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魔法少女達の七夕祭 ~ 月明かりの人形


「こんばんは、ルーミア」

木に登り、夜の森を見つめている金髪の友人に後ろから話し掛ける。

「うわ、リトル来てたんだ」

ルーミアは夜が好きだし、そもそも闇の妖怪なのだが実はそれほど夜目が利かない。
だから私を発見するには至らなかったのだろう。
本気で驚いたらしいルーミアは危うく木の枝から転げ落ちそうになる。

「そんなに私は怖い存在?鬼か何かとでも?
まあ、悪魔ではあるけどね」

ルーミアに手を貸してやる。小柄な彼女を持ち上げるぐらい、容易だ。

「ただ、不意を突かれて驚いただけよ。今度からはもっと魔力を押し出して来てくれる?そうでもしないと夜はあなたに気付かない」
「そうしたら、ここに来る前に食べられてしまうでしょうね。か弱い小悪魔だから」
「あなたに似合わない言葉、ベスト3に入る単語を聞いた気がするわ」
「何よ、見かけ幼女の癖して」
「あら、仮にも千年以上長く生きている相手に言う言葉かしら?」
「友人は対等であるはずよ?」
「親しき仲に礼儀あり」
「本当の事じゃない」

挨拶を終え、ルーミアの隣に腰を下ろす。

「それより、久し振りじゃない、こんな早い時間に」
「あー、まだ戌の刻だったかしら。今日は早くパチュリー様が眠られたから、後はメイドに任せて早めに来たのよ」
「あなたも中々のワルね」
「そこは処世術と呼んで欲しい」
「処世術が聞いて呆れるわ」
「でも、私が早くに来るのは嬉しいんじゃない?」
「それはそうだけどね。ほら、この時間なら酒盛りしても大丈夫でしょ?」

何故か酒の大瓶を持って来ている。
私が来るのを予知していたのか?

「まあ、話の肴ぐらいにはね」




私とした事が、実に迂闊だった。
ルーミアと酒を飲む事など、本当に久方振りだ。
それ故にその危険性を忘れていたのだ。
一杯飲めばそれまで、後五杯は飲まされる。
それも飲めば追加で三杯だ。
後は断る事の出来ない酒を一杯ずつ、無限に飲まされる。
その結果、まともに飛ぶ事も出来ない程に酔っ払う事になってしまった。

「それじゃ、酔い覚ましに無名の丘にでも行きましょうよ。
あそこで夜風に当たっていたら幾分かマシになるでしょう?」
「まあ、そうね。それに夜の空を飛ぶのも気持ち良いけど、夜道を歩くのも悪い気はしないわ」

ちなみに、実際はこれよりもっとはっきりしない口調で私はルーミアと話している。
ルーミアは幾ら飲んでもそこまでは酔わないらしいので、終始はっきりとした口調なのだが。
飲ませ出すときりの無いルーミアだが、唯一良心的である所を挙げるとすれば、自分も一緒に飲んでくれる事だろうか。
なので現在、私とルーミアは同じ量の飲酒をしている事になる。

「そういえばあそこには、人形の妖怪が居たわね。鈴蘭の毒で動くって言う」
「メディスンね。最近は私、彼女とよく会ってるのよ。
一応、見た目だけならそんなに年も変わらないから」
「妖怪にその言葉は相応しくないわね。
でもその子は本当に妖怪になったばかりでしょ?あんたに影響されて曲がった子にならないか心配だわ」
「誰が曲がっているって?あなたの方が数倍性格悪いと思うけど」
「だから私は処世術に長けているだけだわ。でもそれもメイド長の真似事よ?」
「そうそう、昔のあなたは今よりずっと素直だったわ。
ああ、飼われてあなたは変わってしまったのね。可哀相だわ」
「…一度ぐらいは逝くのも良い経験じゃない?」
「私はあなたの屋敷の吸血鬼の槍を刺されても死ななかったわよ。そんな私を殺せるのかしら?」
「あんたのその生命力はゴキブリ並か」
「褒め言葉と受け取っておくわ」
「どうぞご勝手に」



無名の丘に普通、人も妖怪も寄り付かない。
しかし、鈴蘭畑と月明かりのコントラストは幻想的な魅力に溢れている。
故に私達のお気に入りの場所なのだ。
そしてその場所にはルーミアの住処と言える魔法の森の一角から、半刻程で行く事が出来る。

