「ふぅ・・・気持ちいいな」
「ゆかりちゃんも、ここへ来るのは初めてでやんすか?」
「そうだね。去年オープンしたって言っても、秋だったからね。さすがに、秋にプールは・・・って感じかな?」
「でも、ここって1年中泳げるけどね。温水プールとかもあるし」
「それを利用して、各学校の水泳部とかがここへ泳ぎに来てるらしいわね」
「まぁ、仕方無いじゃない。私達だって風紀委員の仕事で忙しいしね」
葉原・梯・武佐・加賀美・朱花の5人は、『マリンウォール』のこと等について会話を繰り広げている。
「いっけぇー!!!」
「か、仮屋様ってすごいですー!!」
「しっかり捕まっててよ~」
「わかりました!!」
月ノ宮・遠藤・鬼ヶ原は、仮屋の腹の上に乗っている。仮屋は、さしずめサーフボード代わりか。
『念動飛翔』による空気の操作で、水上をそれなりの速度で駆け回っている。
「不動。そういえば、お前が掛けている眼鏡は“だて”だそうだな。何故そんなものを?」
「・・・まぁ、私なりのファッションとでも言うのか・・・。真面目っぽさも出るかなとも思って、今尚掛けている」
「ククッ、お前らしいな」
破輩と不動は、プール脇にて各々の私生活について色んな話をしていた。
「ホムラっちよ!!お前を、俺達
十二人委員会のメンバーの1人として迎え入れてやろう!!さぁ!!」
「何が『さぁ!!』なのよ!!人を勝手に怪しげな組織に所属させないで下さい!!そもそも十二人委員会って何ですか!?」
「元は俺が作った組織だ。組織の概要や成り立ちを話せば長くなるが・・・そうだな、まず」
「いや、いいです。結構です。聞きたくありません。興味も関心も一切無いので、はい」
「その台詞・・・。志道?ゲコ太?」
「確か、桜の奴も同じ台詞を言っていたな」
「でござるな。桜殿と同じ台詞とは・・・やはり同じ風紀委員。通じるものがあるのやも・・・」
「今は停職中だけどな」
「そうか。やはり、俺の記憶は間違っていなかったか。では、なんだかんだで俺達の一員になったホムラっちには・・・」
「何が『なんだかんだで』よ!!だから、私はそんな怪しげな組織に入らないって言ってるじゃ無い!!
だー!!もう!!あの“変人”の知り合いは、どいつもこいつも“変人”ばっかりなの!?」
「・・・俺も、一応その“変人”の知り合いみたいなモンなんだけどよ・・・。前に成瀬台のグラウンドとかで対決もしたし・・・。そうか、俺も“変人”か。ハハッ」
「!!!ち、違うわよ!?荒我が“変人”だなんて一言も・・・!!」
「ハハッ・・・ハハッ・・・」
啄達のペースに巻き込まれる焔火が、つい失言を零してしまう。その失言に心痛める荒我は、焔火の言葉を無視して奇妙な笑い声を虚空に放った。
「得世様!?得世様は何処!?」
「真珠院!!あなたも見失ったの!?」
「界刺さん・・・。これは・・・」
「『光学装飾』で姿を眩ましているんだと思う。バカ界刺・・・一体何処へ?」
真珠院・一厘・苧環・形製は、自分達が恋する男性の行方を追っていた。何時の間にか姿を眩ましていた界刺は何処に居るのかと言うと・・・
「あぁ・・・。ここならゆったりできるかなぁ」
「・・・大丈夫だと思います。『マリンウォール』は広いですから。一厘さんの『物質操作』でも、すぐには追って来れないでしょう」
「・・・・・・」
ここは、『マリンウォール』内にあるプールの1つ。『マリンウォール』は、幾十ものプールを所有しているために、収容人数もそれ相応に大きかった。
そんなプールの1つに界刺・水楯・春咲は居た。ここは、何の変哲も無い+狭いプールのため他のプールに比べると不人気であるらしく、人が殆ど居なかった。
「ここでなら・・・特訓もはかどりそうだ。涙簾ちゃん。サポートよろしく」
「はい」
「・・・得世さん。あのぅ・・・」
「やっぱり気になるのかい?俺が、5人もの女性に告白されたことが?」
「!!」
春咲の表情が硬直する。図星・・・というわけだ。
「・・・やっぱり。君も俺が好きなのかい?あいつ等にも言えることだけど、俺を彼氏に持つってのはすっごくヤバ気だよ?第一、面倒だろうし」
「・・・・・・」
「しかも、今の俺は女性不信状態で異性に恋心も抱かない。まぁ、何時までもそのままにしておくつもりは無ぇけど。そんな俺でも・・・君の心は変わらないのかい?」
「・・・・・・はい」
そう言って、春咲は界刺に近付いて行く。顔を朱に染めながら。
「形製さん達が得世さんに告白とキスをしたって聞いた時は、心臓が飛び出るんじゃないかって思うくらいドキドキしました。
得世さんが、告白に対する返事を保留にした・・・つまり恋人をまだ決めていないという事実を聞いた時は、更にドキドキしました。
そして・・・ようやく自覚しました。私は得世さんが好きなんだって。遅いですよね、自覚するのが」
偶然の導きで、自分は界刺と巡り会った。それは、きっと運命だったんだろうと今の春咲は思う。
救済委員に居た時に、何時も自分を見守ってくれた男性。自分の価値観を思いっ切り変えてくれた碧髪の男。自分を救ってくれたのは・・・
界刺得世その人。
「・・・何だか、変な気分です。得世さんが先んじて言ったからか、思った以上に緊張していないです」
「・・・何で顔を近付けてくるの?」
「・・・言わなくてもわかってるんでしょ?負けたくないからです」
春咲の顔が界刺の顔に近付く。そして・・・
「あなたが面倒な人間なのは、もうわかり切っていることです。だったら、そんな面倒な男性を丸ごと包み込められるような、大きな女性に私がなればいいだけの話です」
「・・・大きく出たね」
「はい。そのくらいじゃ無いと、得世さんとは付き合えませんから。あなたを優しさで包み込められるような人間に、何時か私はなる。なってみせる!!
