―――二人の兄弟がいた。
白銀の兄と、金色の弟。
王家の血統として生まれた彼らの幼少期は、過酷極まるものだった。
白銀の兄は、遊ぶ事すら許されず、血の滲むような鍛錬の日々。
金色の弟は、世界を滅ぼしかねない力を知らず科され、預けられた養母の虐待に耐える日々。
当然、そんな環境で子供が健やかに育つはずもない。
白銀の兄は弟に憎悪を募らせ、金色の弟は寄る辺のない絶望の日々を送っていた。
これでは例え兄弟が再会しても、待っているのは惨劇の結末以外になかっただろう。


―――私にはお父さんがいる。お母さんがいる。欲しかったお兄ちゃんまでいるのだ…


そんな彼らの運命に転機が訪れる。
家族の健在。もたらされたその情報は、幼い金色の弟の心を希望に包んだ。
ならば、俯いてはいられない。何時か来る家族との再会の日のために。
母や、父や、兄に胸を張って自分は頑張ったと言えるように。
とてもか細い。希望と呼んでいいのかさえ分からない糸を、彼は決して手放さなかった。
そして、時は流れて。
遂に別たれていた兄弟の運命が交わる。


―――許せ、ガッシュ。兄が愚かだった。


再会は、金色の弟が望んでいた穏やかなものでは決してなかった。
白銀の兄の憎悪は消えず、一国の命運をかけた壮絶な死闘。
その果てに放たれた、兄弟の道が別たれた象徴である雷の黄金龍。
一度はその力に飲まれそうになった物の、金色の弟は力の主として認められ。
金色の黄金龍は正しき担い手の元、食らいつくす。
兄の憎悪も、悲しみも、全ての悲劇を。
最悪の結末は、遂に訪れることはなかった。



―――皆、待っておれ。待っておるのだ…私が必ず魔界で魂だけとなった皆を…生き返らせる…から……


金色の弟は、どんな絶望にも負けなかった。
民のために全てを投げうち消滅と言う極点の力に抗う小さな背中は、正しく優しき王の背中だ。
そして、全ての民の力を結集し、金色に輝くその姿。
その姿を見て、月の兄は思うのだ。


あぁ、自分が背を向けた陽の光とは。
いつも、こんなにも。美しいものだったのかと。



               ▼   ▼   ▼



「どうしたアサシン。何を呆けた顔で立っている」


思考の地平から意識が浮かび上がり、アサシンと呼ばれた男の意識が覚醒する。
声の方へ視線を向けてみれば、幼い少年が此方を見上げていた。
白銀の髪。紫電の眼光。純白のマントを身に纏うその童子―――名は、ゼオンと言った。


「しばし……思案を……」
「そうか。近くこの戦いが本格的に始まるらしいが、不安にでもなったのか?」
「戯れを……」


その少年は、幼いながら大当たりと言えるマスターだった。
豊富な魔力量。鍛え上げられた肉体。サーヴァントにも比肩し得る雷の鬼血術。
瞬間移動から記憶の収奪など様々な特殊能力に加えて、頭の回転に至るまで申し分ない。
何より称賛に値するのはその肝の座り方だ。
歴戦の鬼狩りすら一目で恐怖する自分の姿を見て平然としている。
人間ではあり得ぬ複眼に、上弦の壱の文字が刻まれたこの『黒死牟』を、当たり前の様に従えているのだから。
このマスターを引き当てただけで、聖杯の獲得に一歩近づいたと言えるだろう。
だというのに。


「安心しろ。前にも言ったとおりだ。
俺に願いはないが、お前の願望の成就には協力してやる」


どうして、この童子を見ているとこんなにも心がざわつくのか。
いや、理由は漠然とだが理解している。
この童子を見ていると、どうしても思い出すのだ。
あの怪物と、弟である縁壱と共にあった頃を。


―――ガッシュめ…消していやる!俺と同じ苦しみを味合わせてやる…!


魔力パスが刻まれた際に見たマスターの過去は、自分を呼んだのも頷けるものだった。
恵まれた弟への嫉妬に身を焦がし、心から憎悪し、殺し合った。
それだけ見れば自分の辿った道程と何ら変わりはない。
だが、結末は真逆だった。
兄弟の対立の果てにあったのは、事切れる弟の最期ではなく、憎悪からの解放だった。
その結末が、霊基にこびりついて離れない。
痣がある限り、自分に残された時間は少なかった。別の道などある筈もなかった。
縁壱と並び立つには、越えるには、人を捨てて上弦の壱である黒死牟となるほかなかった。
そのはずなのに。
この、幼き主を見ていると、そんな必要はなかったと言われているようで。
他の答えがあったのではないかといわれているようで。
どうしようもなく、心がかき乱される。
今すぐ傍らの刀を抜き放ち、斬り捨てたくなるほどに。


「……いるといいな。アサシン」
「……?」
「お前の弟だ。お前の記憶の通りの剣の天才ならばサーヴァントになっていても不思議はないだろう」


その言葉に、強制的に意識がが主へと引きつけられ、揺れる。
そう、自分が英霊となっている以上、あの男も当然『座』に招かれているだろう。
いなければおかしい。
だが、仮に居た所で何になると言うのか。
奴は鬼狩りで、自分は鬼だ。殺し合う以外に行きつく果てはない。
自分が奴に憎悪以外の感情を抱いていない以上、それ以外の結末などあり得ない。


