ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki

昔の水銀燈と翠星石

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お題 『銀様と翠の子が思わぬところでバッティング』


翠星石「おーし、全員集まったですか?じゃあ、さっさと組ごとに別れやがれですぅ♪今日は、みんなでサッカーをするですよ!」
この日、翠星石は自分の担当ではない体育の授業を受け持っていた。
しかし体育のことなど全然分からないので、とりあえずみんなの好きそうなサッカーを指示したものの、生徒たちの顔は何故か冴えない。
翠星石「ど、どうしたです!?さっさと、散りやがれですぅ!!」
男子A「…先生…」
1人の生徒はそう言って手を上げると、ある事を翠星石に尋ねた。
男子「…いつになったら、水銀燈先生は帰ってくるんですか…?」
それは、2学期も中盤に差し掛かった頃の出来事…
水銀燈…彼女は1学期の後半に体育以外の全ての任を外された後、徐々に学校へ来なくなり、ついに期末テストのあたりからずっとその姿を現さなくなっていた。


男子B「確かに、いつ帰ってくるんだろ…?体育だけは、水銀燈先生に唯一会いたいと思える授業だったのになぁ…」
男子C「そうだよなぁ…。『受験』ってものが絡まなければ、そこまで怒らなかったしなぁ…」
男子D「むしろ寝てたな…。その寝顔がまた…」
1人の生徒の質問は、連鎖的に他の生徒へ広がっていった。
それを急いで制止させると、翠星石はみんなに向かってこう言った。
翠星石「そんなに心配しなくても大丈夫ですぅ♪あいつのことだから、そのうちヒョッコリ帰って来るですぅ♪」
…嘘だった。あの日以来、水銀燈が憔悴していく様は自分でも手に取るように分かっていた。
しかし、どんなに声をかけても彼女はそれに応えようとはしなかった…。
プライドの高い彼女にとって、それが最後の抵抗だったのだろう…。
だからこそ、もうあいつは…
しかし、目の前の生徒たちが困っている姿をほおっておける程、翠星石は器用ではなかった。
翠星石「しゃーねーな…。そんなに心配なら、この翠星石が水銀燈を連れてきてやるですぅ!だから、今はサッカーに集中するですよ!」
そう言うと、翠星石は勢いよくホイッスルを吹いた。


翠星石「あ、蒼星石!悪いけど、今日は1人で帰ってくれですぅ♪翠星石は、ちょっと用事があったりなかったりするですぅ♪おほほほほ…」
放課後、翠星石はそう言うと、何か言いたげな蒼星石を残し1人で水銀燈を探しにいった。
水銀燈の行きそうな所…ショットバーやゲームセンター、映画館にデパート、ショップ、喫茶店など、この町にある考えられる箇所は全て回ったつもりだが、どこにも彼女の姿はなかった。
翠星石「…考えられるのは、もう自宅だけです…。でも…あいつの家なんて、どこに…」
そこまで言ったとき、翠星石にある考えがひらめいた。
翠星石「…そうですぅ!学校に行けば、あいつの履歴書とかあるはずですぅ!!そこに住所だって…!!」
そう言うと、翠星石は急いで学校に向かった。
学校を出てから4時間あまり…すでに時計は午後9時をまわっていた。
足は棒のようになり、前身に疲労が溜まっているのが分かる。
それでも、翠星石は前に進み続けた。生徒との約束を果たすために…。水銀燈…彼女自身を救うために…。
そして学校に着いたとき、彼女の目にあるものが飛び込んできた。
それは、だれもいないはずの校舎の1室に煌々と灯る明かり…。最初は職員室…そして教室…。
それが誰の仕業か…。その時、翠星石の頭にはある人の名前しか思い浮かばなかった。


翠星石「はぁ…はぁ…。やっと見つけたですよ…!来るのなら、ちゃんと昼間にきやがれですぅ…!!」
水銀燈「…翠星石?何でここに…?」
肩で息をしながら屋上に現れた翠星石に対し、水銀燈はあっけに取られた様子でそう言った。
呼吸を整えると、翠星石は早速本題を切り出した。


翠星石「おめーを探しに来たんですぅ…!みんな、心配してるですよ?全然学校に来ないから…」
水銀燈「心配…?何言ってるの?私なんかいないほうが、みんな上手く廻るでしょうに…」
翠星石「そんなこと無いですぅ!それに、おめーだって学校のことが名残惜しいから、ここに来たはずです!!だったら…」
水銀燈「…嫌…私はもう、これ以上…」
それは、水銀燈が初めて他人に弱みを見せた瞬間でもあった。
長年、1人で考え1人で悩んできたツケが一気に押し寄せてきたようで、もはやその堤防も決壊寸前だった。
彼女にとっての最後の砦…それが壊れてしまえば…もう…。
翠星石「しっかりするです!あの『強い水銀燈』はどこへ行ったですか!?真紅も、蒼星石も…そして生徒たちも、お前が過去やった事なんて気にしてないです…!むしろ、お前が帰ってくるのを心待ちにしてるですよ!?それなのに…」
今まで伝えたくても伝えられなかったこと…翠星石はそれを全て吐き出した。
今言わなければ、二度と言えなくなる気がするから…。だからこそ一生懸命に…そして必死に…。
そんな彼女の言葉を、水銀燈は瞳に涙を湛えながら耳を傾けた。


翠星石「それなのに…おめーはいつまで過去に囚われてるつもりですか!?おめーには、もっと大切な今があるですよ…!」
水銀燈「…私だって、本当はみんなと…」
翠星石の言葉に何か言おうとする水銀燈だったが、そこでハッと気がつき、こう言った。
水銀燈「ふっ…あなた、何か勘違いしているようね…。いいこと?私はまだまだ強くなるわ…。そして、この街を…世界を私の色に染めてあげる…。だから、こんなところでいつまでも遊んでるわけにはいかないの…。」
そう言うと、水銀燈は以前の凛とした態度を取り戻し、その場を立ち去った。
そして時は流れ…


薔薇水晶「銀ちゃん…こんなの見つけたんだけど…。」
水銀燈「うるさいわね…何勝手に人の家のクローゼットを…あっ…!!」
その日、水銀燈の家には同じ教師の何名かが遊びに来ていた。そして、その中の1人がクローゼットの中からあるものを発見したのを見ると、彼女は急いでそれを取り上げ、室内を逃げ回った。
それを見て、一同はこんな会話を交わしだした。
翠星石「…おめー、まだこんなの持ってたですか…?こいつのせいで、散々酷い目にあったはずなのに…」
雪華綺晶「これは…火炎放射器…?」
真紅「そう…。高校のとき、水銀燈が私たちを斃すために作ったものよ。…でも、山火事まで起こしたのに全員無傷だったなんて、今考えても本当に奇跡だわ…」
薔薇水晶「…それ、早くこっちによこしなさい…。」
水銀燈「い、いいじゃない…!私にとって、これは大切な思い出の品でぇ…」
薔薇水晶「だめ…!早く…!!」
その一言で、しぶしぶとそれを差し出すと、彼女は不機嫌そうな顔でリビングへ戻っていった。
…結局、彼女が屋上で語った夢は、今日のこの日まで実現することはなかった。
純粋に『力』と呼べるものが衰えたこと…それも理由の1つかもしれない。
しかし、彼女はそれを諦める代わりに、『もう1つの力』を手に入れた。
不確かで脆く…しかし、何よりも強い物…
誰かはそれを、『絆』とも呼んだ…。




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