◇
私が求めるものは何?
遠い異郷からやって来る騎士かもしれない。
私が求めるものは何?
永遠の沼から這い出せる岸かもしれない。
私が求めるものはたったひとつ。
得るのはキシ(騎士、起死(回生))か、それともシキ(死期)か。
◇
目が覚めたらそこは、知らない天井……ではなかった。
でも知っている天井、でもなかった。平素眠りにつく家か、そうでなくとも見慣れた病院や寮のものであればどれほどよかったろう。
崩れ落ちた神社と鳥居。星のように中空で輝いている数多の宝石のような何か。万華鏡(カレイドスコープ)を通して覗いた世界のような異界。
視界に飛び込んできたのは見慣れてしまった、二度と見たくはなかった、それでも
古手梨花が幾度か目にしたカケラを俯瞰する風景だ。
「また、このカケラ……?」
また死んだのか。また殺されたのか。またどこかに流されるのか。
また、たどり着けなかったのか……そんな落胆と絶望が梨花の顔に浮かぶ。
「羽入。このカケラ、今度はどこに―――」
繋がっているの、と口にしようとしたところで言葉が止まる。
100年来の知己である少女の気配は残り香すら感じられない。
「……ひとり、か」
今生の別れを告げたと思っていた友と再会したが、結局別れる羽目になった。
それだけならば心にさざ波が立つだけで終わる。
しかし古手梨花と羽入の関係はそう単純なものではなかった。
例えるならば航海者と水先案内人のそれ。ガイドも海図を失くした船乗りは、ただの漂流者に成り下がる。
見知った島ならいい。見慣れた船の上でもまだいい。しかし未踏の地において、漂流者は極めて無知で無力に成り下がる。
彼女はすぐにそれを思い知らされる。
「そん、な…………!?」
曰く聖杯戦争。曰くサーヴァント。曰く万能の願望器"界聖杯"。
未知の
ルールX・Y・Z、古手梨花を縛る新たな錠前と、新たな惨劇のカケラにこれから自分は流れ着く。
誰が告げるでもなく、頭の中の知らない自分がそうなるものだと告げていた。
記憶を一部失くすことなら梨花には幾度か覚えがある。
カケラを渡る間際の記憶は死の淵にあるのもあって引き継げず忘れてしまうのもしょっちゅうだった。
しかし知らない記憶を突如認識するのは初めてで―――
(いいえ。私が誰かに教わった、そのことを忘れているのかもしれない。
誰よ!?誰が私に教えたの!?誰が私をこの惨劇に引きずり込んだの!?誰がこれから私を殺すの!?)
地べたに拳を叩きつけ、唇をかみしめて、涙を流す。
しばらくそうして現実から目をそらしていたが、右手の甲に走る痛み―――令呪の顕現―――が思考を現実に引き戻す。
(痛ッ…これ……そう。これが縛るためのモノ、ね)
デザインは、祭具の鍬とそれによって切り落とされた角に見えた。
なるほど、雛見沢御三家の人間が誰かを従えるのに相応しい意匠だと梨花に自嘲の笑みが浮かぶ。
一度気持ちを切り替えてしまえばあとは早い。梨花は幼く弱い少女であるとともに、100年の惨劇を渡り歩いた強かな魔女でもあるのだから。
右手の令呪とともに現れる、羽入に代わる相棒の姿を待つ。
(…なに?カケラの一つが光ってる?)