その誓いとあなたへの思いを・・・このキスに込めます。・・・(ムニュ)」
「(ムニュ)」
「・・・・・・」
春咲は界刺に口付けする。隣に無表情の水楯を置いて。
「・・・6人目か。しかしまぁ、桜も大胆になったモンだ。隣に涙簾ちゃんが居るってのに」
「ハッ!!」
「・・・見事に忘れられていましたね」
「ご、ごめんなさい!!えっと、その・・・あの・・・」
春咲は思いっ切り狼狽するが、対する水楯はどこか諦めたような表情で春咲に声を向ける。
「別にいいですよ。春咲さんが界刺さんを好きだったのは、前からわかっていたことですし。
それに、界刺さんは春咲さんを含めて、もう6人もの女性からキスを貰っているんですから。一々気にはしません」
「・・・ごめんなさい」
春咲は顔を真紅に染めて俯いてしまう。水楯自身も界刺を好いていると考えているが故に、そんな少女の前で告白とキスをしてしまった迂闊さに、春咲は自分の頭を殴りたくなる。
「大丈夫ですよ、春咲さん。・・・昨日は夕方から思いっ切り甘えたし・・・『深夜は外出する』って言ったから集中的に(ボソッ)」
「えっ?何か言いましたか、水楯さん?」
「いえ。何でもありません」
「(・・・恐ぇ)」
顔色一つ変えずに春咲の言葉に答えている水楯に、界刺は僅かに恐怖する。
「それより、界刺さん。そろそろ特訓を始めないと、一厘さん達が何時ここに来るかわからないですよ?」
「それもそうだ。よしっ、んじゃさっさと始めるか」
「・・・特訓って、具体的には何をするんですか?」
特訓内容を知っているのは界刺と水楯のみ。故に、春咲が疑問を抱くのは当然である。
「可視光線に近い“超近赤外線”を自在に操るために、もう一度可視光線の制御方法を基礎から見つめ直すのさ」
そう言って、界刺は『光学装飾』を発動する。
ピカー!!!
『光学装飾』によって発生した赤色の可視光線が、プールの水の中で屈折する。
「近赤外線の波長とかの詳しい説明は省くとして、元々近赤外線というのは赤色の可視光線に近い波長を持っているんだよね。知ってた?」
「触り程度は・・・。それじゃあ、“超近赤外線”の波長は?」
「可視光線の波長に片足を突っ込んでるような波長だね。その中でも、ピークの波長を中心に完全制御する!
