻りたいの？
それで、今はトトリにとって休暇なんでしょ。
仕事に戻りたいの？
トトリ
わ、分からない……。
素晴らしい仕事だけど。
でも……。
わ、分からない……。
素晴らしい仕事だけど。
でも……。
ウェンディ
つまり、ちょっと嫌なんだ。
やりたくないなら、やらなければいいのに。
この世界の力になったとしても、世界は遅かれ早かれ私に滅ぼされるんだから。
つまり、ちょっと嫌なんだ。
やりたくないなら、やらなければいいのに。
この世界の力になったとしても、世界は遅かれ早かれ私に滅ぼされるんだから。
トトリ
滅ぼさないで。
滅ぼしたら、アイスクリームや映画もなくなっちゃうよ。
滅ぼさないで。
滅ぼしたら、アイスクリームや映画もなくなっちゃうよ。
ウェンディ
この動物園、面白そうだね。入ってみない？
この動物園、面白そうだね。入ってみない？
トトリ
聞いているの……。
聞いているの……。
