436 :■■■■
対馬「はぁ・・・はぁ・・・」
闇城「どうしたんだ? 対馬ちゃん。そんな息を乱して。まるでフルマラソン後の選手だぞ」
対馬「あの・・・実は、二人で・・・」ハァハァ
対馬「二人きりで話したいことがありまして」ゼエゼエ
闇城「俺なんかとか? 別にそっちがいいのなら、構わないけど」
対馬「じゃあ、近くの公園で・・・」
☆ 再びとある公園
闇城「それで? 話したいことって?」
対馬「いや・・・あの・・・そこまで、しっかり決めてきたわけじゃないんですが」
対馬「昔話が・・・したいな、なんて」クス
闇城「さるかに合戦とかか? ちなみに俺は猿派だが」
対馬「違いますよ! そういうことじゃなくて、そういうことじゃなくて」
対馬「私と闇城さんの・・・あの時の話です」
437 :■■■■
闇城「あぁ・・・なるほど」
闇城(そんなに俺の心をえぐりたいのか・・・見かけによらずエグいことを)ズーン
対馬「どうかしましたか?」
闇城「いや、なんでも」
対馬「ふふよかった。拒まれるかと思っちゃいました」エヘ
闇城(本当はそうしたいところだが、そうもいかんだろ。そんな顔で迫られちゃ、さ)
闇城「と、言っても俺はその時のことよく覚えていないんだよな」
闇城「なんせ、人助けだ―なんていって目につく者かたっぱしから関わっていったから」
闇城(今思えば本当に不審者だよ、俺)
対馬「むー。ということは私も助けたその他大勢の中の一人ってことですか」プゥ
闇城「いやいや! そういうわけでは・・・」アセ
438 :■■■■
対馬「でも、今は違うからいいです」
対馬「今、闇城さんにとって私は・・・『ただの助けた人』じゃないですよね?」
闇城「ま、まぁな。こうしてちょくちょく会ってんだ。今は親友というか可愛い後輩というか・・・そんな感じだろ」ボソッ
対馬「そっか・・・後輩・・・か」
対馬「まだまだ遠いなぁ」ボソッ
闇城「あ、一つ思い出したぞ! 確かあの時はまだ対馬ちゃんは小5だったな」
対馬「ええ・・・そうですね。ちょうどその時、一人で違う学区まで遊びに行ってたんです」
対馬「だけどその時はまだ地理の知識も浅くてすぐ迷子になっちゃいました」
闇城「ああ・・・だんだんと思い出してきた。そうだな、そこがファーストコンタクトだったってわけか」
対馬「もう、思い出すのが遅いです!」
闇城「スミマセン」
439 :■■■■
対馬「そうだ。どうせだから私の能力で過去の再現でもしてみますか」
対馬「それならもっと早く闇城さんも思い出すかも」パン
闇城(対馬ちゃんの手のひらでホログラムが動いている・・・? そっかそういう能力だっけ)
対馬「そう、一人途方に暮れている私に闇城さんが近づいてきたんです」
対馬「最初は変質者かと思いました。だって全身タイツで変な仮面かぶってるんですもん」クス
対馬「私は思わず怖くなって逃げ出しちゃいました」
闇城「それはそうだろうな。というか今は俺がこの場から逃げ出したい」ズーン
対馬「でも逃げ出しているうちにどっかに躓いて転んでしまいました。あはは、あの時は本当に怖かったですよ。動けない上に後ろから変な人がジリジリと距離を詰めてくるんですから」
対馬「でも、そんな変な人は、私がどこから来たのかだけ聞くと、背中を差し出してきてくれました」
闇城「・・・」
対馬「私はその変な人におぶわれて無事もとの学区に戻れたんですよ? 思い出しましたか」
闇城「あー・・・うん。ぼんやりとだけど」
闇城(対馬ちゃんにはいい思い出なのかもしれんが俺にとっては地獄だ・・・)
闇城「さすがに、今は迷子にならないよな?」
対馬「もう、さすがに中学2年ですよ? なるわけないじゃないですか」
闇城「だよな。あはは、あはははは」ガシガシ
440 :■■■■
闇城「最近の調子はどうだ? 達者でやってる?」
対馬「うふふ。なんですかその唐突な話題転換は」
闇城「いや、昔話もいいけど今の調子も気になってだな・・・」
闇城(そう、過去はもう水に流させてくれッ!)
対馬「そうですね・・・最近はこの能力の成長に日々を費やしています」
対馬「トレーニングということで幼稚園に行って一人劇場だってしてるんですよ?」
対馬「これが意外と子どもに受けてですね」キラキラ
闇城「へえ、俺も見てみたいな」
対馬「さっきやった再現と似たようなものですよ」フフ
対馬「今はまだこの規模ですが、いつか高位の能力者になってもっと壮大な劇場を作り上げてみたいんです」
対馬「それで、いつかはたくさんのお客さんを呼んで・・・大きなミュージアムで・・・」
対馬「闇城さんはVIP席にご案内しますね」ニコッ
闇城「お~。それはまた大きな夢だな。楽しみにしてる」
対馬「ええ、待っていてください」
441 :■■■■
対馬「うん・・・話したいことはこれで全部です。これでスッキリしました!」
闇城「え? いいのか? まだ時間なら大丈夫だぞ」
対馬「いえお気遣いなく。それでは闇城さん・・・――――ッツ!」ガクッ
闇城「あ、おい。どうした? 具合でも悪いのか?」
対馬「いえ、そういうわけではないんですが・・・ちょっと足が」
対馬「肉離れを起こしてしまったようです・・・あはは、慣れないのに全速力で追ってきちゃったからですかね」ガクガク
闇城「――ったく、根は真面目なのにどこかそういうところで抜けてるのは対馬ちゃんらしいな」フッ
闇城「だりいけど、寮まで送ってってやるよ」
対馬「え・・・いいんですか?」
闇城「もちろん」
闇城「ただし、俺におんぶされるのが嫌じゃなかったらだけどな」フッ
対馬「・・・・・・・・・・ッ!」
対馬「――はい! 大丈夫です!」
八日目A 完
最終更新:2016年01月20日 19:43