俺は、どっちかって言うと赤外線より可視光線の操作の方が得意でね。可視光線に近い近赤外線の波長は、赤色の可視光線として扱う癖があるんだ。
今は、それを矯正する傍らで可視光線の制御方法を見直してんの。涙簾ちゃん。お願い」
「わかりました」
界刺の意図を理解した水楯が、『粘水操作』によりプールの水の一部を宙に浮かばせる。その中では、赤色の可視光線が縦横無尽に屈折していた。
浮かんだ水は様々に形を変え続ける。それに応じて、光の屈折も変化していく。
「光は、水の中に入ると屈折する。それを利用した、可視光線の制御方法さ」
「・・・具体的には?」
「つまり、“光が屈折しないようにする”んだ。水の屈折率を頭に入れた上で、キッチリ修正する。
どこから光を照射しても、水の中で光が屈折しないようにする。あるいは、屈折する角度を水の屈折率と合わせて操作したりとか。
これが難しいんだよな。特に、今回は涙簾ちゃんの『粘水操作』で変化が激しいからね。だからこそ、鍛え甲斐があるんだけどね」
「(・・・!!つまり、水の中で『光学装飾』を使ったとしても、地上に居る時と同じように操作できるようにする特訓なんだ・・・。
どんな場所でも、どんな状況でも『光学装飾』を自在に振るう・・・。道理で、あれだけのことができるわけだ)」
春咲は、感心の念を抱く。どんな環境でも自分の力を十二分に発揮できることの大切さを、以前の救済委員事件の折に思い知らされたために。
「今やってる特訓は、赤色の可視光線と“超近赤外線”の区別。そして、可視光線の制御方法に係る演算方式を、そっくりそのまま“超近赤外線”に持ってくること。
何せ、波長が可視光線に近似しているからね。・・・現状の出来栄えは、8割方くらいかな?」
「もう、そんな段階にまで・・・」
「うん。“超近赤外線”が生み出すエネルギーは、他の近赤外線に比べればかなり大きい。しかも、その収束時間が大幅に短縮される。
これなら・・・俺の“切り札”の弱点を殆ど解消できるし、更なる応用もできる」
「“切り札”・・・ですか?」
「うん。これは、特訓に付き合って貰っている涙簾ちゃんと、『分身人形』で覗いた形製しか知らないことだけど・・・。君にも教えておこうか。
実はね・・・俺って破壊力を伴った光線も放つことができるんだよ。威力的には、岩石を貫通するくらいの。面倒だから、まず使わないけど」
「はいっ!!?」
春咲は、界刺のカミングアウトに驚愕する。救済委員だった頃、何時かの帰り道の際に界刺はこう言っていたからだ。『光に直接的な攻撃力は無い』・・・と。
「・・・嘘ですか?また、ペテンですか?あなた・・・これまでに一体どれ程の嘘を付いて来たんですか!?」
「う~ん・・・数え切れないなぁ」
「・・・あの時は私の行動を矯正するために、わざと言ったんですか?高位能力者(あなた)の限界って、本当はまだまだ底が・・・」
「それは、君も同じだろ?」
「!!」
界刺が指摘するのは、己に秘められた可能性という芽を如何に育むのか・・・その1点のみ。
「君の『物体転移』だって、最近は改善しつつあるんだろ?君自身の努力で」
「は、はい・・・。改善すべき弱点の1つに集中的に取り組んだ結果、何とか形にはなりました。教材の助けもあって」
「だろ?人間ってのは、日々成長や変化をして行くモンさ。俺も、君も、誰もかも。そして、その段階での限界を把握するのが重要なのさ。
あの時言ったことは、嘘じゃ無いことも多くある。結局、俺は光しか操れないからね。だったら、それを活かすために何だって使うってだけの話。例えば・・・嘘とかね。んふっ」
「・・・ハァ。本当に面倒な人。で、どんな応用を考えているんですか?弱点の解消もどうのこうのって言ってましたけど・・・」
「そうだね・・・。涙簾ちゃんにも教えておこうかな?俺が今考えているのは・・・(ゴニョゴニョ)」
「(ゴニョゴニョ)。・・・!!!そ、そんなことができるんですか!?」
「(ゴニョゴニョ)。攻撃面だけでは無く、他の方面にも・・・!!」
「うん。そりゃ、こうやって特訓しているんだから、攻撃面にばっかり応用するのは勿体無いでしょ?使えそうな方面には、ふんだんに用いる。それが、俺のポリシーさ。
だからこそ、一生懸命特訓しているんだし。平行して、制御範囲の移動や拡大にも力を注いでいるしね。
そいつ等もおおよその形にはなってるよ?リンリン達には、嘘を付いてるっていうか内緒にしてるけど。んふっ」
「・・・ちなみに、何時からやり出したんですか?」
「“超近赤外線”に関しては、雅艶にボコられた翌日から。制御範囲とかの特訓は、君と初めて会った翌日から。