あたりを漂うカケラの一つが令呪に呼応するように輝き始め、その世界の様子を映し始める。
今の梨花と同じように右手に令呪を持った少女と、巨大な盾を持った少女の紡ぐカケラ。七つの歴史を、四つの歴史の残り香を、五つの世界を超えていく物語。
最後に映ったのは、巨大な穴に立ち向かう美しい女剣士の姿だった。
―――鮮やかなり、天元の花。
自身も含め美女美少女に心当たりは幾人かあるが、そのどれとも違う美しさに息も忘れて梨花は見惚れた。
何もない空間に剣を振るうなど、それだけ聞けば演舞か祭事か鍛錬か、そうでなければ気が触れたかと思うだろう。
否、それのいずれでもない。女剣士は他の誰よりも真摯に、真剣に「何もない」を斬ろうとしているのだと武術の心得などない梨花にも分かった。
―――そして彼女はそれを斬った。
「何もない」を斬った彼女は、つまり「何もない」に干渉できる存在になったということで、「何もない」に近づきすぎて、「なくなって」しまった。
世界(カケラ)が彼女をないものとして認識し、世界(カケラ)の外に放り出す。
そうして女二人、カケラを渡るストレンジャーたちは、世界の狭間の何もない世界で出会うことになったのだ。
「――――――原始神カオス、敗れたり」
残心を終え、二刀を納めて剣士は呟く。
自らが無空の境地に至ったことを悟り、それは同時に世界から居場所がなくなったことでもあると知り。
背後にあったカケラが砕けて、もう剣士の帰れる世界ではなくなったことを彼女以外にも残酷に知らしめる。
彼女のいたカケラだけではない。
ほんのちょっと意識を向けただけで、あたりを漂うカケラは剣士を拒むように濁り、砕け、行く当てを奪う。
「…あーあ。零を極めたその先は旅路の続きも零ときましたか。根無し草の風来坊、宿無し、文無し、行く先も帰る先もなし!
ナイナイ尽くしを極めちゃったなぁー。仏様のご加護も…こんな世界の果てまでは届きませんよねっと。生きてるだけでビックリ仰天の儲けものですけども」
溜息をつきながらも飛び込める世界を探し続けていると、ようやく梨花に気付いたのか目を丸くして近づいてくる。
「わぁー、これは驚き。あなた、私と同じ世界を渡る旅の人?こんな小っちゃいのに?立香どころかおぬいちゃんくらい?若いのに大変じゃない」
あ、言葉分かるかな、などと呟きながらもフランクに話すのは止まらない。
久方ぶりに目にする同類に沸き立つ剣士を前に、梨花は呼吸を整えゆっくりと言葉を発した。
「あ…」
「あ?なぁに?」
息を吸って。吐いて。表情も穏やかに。
「あなたが私のサーヴァントですか?」
にぱー、と満面の笑みを浮かべて問うてみる。
そうだろうとほぼ確信しているが言葉にするのは大切だ。
…………なかなか返事がない。
何かを堪えるように震える剣士を不審に思いながらも笑顔を崩すことなくレスポンスを待ち続ける。
「お…」
「お?なんですか?」
絞り出すように。あるいは堪えていた何かを吐き出すように返答がなされた。
「お持ち帰りーーーーーーーーーー!!!!」
「はうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」
どこかで聞いたような戯言を吐いて剣士は梨花に飛びつき、愛で始める。
あうあう言いながら梨花はそれを受け入れるしかない。
あれ、こいつバーサーカーだっけ。天眼ってそういうのも見れるんだっけ、などと。
観測世界で魔女が呟いたとか呟かなかったとか。
◇
しばらく愛でたところで二人が正気に戻ると。
「いやー、いきなりごめんね。ホントごめん」
地面に正座して、両手を合わせて、苦い笑みを浮かべて、深々と謝罪する剣士を梨花は仁王立ちで見下ろしていた。
「さっきまでの私は正気じゃなかった……多分何かが憑いていた……世界の修正力のような何かが。あるいは無空に至った直後でなんかハイになっていたのです。もうしません。ごめんなさい」
「謝れたのなら許すのですよ」
えらいえらい、と梨花の手が頭を撫でる。
