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星降る夜空の下で」を以下のとおり復元します。
>お題『雛苺 泥酔』


カラン… 
スカイラウンジから夜の街を一望しながら、グラスに注がれたウイスキーを飲み干す水銀燈。 
店内には心地よいピアノの音色が流れ、カクテルの甘い匂いが鼻孔をくすぐる。 
薄暗い店内は… 
雛苺「うえー…まっずいのー…」 
水銀燈「…ムードをぶち壊してくれて、ありがとぉ…」 
ため息をつきながら、水銀燈は頭を抱える。 
実は今日、雛苺の「お酒なんて飲めない」という発言を機に、水銀燈がその楽しさを教え込むため、むりやりこんなムードのあるところへ連れてきたのだ。 
…もっとも、雛苺を酔いつぶれさせて、みっともない姿を写真に撮ってやろうというのが、本心だったのだが… 
水銀燈「…マスター、カシスオレンジでも作ってあげてくれるぅ…?」 
結局、水銀燈は作戦を諦め、度数の弱いお酒を雛苺に勧めた。 


雛苺「やー!!ジュースのほうが美味しいのー!!」 
水銀燈「声が大きい!!全く…連れてくるんじゃなかったわぁ…」 
カシスオレンジを吹きだし暴言を吐く雛苺に、ほとほと呆れる水銀燈。 
ため息をつきながら、雛苺にある質問を投げかける。 
水銀燈「雛苺…。あなた、果物で何が一番好き?」 
雛苺「イッチゴー♪」 
水銀燈「…マスター、ストロベリーカクテル…。あと、この子をお願い…。」 
そう言うと、水銀燈は別の席の男性の下へと行ってしまった。 
どうやら、『獲物』はすぐ罠にかかったらしい。 
雛苺「…ふーんだ。水銀燈から誘ったくせに…。あ!これ美味しいの!!ますたー、おかわりー!!」 
こうして、雛苺もようやくお気に入りのお酒が見つかったようだった。 


水銀燈「あなたといると、ホント楽しいわぁ♪ねぇ、今度渋谷とかで会わなぁい?」 
蜘蛛が獲物に糸を巻きつけるように、徐々に相手を罠へ陥れようと画策する水銀燈。 
あとは、街に出て欲しいものをおねだりすれば、事は済むはずだった。 
が、ここで思わぬ邪魔者が入る。 
店員「あの…申し訳ありません…。お連れ様が…」 
その言葉に雛苺を見ると、そこには見事に床で眠りこける雛苺の姿があった。 
元々、夜10時には寝る体質だったのと、カクテルを何度も一気飲みしたのがかなり効いたようだった。 
手際よく、先ほど一緒に飲んでいた男性に『仕事用』のケータイの番号を書いた紙を手渡すと、水銀燈は雛苺を起こしにかかる。 
水銀燈「ほーら、さっさと起きて!もう帰るわよぉ…ほーらっ!」 
しかし、何度ゆすっても雛苺は起きようとしなかった。 
仕方なく、水銀燈は雛苺をタクシー乗り場までおぶって帰ることにした。


満天の星空の下、ふらふらと雛苺をおぶって歩く水銀燈。 
最初はそれほど苦でもなかったのだが、徐々に歩くスピードも鈍ってくる。 
水銀燈「何で…この私が…こんなことを…」 
恨みがましい口調で、水銀燈はつぶやいた。 
雛苺「…ごめんね…。水銀燈…。」 
水銀燈「なぁに?あなた、起きてたのぉ?」 
雛苺「うー…」 
水銀燈「…といっても、歩けそうにないわねぇ…。仕方ない、今日は特別よぉ…。」 
雛苺「ありがとう…。ヒナ、水銀燈のこと…大好きだよ…」 
水銀燈「嬉しいわねぇ…。私も、あなたのこと好きよぉ?なーんか、あなたにだけは警戒心が薄らいじゃうのよねぇ…。子供みたいって言うか…。」 
雛苺「もー…ヒナはお子様じゃないのよ?お酒だって飲めるし…」 
「悪かったわぁ。」と謝ると、水銀燈はあることを考えた。 
私も、いつか子供が出来たら、こんな風におぶって歩くようになるのかしら…と。 
そして、「それも、悪くは無いかもねぇ…」とも考えていた。 


しかし、思うことはそれだけではなかった。
水銀燈の頭の中に、次から次へとまるで滝のように、色々な考えが浮かんでくる
いつまでも1人でいるのも気軽でいいけど、やっぱり最終的には覚悟を決めなくてはいけないのだろうか… 
そして、この先…そんな人が私に現れるだろうか… 
昔は、ただ暇がつぶせればそれでよかった…でもこれからは…。 
水銀燈「結婚かぁ…」 
かみ締めるように、水銀燈はそうつぶやいた。 


完 

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