初めて行動を共にする君や救済委員に対する予防措置みたいな感じだったねぇ、あれは。おかげで、テストが散々だったよ。んふっ!」
「あの頃から・・・!!」
「“超近赤外線”の特訓は1ヶ月以上、制御範囲等の特訓は約2ヶ月もの期間を費やしているんですよね。それだけの期間があれば、界刺さんなら形にしてしまいますよね」
界刺の思考に、春咲と水楯は感嘆する。言葉にするのは簡単だが、それを実際に実現させるには相当な努力が要る筈だ。
それを事も無げに言ってしまうために、この人にとっては造作も無いことなんだろうという錯覚さえしてしまう。
だが、実際には違う。こういう特訓を時間と共に積み重ねて、界刺の『光学装飾』は極められて来たのだ。
「例えばだけど、今じゃあ目を瞑っていたって可視光線や赤外線を知覚できるからね、俺の『光学装飾』は」
「・・・マジですか?」
「うん。でも、目に可視光線なんかを通しての方がやっぱり精度は高いよ?目を通さない知覚方法は精度が落ちちゃうし、神経も結構使から。
もちろん、今はもう慣れたけど。でも面倒臭いことには変わりない。んでもって・・・見付かったな」
「えっ!?」
「・・・早いですね」
「恋する乙女達の恐さは、昨日や一昨日の騒動で嫌って言う程目にしたしね。しゃーない・・・涙簾ちゃん。出迎えてあげて」
「わかりました」
そう言って、水楯は『粘水操作』にて更なる水量をプールから巻き上げる。“彼女”の能力は液体には効果を及ぼせない。故に・・・
「居た!!界刺さん!!こんなとこ・・・グワッ!!」
一厘・苧環・形製・真珠院が、水楯の操る水流に巻き込まれる。そして、水楯・界刺・春咲が居る場所に水ごと連行された。
「よっ!」
「ゴホッ、ゴホッ!・・・何が『よっ!』ですか!?危うく溺れかけるトコだったじゃないですか!?」
「ゲホッ、ゲホッ!界刺さん・・・手荒い歓迎ですね・・・」
界刺の気軽な声に一厘が不平を漏らし、苧環が苦笑いする。声こそ出していないものの、形製と真珠院の顔にも少しばかりの怒りの色が見て取れた。
「・・・ていっ!」
「痛っ!?」
「・・・リンリン。それに珊瑚ちゃんも・・・かな?別に、痛みをおして来る必要は無かったんだよ?一昨日のダメージが、まだ残ってるんだろう?」
「・・・それがわかっていて誘う界刺さんは、本当に意地悪ですね」
「・・・一厘先輩と同意見です」
大して力を入れていない指差しで、顔を顰める一厘。それは、きっと真珠院も同様だろう。2人は、一昨日の“講習”で界刺からボコボコにされていたのだ。
主に腹部を集中的に狙われたために、今でも青い痣として残っている始末だ。スクール水着を着ているので、外から見る分にはバレることは無いが。
「でも、誘わなかったら君達の機嫌は悪くなってたんじゃないの?」
「そ、それは・・・」
「・・・そうなってたと思います」
「・・・ちょっと、プールの角の方に行こうか、皆?涙簾ちゃんが起こした水流にビビって、今は俺達以外の人間は居ないからね。
涙簾ちゃん。この辺で特訓はお終いだ。手応えはバッチリ掴んだし、これならすぐだと思うよ」
「そうですか・・・」
「・・・何でガッカリしてんの?」
「・・・別に」
等と言うやり取りの後に、界刺達以外に誰も居ないプールの脇に来た面々。
浮き輪に身を通しプカプカと浮いている界刺を取り囲むように、水楯・春咲・一厘・苧環・形製・真珠院が水に浮かんでいた。その何人かは、界刺の浮き輪を掴むように。
「さっき、桜に告白された。キスも一緒に」
「「「「!!!」」」」
「そうだよね、桜?」
「・・・はい!」
「・・・これで、6人目か。アホ界刺って、金束の言う通りの人間だね。本当に女ったらしなんだから」
「だからこそ・・・一応言っておかないといけないことがある。本当は嬌看にも言いたかったんだけど・・・後で言うか。皆、本当に済まなかった」
「な、何で界刺さんが謝るの!?」
「この中だと、特に鈴音・華憐・形製・珊瑚に・・・だな。済まねぇ。・・・俺のために告白合戦を開いてくれたんだろ?俺が、今にも死ぬような戯言を零しちまったから」
「「「「!!!」」」」
「それって・・・苧環さんを尾行していたっていう殺人鬼と関係が?」
「そうだよ、桜。きっと、こいつ等は珍しく弱気になっている俺を励ます意味も込めて、俺に告白してくれたんだよ。
告白なんて大事なものを俺の都合に合わせた。・・・そうだろ?」
「「「「・・・」」」」
当事者である4人は、一言も言葉を発しない。界刺の見立ては当たっていたということだ。
「・・・ここで誓っておくよ。俺は、お前等の思いを絶対に踏み躙らねぇ!!お前等が勇気を出して俺に告白してくれたこと、本当に嬉しかった!!