それにまたもや恍惚の笑みを浮かべはするも、さすがに今度は理性が勝るかすぐに真面目な調子で剣士は話し始めた。
「遅ればせながら事情は概ね理解しました。聖杯戦争、ね。召喚されるのも頭の中に知識があるのも初めてだけど、そういうものがあるのは知ってましたとも。じゃあ、改めて自己紹介。あ、日本の人だよね?立香と同じで私のこと知ってたり?」
よいしょ、と声を上げてゆっくり立ち上がり、梨花に向き合いながら真名を告げる。
「セイバーのサーヴァント、新免武蔵守藤原玄信。でも長いから
宮本武蔵、で。よろしくね」
「わぁー。宮本武蔵……え?女の人、ですよね?」
梨花はそう博識というわけではないが、さすがにその名前は知っている。日本一の大剣豪、数多の剣客武者を打ち破った武芸者の頂点が一人。
しかし梨花の知るそれは男性で、目の前の武蔵を名乗る剣豪はどう見ても女性で……いやこの見た目でまさか男?などと迷走しだすが
「ええ、そうよ。残念ながら女武蔵。立香…私の前のマスターに聞いたけど男の宮本武蔵は有名な剣豪だそうじゃない。ま、私も剣の腕前に関しては負けはしないと自負してますけど」
ふふん、と得意げに柔らかい笑みを受かべて腰に下げた刀を示す。
カケラの向こうを垣間見た梨花にはそれが誇張ないものであると分かり、その屈託ない笑顔とのギャップに些か戸惑う。
雛見沢の外でも怖い人間はいくらでもいるんだな、と悟ったような思考が浮かぶが面には出ないようにして、梨花もまた自己紹介を返す。
「ボクは古手梨花といいます。よろしくなのですよ」
「梨花ちゃんね、オッケー。日本人、世界の旅人、リカちゃん……むむ、なんだか奇妙な縁を感じる。それはともかくよろしくねー」
名前や力に似たもののある少女のことを想起しつつも、しっかり梨花を見据えて、今度は武蔵の方が梨花の頭を撫でる。
「ところで君はどのくらいこういう世界の旅人やってるのかな?見た目相応、ってことはないんでしょ?」
年の割には落ち着いた少女、というだけでは梨花の置かれた状況は抱えきれまい。
涙を流した後はあるが、逆にそれだけ泣いた直後に気持ちを切り替えられるのは幼子にできるとは思えない。
そんな武蔵の問いに、梨花の声と表情から熱が消える。
「……100年、といったらあなたは信じるのかしら?」
カケラを繰り返した記憶の片鱗がある仲間たちならともかく、初対面でこんな戯言信じるだろうか。
疑心暗鬼の100年を過ごした魔女が初対面の相手に信を置くのは難しい。
「な~んて―――」
冗談なのですよ、と続けようとするが
「100年!?すごいね、そりゃ大先輩だ!そんなに続けるの大変だったでしょう……」
思った以上に素直な返答に梨花の口が閉じる。
「もしかして、立香みたいに旅先を選んでるんじゃなくて、私と同じ放浪の身なの……?え、それで今度は聖杯戦争に流れ着くとか?」
自分で口にしておいてドン引いたのか、マジかなどという呟きが武蔵の口の端から洩れる。
梨花といえば概ねそれで相違ないのだから頷くしかない。
武蔵、さらにドン引く。
抑止の守護者が聞いていたら怒髪天を衝いていただろう。
そういうことなら是非もなしと武蔵は笑って
「合点承知!袖すり合うも多少の縁、旅は道連れ世は情けってね。どうせ行く当てなしの風来坊、あなたの旅路に同道しましょう!」
100年の魔女の顔が緩む。
安堵か、歓喜か、その両方か。雛見沢という魔女の結界から出た古手梨花は年相応の少女でしかないということだろう。
先ほどまでとは違う理由で涙を浮かべて、縋るように武蔵の手を握る。
「信じても…頼ってもいいのですね?」
でもなぜ、とポツリと漏れる。
多生の縁と同情で挑むには聖杯戦争というのは些か過酷がすぎないか。
そんな疑問がこぼれ出る。
泣きつく少女の頭を撫で続け、武蔵はからりと答えて見せた。
「正直なところ、もう私の行ける世界は君にしがみついていくそこしかなさそう、ってのもあるけど。そういう後ろ向きなのはナイナイ!でしょう?