「私には一つ疑問に思う事があるのだけど、あんたはなんでまた魔法の森に住んでいるの?
もっと川や湖が近い方が色々と便利だと思うんだけど」
「チープな質問ね」
「悪うござんした」
「木の無い平地より、木の多い森の方が闇は深い、闇が深ければ私の力はそれだけ大きくなる。
それだけの理由よ」
「うわっ、本当に簡単過ぎる答え」
「私には魔法の森である必要すら無いわ「森」であれば良いの。
でも幻想郷に広大な森は魔法の森しか無い、だからよ」
「あ、もう見えて来たわ」
「って、無視かい!」

無名の丘はやはり思い出の中にあるままの、幻想的な景色を映し出している。
それを酒の所為だけでは無く、赤く染まった顔で見ているとなるほど、酔いなんて直ぐに冷めてしまいそうだ。

「メディスーン、居るのかー?」

後ろから聞こえた声に思わず、我が耳を疑うが、そうだ、これがルーミアの普通なのだ。
彼女は生まれてそれ程長い時間経っていない、若い妖怪。
それが一般的な見解だ。

「あれー、何所に居るのかー?」

自分の中で壊れて行くルーミアのイメージ。

「ルーミア、居るよー」

同じぐらい気の抜けた声で返事が返ってくる。
なんですか、ここは幼稚園ですか?パチュリー様。
今は居ない人物に縋る辺り、私の動揺は今、臨界点を越えている。

「今日は友達のリトルと来たのだー。
前にも来た事があるけど、メディスンと会うのは初めてなのかー」

ルーミア、無理して語尾を伸ばしていないだろうか。
いや、確実にそうだ。
見ていて痛々しいとはこの事で間違ってはいないですよね?パチュリー様。

「始めまして、私はメディスン」
「わ、私はリトル、よろ、宜しくね」
「よろよろ?」
「リトルは恥ずかしがり屋さんなのかー」

こいつ、絶対に楽しんでやがる。
ああ、力が欲しい。このふざけた妖怪を葬り去るだけの圧倒的な力が欲しい。

「それじゃ、今から遊ぶのかー」
「え?」
「じゃあ、まずは鈴蘭で花輪を作りましょ~」
「え、え?」
「じゃあ私はリトルに鈴蘭のお茶を作るのかー」
「え、え、ええっ!?」
「リトルは鈴蘭が好きなの?」
「いや、私にもしっかり毒で…」
「リトルは鈴蘭がどんなに美味しい食べ物より好きなのかー」
「そうなんだー」
「ちょっと!ルーミア!」
「わはー」




明くる朝、私が図書館で突っ伏していたのは言うまでも無い。

「小悪魔、お茶」
「うぅ~」
「ほら早く、淹れて頂戴」
「うぅ~」
「小悪魔!」
「うぅ~」
「確か、あなたは日魔法に弱かったわね。ロイヤルフレアは下手すると死んじゃうから、サテライトヒマワリ辺りかしら?」
「そ、それはご勘弁を!」
「じゃあ早くお茶を淹れなさい」
「いえ、その…手の感覚があんまり無いんですよ、はい」
「何が故に」
「えーと、その…ですね」
「あなた、サボろうとしていない?」
「いえ、そうじゃないんです。その…鈴蘭をですね」
「は?鈴蘭?」
「はい、それを思いっきり飲まされまして…正直、命がある事が不思議と言うか…」
「誰に飲まされたの?」
「ルーミア、です」
「ふーん」
「えっ!?それだけですか!?」
「だっていつもそうじゃない」
「いえ、初めてです」
「解毒薬ぐらい自分で調合出来るでしょ?作れば良いじゃない」
「だからそれを作るための手が…」
「そう、なら切り落としましょうか」
「頑張って作って来ます」
「ああ、そういえば小悪魔」
「はい?」
「明日は七夕ね」
「そうですねぇ、しかしなんでまた?」
「何となく明日は普通じゃない日になる気がした」
「はぁ」



続く



あとがき

上海人形は最高の人形と、私は前に書いたと思います
しかし、考えてもみればもう一体、自意識を持った人形は居ました

やがて、彼女とアリス達が出会う日が来るのかもしれません








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最終更新:2008年07月24日 13:10