これは・・・嘘じゃ無い。俺の命に懸けて!!だから・・・ありがとう。・・・その感謝の意味も込めて、今日ここに誘ったんだよ」
これは、謝罪。これは、感謝。告白された身として、絶対に有耶無耶にするわけにはいかないこと。だから、告白した少女達に自分の本当の気持ちを伝える。
「界刺さん・・・。私の方こそ、ごめんなさい。あなたに重荷を背負わせてしまったことを、今でも後悔しているわ」
苧環が、
「得世様・・・。あなた様のお気持ち、痛い程わかります。いえ、わかっていないのかもしれませんが・・・それでもわかろうと私は努力しています」
真珠院が、
「界刺さんは絶対に負けないし、死なないよ。そんな流れを持って来る世界さえ、界刺さんなら騙しちゃうよ」
一厘が、
「界刺・・・。私も、できるだけ君の力になれるように頑張る。だから・・・一緒に行こう?」
形製が、
「得世さん。もし、得世さんでも弱音を零したくなる時があったら、私は何時でも受け止めてみせます!」
春咲が、
「界刺さんに危害を及ぼす者は、誰だろうと潰す。安心して下さい、界刺さん。あなたは、この私が命に代えても守り通してみせます」
水楯が、界刺の浮き輪に腕を乗せながら寄り添う。愛しい人を、もう一度元気付けるために。
「あぁ・・・。サンキュ」
そんな声に返す界刺の言葉は短かった。だが、その短い言葉に込められた思いの強さを、少女達は確かに感じ取っていた。
嘘ばかり付く碧髪の男の言葉を、界刺得世の本音を少女達は静かに己が心に染み渡らせて行く。
「よしっ、そんじゃあ・・・界刺さん。私達をおちょくった罰です!!お覚悟を!!」
「ぬおっ!?」
先手は一厘。彼女が、誰よりも早くに界刺の首に腕を巻き付ける。ついでに、顔も界刺の頬へ引っ付ける。
「一厘先輩!?わ、私だって負けませんよ!!」
「なっ!?」
次は真珠院。『念動使い』による念動力で、界刺を水の中に固定する。自分達の重さで沈まないように。
その後、念動力で自分を浮かせた後に真正面から界刺に飛び込む。
「ぐぉっ!?」
「こ、こらっ!危ないでしょう、真珠院!?」
「これしきのことで弱音を吐いていては、得世様のパートナーとして歩いては行けません!!」
「・・・バカ界刺はあそこから動けない」
「・・・私達も行く?」
「・・・うん!」
「「ハアアァァッ!!」」
「何ですと!?」
左右から形製と苧環のダブルアタックが炸裂する。それでも、界刺は念動力によって沈むことは無い。それが、彼にとって良いことなのか悪いことなのかはわからないが。
「・・・私も負けていられない!!」
「・・・水流の勢いを利用して・・・(ブツブツ)」
「「ハァッ!!」」
「グフッ!!」
更には、春咲と水楯も突進する。もはや、女性のオモチャと化している界刺。もちろん、彼はピクリとも動けない。
ついでに、事ここに至って口も動けないように念動力による圧力が掛かる。口答えは許しませんという、真珠院の意思表示でもある。
「ねぇ、真珠院。界刺さんの左腕を上げてくれない?」
「いいですよ。ハッ!」
「よし。それじゃあ、その脇腹にしがみ付く!!」
「あぁ!苧環ずるい!!真珠院!!バカ界刺の右腕も!!」
「フン!!」
「よしっ、それじゃあ、いただ・・・」
「と見せかけて、私が頂きます!!」
「真珠院!?う、うう、裏切ったなー!?」
「得世さんの手・・・キレイですよね。女の子みたい・・・」
「しかも、男らしく大きいですからね。身だしなみに気を付けている界刺さんらしいと言えばらしいですけど・・・」
「背後から抱き付く!!あぁ・・・こうやって界刺さんと触れ合える日が来るなんて、前までの私には思いもしなかったなぁ」
「得世様の腹筋・・・よく鍛えられていますわね。鬼ヶ原さんの仰った通りです」
「確かに、界刺さんの体って鍛えられているわよね。腹筋・・・胸筋・・・男の逞しさとでも言うのかしら?・・・フフッ、いいわね」
「(・・・・・・)」
女性陣の猛攻に、界刺は思考放棄していた。今のこいつ等に何を言っても無駄だ。というか、喋る口も塞がっている状態だ。
「・・・真珠院。界刺さんの声が聞きたい」
「わかりましたわ。それっ!」
「ぶはっ!!ふ~、ようやく口で息ができる」
「ねぇ、界刺さん?」
「・・・何?」
後ろから抱き付いている一厘が、界刺の耳元で囁く。男である界刺の肌と女である自分の肌とが触れ合う状況下、心の奥底に眠らせていた黒い感情を吐き出すように。
「・・・界刺さんのように安心できる男の人ばっかりだったらなーって思っちゃいました」
「・・・まぁ、女子校に通っている女の子からしたら、男はそういう風に見えるのかもね」