……ならばそう。私は、私の剣の道を究めました。その剣で、私は斬るべきモノを斬り、友の道を切り拓き、なすべきことは終えました。わが生涯に悔いはなし」
されどその究めた剣を自らのためだけに振るいたくなかったかといえば、否と武蔵は口にする。
「ソレは私が斬らねばならないものではなかった。けれど、私が斬りたいものではあった」
母と幼馴染を穢された、金色の武者が滅ぼすかもしれない。
母を冒され壊された、鬼混じりの忍びが殺すかもしれない。
自らの剣や槍を貶められた、武辺者たちが許すはずもない。
生前も死後も敵わない陰陽師が気紛れに祓うかもしれない。
他にも数え切れぬほど方々に敵を作った外面だけなら美しい肉食獣だ。
自らの手で、と望むものは多くとも他の誰かに先を越されるのも承知の上だろう。ならば、武蔵が斬ろうとかまうまい。
「君の旅の行く先が、私の剣の道と交わるなら。きっとそこに私の斬りたいものはある」
武蔵の両の眼、あらゆるものを斬る術を見極める天眼が輝く。
斬るためにはそうするべきなのだ、と告げているように。
「セイバーはホントにお侍さんなのですね。怖い怖い、なのです」
竜宮レナや園崎詩音、笑顔を仮面に狂気を隠して人を殺す人間ならば梨花も覚えがある。
しかし武蔵の表情はそうした偽りの笑みではない。花を摘むように、自然のままに、そうあれかしと人を斬れる。
狂わずにして、狂っている。
「ええ、そうよ。ろくでなしの人でなし。剣の道なんて言ったって、結局は人を傷つけ殺める術理に他なりません。握る得物も、振るう我らも、所詮は血脂にまみれた人斬り包丁」
武蔵の笑みに僅かにだが自嘲の色が混ざる。
しかしそういうサガを持って生まれたのだから仕方あるまいと随分昔に開き直っている。
剣の才能は人の十倍、生き延びる才能はその十倍、立ち合いによって得る歓びはそのまた十倍、それが宮本武蔵という女である。
……そんな非人間だが、正義感がないでもない。
「包丁にできるのはせいぜいその柄を握る担い手を選ぶのが精一杯。私は正義にはなれないけれど、私を振るう人が正義たらんとするならば、私は正義の味方に成れる。そういうのは嫌いじゃないのです」
浮かべた自嘲の色をかき消し、じっと梨花の顔を見る。
今度はその向こう側に、別の少女の顔を思い浮かべながらじっくりと。
「私が初めてマスターと呼んだ人は、君のような迷子を見つけたら必ず帰すと約束する正義の人でした。だから私も、君を帰すために全力を尽くすと約束するよ」
「…私をマスターとは呼んでくれないのですか」
年頃の少女が拗ねたような口ぶりで武蔵に甘える。
自然なものか意図したものか、もはや梨花自身にも分からない世渡りだが、武蔵には覿面だったようで顔が緩む。
えへへ~、と馬鹿十割の笑みを浮かべ……それでも前言は翻さない。
「忠義の士を気取るつもりはないけれど、易々と二君に仕えるつもりもないのです。私にマスターと呼ばせたかったら、君の正義を、私に見せて」
突き放すのではなく、背中を押すように。
武蔵は梨花とゆっくり距離を置く。
「それじゃあ行こうか聖杯戦争。ここからは、私が君の剣になる」
「……はい。頼りにしてるのですよ、セイバー」
繰り返す者を絶ち切る刀は得られなかったが、それに負けない名刀を古手梨花は得た。
新たなカケラ紡ぎがここから始まる。
【マスター】
古手梨花@ひぐらしのなく頃に業
【マスターとしての願い】
沙都子も含めて、皆が平和に過ごせるカケラに辿り着きたい
【能力・技能】
村で崇拝される「オヤシロさま」。