「本当にそうか?お前がかつて弟に抱いていた物は…本当にそれだけだったのか?」


見透かしたようなマスターの言葉。
彼に記憶を読み取る能力があるのはアサシンも知っている。
きっと令呪を源としてアサシンの記憶や思考を読み取ったのだろう。
だが、その上で黙れと叫びたくなる心を、アサシンは必死で抑え込んだ。


「此処で出会ったなら…お前たちは聖杯によらずとも違う答えが出せるかもしれない。
俺はそれを期待している」


アサシンは無意識のうちに胸に丁寧に仕舞われた玩具の笛をぎゅうと握る。
黙れ。黙れ。黙れ。
10年も生きていない童が勝手に理解した面をするな。
聖杯という奇跡によって私はあの怪物と同じ高みへと昇り詰める。
それ以外の答えなど、必要ないのだ。

「憎しみは何も実らせん……この聖杯戦争で見つかるといいな、アサシン。
憎しみ以外の、新しい答えが」


やめろ。
お前は縁壱ではない。お前は私の側のはずだ。
分かっているはずだ。私と縁壱の間に、それ以外の答えなどなかったと。
私は、あの化け物が嫌いだと。
それなのに何故、そんな瞳で私を見る事ができる。



――――一緒に暮らしてくれるか?ガッシュ。


だが、しかし…何故だ。何故なのだ。
お前は、お前たちは縁壱ではないのに、どうして…
どうして、そんなにも――――




―――――そんなにも、眩しいんだ。




【クラス】
アサシン

【真名】
黒死牟@鬼滅の刃


【ステータス】
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運D 宝具C

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】
気配遮断:A
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】

鬼種の魔:A
鬼の異能および魔性を表すスキル。
鬼やその混血以外は取得できない。
天性の魔、怪力、カリスマ、魔力放出、等との混合スキルで、アサシンの場合魔力放出は"月輪"となる。

至高の領域:A
透き通る世・無我の境地とも。
相手の肉体を透過して見る事が可能となり、微妙な筋肉や骨格・内臓の動きから相手の行動を先読みできる。
見切りと無窮の武練の複合スキル。

400年の妄執:A
400年間抱き続けた日輪に対する羨望と憎悪。
戦闘続行及び精神汚染、自己改造の複合スキル。
このスキルが高まる程純正の英霊から遠ざかり、精神干渉をシャットアウトする。
彼にとっての日輪である縁壱が脳裏を過るたびに戦闘続行、自己改造、精神汚染にボーナス補正がかかるが、
最大まで補正がかかると二つ目の宝具が発動する。

【宝具】
『上弦の壱』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~20 最大補足:50人
多くの人間を喰らい、命尽きるその瞬間まで人に恐怖を与え続けた"上弦の壱"の肉体そのもの。
非常に高い再生能力を持ち、急所である頸を切り落とす以外の手段で滅ぼすのは非常に困難。
本来であれば"日輪刀"で頸を落とす必要があるが、英霊の座に登録されたことにより弱点が広範化。
宝具級の神秘を持つ武装であれば何であれ、頸を落として鬼を滅ぼせるようになっている。
アサシンは唯一鬼でありながら鬼狩りの剣士が扱う呼吸術に精通しており、それを自身の血鬼術と呼ばれる特殊能力と組み合わせて戦う。
その結果剣士とは思えぬ間合いの広さと鬼の中でも群を抜いた肉体性能を誇る。
しかし欠点として日光を浴びると肉体が焼け焦げ、浴び続ければ灰になって消滅してしまう。
このため太陽の属性を持つ宝具、それどころかただの太陽光でさえ致命傷になり得る。


『生き恥』
ランク:E 種別:対自己宝具 レンジ:0 最大捕捉:黒死牟
前述のスキルである400年の妄執の補正が最大値まで発生した時に発動する宝具。
頸の弱点を完全に克服し、戦闘続行と自己改造のスキルが最大まで跳ね上がるが、逆に精神耐性はEランク相当までダウンする。
その時点で自己改造が最大まで高まった自分の姿を認識してしまったとき、アサシンは現界を保てず消滅する。

【weapon】
『月の呼吸』
 その気になれば肉体そのものから生やすこともできる。

【人物背景】
鬼舞辻無惨配下の精鋭、十二鬼月の一人。
その中でも頂点とされる上弦の壱に位置する最強の鬼。
人間であった頃は鬼狩りとして鬼と戦っていたが寿命を一気に縮める痣が発現したことにより弟と袂を分かつ。
鬼になって以後は陽の呼吸を知る剣士を一人残らず抹殺し、戯れに鬼狩りを狩る日々を送っていたが最後は鬼狩りの最上位である柱複数人がかりで倒され、何もつかめずその生涯を終えた。

【サーヴァントとしての願い】
界聖杯を手に入れ、緑壱を超える強さを手に入れる。


【マスター】
ゼオン・ベル@金色のガッシュ!

【マスターとしての願い】
願いはないが、アサシンがほっておけないので付き合ってやる。

【能力・技能】
多種多様で高威力の雷の術。そして齢6歳ながら鍛え上げられた肉体性能。
記憶の読み取りや収奪、瞬間移動などの特殊能力も有している。

【人物背景】
 魔界の王子にして、ガッシュ・ベルの双子の兄。壮絶な英才教育と鉄拳制裁を受けて育てられ、その才能は王宮騎士の中でも恐れられるほどの域に達している。
 初級呪文で他の魔物が持つ中~上級呪文を打ち破る程度は何のその、身体能力も並の魔物では狂戦士化の禁術を使っても相手にならないほど。
 かつては弟への憎悪を原動力に行動していたが、今は和解し、弟へ兄としての愛情を向けている。

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最終更新:2021年07月18日 11:29