「・・・何で、男の人って私達をそういう目でしか見ないのかな?しかも、時には無理矢理・・・何人も・・・。鬼ヶ原じゃ無いけど、私まで男嫌いになりそう」
「・・・もちろん、全員がそうじゃ無いよ?君にだって、男の友達とか仲間とか居るだろ?・・・わかってるとは思うけど」
「それは、わかってます。でも・・・(ブルッ!)・・・やっぱり界刺さんがいい。界刺さんなら、安心できます。私を・・・ちゃんと見てくれるってわかってるから。
界刺さんなら、私を辱めることは無い。界刺さんなら、私を恥辱に貶めたりはしない!こうやって、肌と肌とが触れ合っている時だって!!」
「・・・男としてどうなんだろうな、それって?つーか、俺も狼って言われればそうだしなぁ・・・。前にも、別の場面で言った気がするけど」
「男とか狼とか、そんなの関係無いです!界刺さんは界刺さんです!あんな、下衆な男達とは違う!!あなたは、安心してこの身を委ねられる・・・そんな界刺さんなんです!!」
「・・・『界刺さん』って、何かの生き物の種類を表す名前かよ?」
「フフッ、そうかもしれませんね。『界刺さん』らしい返答ですね。あぁ~、やっぱり『界刺さん』っていいなぁ。このまま、お持ち帰りしたいなぁ・・・なんて。フフッ」
女子校に通う宿命か、どうしても異性と触れ合う機会が少ない。一厘の場合は、まだ159支部に足を運ぶためにマシな方だったが、それでも彼女なりに思う所があるようだ。
「確かに、一厘先輩のお気持ちも理解できます。私も、異性の方とこうして触れ合うこと等、今まで全くありませんでしたから。
触れ合うのが得世様で無く他の殿方であれば・・・もしかしたら私も一厘先輩と同様の思いを抱いたのかもしれません」
「女子校、しかも天下の常盤台というのもあるよね。専用の送迎バスとかもあるし。どうしても、外部との接触が限られて来る面もあるかもね」
「そういえば、男子校から見た女性というのはどんな感じなの?」
「そうだなぁ・・・。華憐達の感性とは違うかもしれないけど、女に飢えている部分はあるね。やっぱり、男って狼だし。男子校だと、出会いそのものが少ないし」
「・・・そう考えると、やっぱり界刺さんって貴重なのかも。こうやって、気兼ね無く触れ合える男性なんて中々居ないと思うし」
「俺は珍獣扱いか?椎倉先輩は、俺達を“座敷童”扱いするし。ったく、人を何だと思ってんだ?」
「“変人”」
「ウソツキ」
「“詐欺師”」
「・・・・・・」
「「「自業自得」」」
「・・・勝手に心の中を読んでんじゃ無ぇよ」
見事に自分の思考を読まれた。それだけ、ここに居る少女達(今の回答は一厘・真珠院・苧環)が界刺得世という男を“見ている”ということ。
それがわかったから、界刺も内心では苦笑いを零していた。そして・・・ふと思った。だから、実行する。
「そうだ。俺が、自分の能力を『光学装飾<イルミネーション>』って名付けた理由を教えてあげようか?」
「えっ!?き、聞きたい!聞きたいです!!」
「み、耳元で大声出すなよ、リンリン」
「そういえば、私も聞いたことが無いですね。界刺さんが、どういう意図でその名前を付けたのかを」
「私もだよ、バカ界刺」
「だって、誰にも言ったこと無いもん。んふふっ、君達が初めてだ。俺の初めてを、君達に贈るよ」
「得世様の初めて・・・。光栄です!!」
「『<イルミネーション>』か。“光の装飾”っていう意味だから、そのままでも通じるけど・・・界刺さんには別の意図があるのね?」
「その通り」
女性陣の好奇心に満ちた視線を浴びる中、界刺は“あの”星空を思い出す。己が人生の転機となった、あの赤毛の少女との出会いを。
「銅と明星、女神に象徴されるは金星。意味するものは、愛、調和、芸術。混沌とした世界に存在する真理を見通す偉大なる輝星。故に少年よ、君に光あれ」
「得世さん・・・!!それって・・・!!」
「あぁ。桜が思っている通りだよ。俺の人生を変えた・・・生涯決して忘れることの無い言葉だ。昔、クソムカつく赤毛女に言われた偉大な言葉さ」
ボロ雑巾のような状態になった時に現れた赤毛の少女。そう、それは満点の星空の下で語られた言葉。界刺の在り方を決定付けた、偉大なる言葉。
「リンリン?涙簾ちゃん?覚えているかい?」
「は、はい!」
「もちろんです」
「他の皆にはイマイチ不明瞭かもしれないけど、ようはその赤毛女は俺に『真理を見通す目がある』って言ったのさ」
「真理・・・ですか?」
「そう。真理。本当の姿。本当の在り方。嘘偽りの無い裸の有り様。それ等を見通す力が俺にはある・・・そう言ったんだよ、その赤毛女は」
界刺の言葉に、一厘・真珠院・水楯・形製・春咲・苧環は無意識の内に己の濡れた胸へ手を置く。