雛見沢の巫女の家系、古手家には八代続いて第一子が女子であったならばその八代目がオヤシロさまの生まれ変わりだという言い伝えがあり、梨花がその八代目である。
オヤシロさま=羽入という霊的存在を知覚できる、基本的には唯一の存在。
その羽入の能力によって100年の時を繰り返したり、止まった時の中を動いたりなど超常の域に踏み込むことも。
雛見沢に伝わる古文書や伝承をいくつか纏めるとと彼女はオヤシロさま、つまり羽入ことハィ=リューン・イェアソムール・ジェダという異世界人の子孫なのではないかという。
事実かは不明だが、先述のオヤシロさまの生まれ変わりの項で触れた異能の片鱗は観測された、言うなれば赤き真実である。
付記する事象として、遠野家や風魔一族ら鬼種との混血に匹敵する魔力を秘しており、サーヴァントへ供給を可能としている。
【人物背景】
自らを称して曰く、「100年の魔女」。
昭和58年6月に殺害される運命にあり、そこから抜け出すために羽入と共に何度も「世界」を繰り返してきた。
そしてついに絶望と惨劇を仲間とともに乗り越え、理想の世界に辿り着いて新たな人生を歩み始めた……はずだった。
数年後、突如として再び惨劇の昭和58年に閉じ込められることに。
かけがえない仲間の一人だったはずの、
北条沙都子の手によって。
彼女はまた、終わらない惨劇からの脱出を目指すことになる。
【方針】
生還優先。
【令呪】
右手の甲。
祭具の鍬とそれによって切り落とされた角。
鍬の柄で一画、刃で二画、角で三画。
【クラス】
セイバー
【真名】
宮本武蔵@Fate/Grand Order
【パラメータ】
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力E 幸運B 宝具A+
【属性】
混沌・善
【クラス別スキル】
対魔力:A
妖術、忍術、人道惑わす邪魅甘言なにするものぞ。剣聖にあらずとも剣心なき技なぞ一刀両断。どのような大魔術であろうと、A以下の魔術は斬り捨てる。
【保有スキル】
第五勢:A
二刀の刀の利点、威力を最大限に発揮する構え。剣の思うまま、状況の流れるままに戦う二天一流だが、強敵と対した時、運命と対した時のみ己を静め、剣心を零に落とし、構えを取る。
天眼:A
天眼は「目的を果たす力」とされる。一つの事柄を成しえると決めたらその成就のために全身全霊を傾け、必ず達成するもの。自己の全存在を視線にのせ、目的に投射するもの、といってもい。武蔵の場合は『その場所を斬る』事にのみ天眼が向けられる。たとえば『相手の右腕を切る』と決めたが最後、あらゆる手段を講じて右腕を切断する。それは最適解としての斬撃、『無駄のない、時間と空間をねじ伏せる一刀』となる。『目的達成の為の手段』を『一つに絞る』力。無限にあるべき未来を『たった一つ』の結果に限定する、極めて特殊な魔眼と言ってもいい。
無空:A
剣者が到達する最高の位。究極の境地。柳生新陰流・水月に相当する。無空なるが故に無敵。これ捉える者、無限の境地に達した剣者のみ。多重次元屈折現象を用いた斬撃であれ、無空なるものは捉えられず。
戦闘続行:EX
とても生き汚い。負けない為なら死んだふりなどお手の物。弁舌で煙に巻く、みっともない逃走から超回復すらやってのける。「最後に勝てば私の勝ちでしょう?だから今は逃げるのです!だって、死んじゃったら最後に勝てないじゃない!」都合のいい言い訳をしているようで、根はどこまでも現実主義で図太い。それが女武蔵である。
【宝具】