いずれも界刺によって自分の本性を曝け出し、同時に界刺の助力で自分の在り方を見出す切欠を得ることができた。そんな人間ばかりだから。
「そして、『<イルミネーション>』という言葉には“本質に光を当てる”という意味がある。どうだい?“光の装飾”という意味とも合わせて、ピッタリな名前だろ?」
「・・・すごいピッタリです。これ以上無いって言うくらいの、ベストな組み合わせです!!」
「『<イルミネーション>』に、そのような意味があったなんて。世の中には、まだまだ私の知らないことが一杯ありますね~」
「界刺さんにふさわしい名前ですね」
「あのアホ界刺がそこまで考えていたなんて・・・。ビックリだよ」
「その赤毛の少女との出会いは、得世さんにとってすごく重要なことだったんですね・・・」
「私も、そんな偉大な光に照らされた1人かしら?フフッ・・・」
一厘・真珠院・水楯・形製・春咲・苧環は、各々なりの反応を見せる。総じて言えるのは、『光学装飾<イルミネーション>』が界刺にふさわしいと確信したことか。
そんな偉大な光を浴びることができた自分達の、何と幸運なことか。それは、運命という名の大きな流れ。偶然という名の赤い糸。
少女達は、今一度胸に抱く。界刺得世という男に巡り会えた運命を、界刺得世と共に居るという不確定な未来を強く、ひたすら強く握り込む。
絶対に離さない。何があろうと、愛しき人の手を掴み続ける。そう、心に誓いの旗を立てる。
「・・・よし。ちょっと、君達。俺にしがみ付け。但し、俺の浮き輪を外してな」
「「「「「「「んっ!?」」」」」」
そんな時に聞こえて来た界刺。その意図不明な言葉に?マークを浮かべながらも、言われた通りに界刺の体にしがみ付く女性陣。
「・・・・・・」
「・・・え~と、これに何の意味が・・・」
「珊瑚ちゃん!!俺達を“固めろ”!!」
「は、はい!!」
「「「「「!!?」」」」」
真珠院の『念動使い』によって、この状態に固定される7名。その状態を確認し、碧髪の男はニヤリと笑みを浮かべる。
「・・・お前等ばっかり楽しむのは不公平だからな。んふっ・・・俺は幸せモンだな。
何せ、麗しき美少女達がこうやって“人目も憚らず”に俺へしがみ付いてくれるんだからよ」
「「「「「「!!!!!」」」」」」
界刺の言葉を受けて、ようやく自分達がしていることの気恥ずかしさを自覚する女性陣。
そして、気付く。『光学装飾』によって、このプールにも人が入って来たことを界刺が看破していることを。
「いやぁ、リンリン・桜、涙簾ちゃんの胸が俺の背中に密着してるし、俺の正面には形製が、脇腹には珊瑚ちゃんと華憐が抱き付きながら慎ましい胸を押し付けている。
俺の手は珊瑚ちゃんと華憐の背中に触れているし。腕を巻き付けている関係から顔と顔の距離も近いんで、皆の荒い吐息が掛かってくるし。
女の香りってヤツも、プンプン匂って来る。その上、君達の鼓動が波打っているのも感じるし。役得、役得」
非情にも、恥ずかしさに顔を赤くする少女達に迷い無く追い討ちを掛ける界刺。容赦しない時は、とことん容赦しない男である。
「ま、まずい!!こ、こんな所を誰かに見られたら・・・!!」
「一厘!!あなた、『物質操作』による感知はどうしたの!?」
「あ、あれは頭が痛くなるから何回も使えないのよ!!」
「し、真珠院さん!!早く『念動使い』を!!」
「言っとくが、これは俺に対する恋の真剣度を試してる側面もあるんだぜ?誰に見られようとも、俺への恋を貫けるかっていう・・・その覚悟をな?」
「「「「なっ!!?」」」」
「・・・!!!私は・・・私は、どのような時もあなた様への恋を貫く覚悟を固めております!!いいでしょう。その試練、承りました!!」
「「「「えええぇぇっ!!!??」」」」
「私は界刺さんへの愛を貫くために、命を懸けてこの試練に挑みます」
「「「「重い!!!」」」」
真珠院と水楯が宣言するやる気満々の声に、形製・苧環・一厘・春咲は動揺の色を隠せない。
「ほらっ。君達が苦手・・・という程じゃ無いけど気にする男達も入って来たぜ。うまい具合に、こっちへ視線を集中してやがる」
「「「「なっ!!?」」」」
それは、嫉妬の視線。6人の美少女にしがみ付かれている男に対する妬みの視線。その次にあるのは・・・しがみ付いている美少女のスタイルや顔に対する好奇の視線。
界刺が言う所の・・・狼。男の本能として、水着姿の美少女達にそそられるのは致し方無いとも言える。
「な、何か恐いんだけど!!な、何を考えてこっちを見てんのよ!?」
「そりゃ、リンリン達に対する“アッチ”系のことじゃない?男は狼だからね」
「つまり・・・発情みたいな!?」
「それに近い感情を抱いているんじゃないかな?もしくは・・・それ以上?」