『六道五輪・倶利伽羅天象(りくどうごりん・くりからてんしょう)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:2~20 最大捕捉:1人
剣轟抜刀。二刀流のまま泰然と構え、小天衝=相手の気勢を削がんと剣気にて威圧してから、大天衝=渾身の一刀を繰り出す武蔵の最終手。背後に浮かぶ仁王はあくまで剣圧によるもの。
武蔵が目指す『空』の概念、『零』の剣の具現と言える。
対人宝具と言っているが、その本質は対因果宝具。あらゆる非業、宿業、呪い、悲運すら一刀両断する仏の剣。
『究極にまで、これ以上ないというぐらいにその存在を削り落として、それでもなお残る"何か"』
無二と言われる究極の一。
そのさらに先にある0=「 」の概念。
この座への到達を、天元の花は求め続け、そしてついには辿り着く。
最期に原始神カオスという極めつけの「 」を切り裂いたことで彼女はその高みへと。
「 」を斬る刃ゆえ、虚数の海より産まれたもの、あるいは虚数事象へと堕ちゆくものである月の癌(ムーンキャンサー)、複合神性(アルターエゴ)に対してはダメージを増す。
『櫂の木刀(かいのぼくとう)』
ランク:C+++ 種別:対人宝具 レンジ:3~10 最大捕捉:1人
汎人類史の記録において、宮本武蔵が巌流佐々木小次郎との戦いで用いた木刀。
二尺五寸と一尺八寸の二本の木刀であるとも、2メートルを超える長大な木刀であったともされる。後者の場合、小次郎の持つ物干し竿を凌駕するサイズであった。
宮本武蔵は一説にはそもそも木刀の扱いに長けていたとされ、櫂の木刀は奇策でも単に物干し竿の長さを超えて攻撃するためのものでもなく、必勝を期して使い慣れた武器を使ったのだとする意見もある。
女武蔵はこの宝具を持たない。
『魔剣破り、承る!(がんりゅうじま)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:100 最大捕捉:1人
武蔵がその長い剣者生涯の中で一度のみ使用したと言われる奇想剣法。見た者は生きてはいない為、それがどのようなものなのか知る者は武蔵のみ。
魔道、邪法、天魔に堕ちた剣士を完膚無きまでに侮辱し、罵倒し、叩き潰す特殊霊基。
またの名を、対剣士対剣豪大結界・巌流島。
【人物背景】
日本史上最強の剣豪として名高い、江戸時代初期の剣術家。
武蔵が創始したとされる流派“二天一流”を身につけ、大刀と小刀を用いる“二刀流”の達人。
……の筈なのだが、正しい歴史に残された武蔵とはどうも事情が異なるようだ。
別世界から迷い込んだ「宮本武蔵」。それが彼女の正体である。
剪定事象により彼女の居た世界は灰になってしまったのだが、運よく彼女は消滅した世界から弾き出され、時空間をただ誘われるままに流転し続ける次元の放浪者(ストレンジャー)となった。
そして幾多の世界を股に駆ける中で、たまたま人理保証機関カルデアの召喚に引っかかり、藤丸立香という少女とともに人理救済の旅路を巡ることに。
下総の国。永久凍土帝国。
そして末に辿り着いたオリュンポスにおいて彼女はカルデアと別の道を行くことになる。
己の全てをかけて原始神カオスを切り裂き、その代償としてカルデアの観測する世界からもはじき出された彼女は、彼女と同じく世界(カケラ)を渡る少女とともに新たな旅路を歩み出す。
ちなみにコミカライズ版英霊剣豪七番勝負とほぼ同様の歴史を辿った武蔵ちゃんであり、彼女の知る藤丸立香は女性である。
最終更新:2021年06月29日 20:21