「なっ!?わ、私はあんな狼達に体を許すつもりは無いから!!あ、あなたも同じ思いよね、一厘!?」
「そ、そうよ!!私が体を許すのは界・・・ッッッ!!!!」
「・・・まぁ、華憐達は揃いも揃って麗しい美少女だし。人気者は辛いね」
「こ、こんな時に褒められても全然嬉しくないんだけど!!」
「な、何か私達だけじゃ無くて、得世さんに対しても恐い視線を向けていませんか、あの人達?」
「そりゃあ、俺に対する嫉妬の視線だろうね。まぁ、俺には心強い麗しき美少女達が付いているからね。安心して、あいつ等の視線を無視することができるよ。んふっ!」
「しまった!!逆手に取られた!!も、もぅ~!!界刺さんったら!!」
「大丈夫ですよ、得世様!!この
真珠院珊瑚が、あなた様をお守りします!!」
「・・・私もですよ、界刺さん?」
「いや~、こりゃあ珊瑚ちゃんと涙簾ちゃんがリードしているのかな?他の4人は、然程真剣じゃ無かったってことか。んふふっ!」
「「「「~~~!!!」」」」
絶対にからかっている。からかって楽しんでいる。それがわかっているのにうまく反論できないのは、惚れた弱みか。
「・・・わかった。わかったよ、バカ界刺!!ようは、周囲の視線なんか無視して君にしがみついていればいいんだろ!?」
「何か、俺が無理矢理にさせているみてぇだな。俺は、男共の視線に慣れていない君達を思って、断腸の思いでこういうことをしている側面もあるんだぜ?」
「う、嘘臭い!!く、くぅ~!!も、もう、どうにでもなれ!!」
「それは、自分に跳ね返って来る言葉だね、リンリン?」
「ね、ねぇ。せめて、水の中から出ない?ここじゃあ、あなたを守るにしたって電撃すら碌に使えないんだけど・・・」
「逆境を乗り越えてこそ、意味あるものが掴める。ここは、華憐の踏ん張り所だな」
「・・・・・・もう、いいです。何言ったって反論されそうだし。あなたに、この身を全て委ねます」
「桜・・・。自分の身は自分で守れよ?俺を守りながら。いいな?」
「「「「もう、いい加減にして!!!!!」」」」
「んふふっ。きっと、俺は君達が苦手っぽくしている狼なんかよりよっぽど面倒な男だよ?
だから・・・“その手”のことが身に起こりかけたら、俺のことを思い出すといい。『“あの時”に比べたら、こんなモンどうってことは無い!!』って思えるだろうから」
「「「「ひ、卑怯だ!!!」」」」
効果抜群、タイミングばっちしにキメる碧髪の男に歯噛みしまくりの女性陣。だが、そんな男に心を奪われたのだ。
そして、向こうは放そうとして放さない。こっちが根負けするギリギリまで突き放す。そして、最良(最悪)のタイミングで餌をぶら提げるのだ。
タチが悪い。悪過ぎる。確かにこの男を相手にしていれば、そんじょそこらの狼程度、何てことは無いと思えてしまう。思わされてしまう。
辱めを受けるのなら、前もってそれ以上に辱める。恥辱に貶められるのなら、前もってそれ以上の恥辱を与える(別の言い方をするのなら“調教”とも言う)。
理屈の上では理解できなくは無いが、やられる側にしたら堪ったモンじゃ無い。だが、これが界刺なりの気遣いとも気付いているので、どうしても反論できない。
だから、自分達に残された選択肢は1つしか無い。碧髪の男の言う通りにしがみ付くしか道は無い。最初から判り切っていたことだった。
「こうやって、麗しき乙女達に抱き付かれながらプールに居るってのはいいモンだな。これで、女性不信状態で無ければどれ程幸せだったことか!つくづく惜しい」
「アホ界刺が女性不信状態じゃ無かったら、今頃はボコボコにしてたけど?」
「んなことはわかってる。そうじゃ無いから、こんな軽口が言えるんだしな。んふふっ!」
「ハァ・・・。こうなったら、慣れるしかないか。私も、何時までもそういう視線に怯えてちゃ駄目なんだし!!」
「確かに、一厘の言う通りね。こうなったら・・・この恥ずかしい機会さえも利用してやるという気概を持たないと!!」
「その意気だ、リンリン。華憐」
「何だか、また得世さんに乗せられているような気が・・・」
「そんな気はこれっぽっちも無いよ、桜?(真顔)」
「私は、あなた様と並び立てる程に成長する!!そのためには、これしきの試練で弱音等吐いてはいられません!!」
「その時は、俺は珊瑚ちゃんの何歩も先に行ってると思うけどね」
「界刺さん・・・。そろそろ抑えましょうか・・・!!?」
「ビクッ!!・・・涙簾ちゃんが恐~い。暴力反対―い」
そんなこんなで時刻は進み、昼ご飯の時間と相成った。それまで、約1時間もの間界刺にしがみ付いていた女性陣。その顔は、(水楯以外)憔悴し切った様相を呈していた。
continue…?
最終更新:2012年08月07日 21:12