840 :■■■■

 《はい。未だに意識は回復しない状態でして…》

 《明日に警備員管轄の病院に移すということですか?》

 《はい、はい…了解しました。では今日いっぱいは引き続きこちらで入院させておきます》

 《逃げ出す可能性? 恐らくないでしょう。目が覚めたところで動ける体じゃないですから》

 《逃げ出すといえば、あの奇妙な患者ですがね…》

 《…! ……! ……!》


 ◇ 

黒丹羽「……」

黒丹羽「……」パチ

黒丹羽「…?」キョロキョロ

黒丹羽(そうか…あのまま病院に運ばれたってわけね)

黒丹羽(…木原はどうなった…くそ、)

黒丹羽(全身を固定されてやがる)

841 :■■■■
黒丹羽(どうやら、俺の正体もバレたってわけか。この処遇を見るに)

黒丹羽(…なにか忘れてないか…?)

黒丹羽「…………」

黒丹羽(…白高城)ポツリ

黒丹羽(ッ!!!!)

黒丹羽「~~ッ!!」ジタバタ

 ギシッ! ギシッ!

黒丹羽(そうだ…こんなところで寝てる暇はないだろ!)

黒丹羽(俺の居場所は…俺の居場所は…)

黒丹羽(あいつにしか…!)

842 :■■■■
黒丹羽「…!」ハァハァ

黒丹羽(月が出ている。もう夜か)

黒丹羽(もうそんなに時間が経ってんのかよ)

黒丹羽(じゃあ…今更探そうとしたって…クソ!!)

黒丹羽(いつもそうだ。信じようとするといつも俺の手からこぼれ落ちていく)

黒丹羽(俺はいつまで裏切られつづけなくちゃいけない…)

黒丹羽(……)

 病院の一室。すでに消灯時間は過ぎているのか、明かりはついていない。
 月明かりに照らしだされた窓枠のみが鉛色を鈍く光らせている。

 黒丹羽は空を見つめていた。
 遠くへ行ってしまった彼女を追い求めるかのように虚空ばかりに視線を走らせる。

黒丹羽(…)

 一瞬、風が吹いた。
 カーテンがふわりと舞い上がり、わずかな間窓を覆い隠す。

??「よ、相変わらずの仏頂面だな」

 風が止んだかと思うと、気づけば窓際に腰をおろす男がいた。
 光を受けた銀髪が妖しく煌めき、褐色の肌は闇の中に溶け込んでいる。

 男はニヤリとばつが悪そうに微笑むと一言。

アルジュナ「忘れ物」

843 :■■■■
黒丹羽「…」

アルジュナ「おいおい、なんだよその目!もっと早めの再開に目を輝かせろよな!」

黒丹羽「…」チッ

アルジュナ「別にこっちだって戻ってきたくて来たわけじゃねえ」

アルジュナ「ただ忘れ物をそのままにしておくわけにはいかねえだろ」

黒丹羽「そうかい・・・だったら、とっとと回収して帰れよ」

アルジュナ「いや、違うんだよ」

黒丹羽「?」

アルジュナ「俺の忘れ物じゃねえ。これは黒丹羽お前の忘れ物だ」

 言うが早いか、扉が開く。
 こんな時間の来訪者、一体誰かと目を向ければ。

??「黒丹羽…」ジワッ

黒丹羽「し、ろたき?」

白高城「黒丹羽!!」ダキッ

 そこにはここにいるはずのない白高城天里の姿があった。
 どういうことだと、アルジュナに目を向ければ、いかにもな説明口調で語った。

アルジュナ「今日の朝からお前の様子がおかしかったんで帰るついでにこっそりついてったんだヨ」

アルジュナ「そしたらちょうどこの子が拐われそうになっているのを見つけちまったってワケ」

844 :■■■■
アルジュナ「せっかく見つけたお前の居場所なんだろ?二度と手放すんじゃねえぞ」

白高城「黒丹羽!私…私…!!」

黒丹羽「…悪かったな」

黒丹羽「…守ってやれなくて」ボソッ

白高城「いいよ、これから一緒なら、私はそれで…」

 これから。
 その言葉に黒丹羽は声を詰まらせる。
 すべてがバレた。これからなんてよりこの少女との距離が離れていくだけだろう。

 もしかしたら、もう二度と合うことも叶わなくなる――そんな気がした。

黒丹羽「…」

黒丹羽「これからも、俺はお前を守れない」

白高城「え、ええ…?どうして?」

黒丹羽「今日の騒動ですべてが明るみに出たんだよ。おそらく明日には警備員が引き取りに来る」

黒丹羽「首謀者は俺だ。だれよりも責任が重い。恐らく学校も退学、そのまま少年院送りが無難なところか」

845 :■■■■
白高城「そんな…!」

黒丹羽「わかっていたさ。いつかこんな日が来ることは。ただその可能性から目を背けていた」

白高城「もう会えなくなるなんて嫌だよ!せっかく無事に黒丹羽の所に戻ってこれたと思ったのに…」グスン

白高城「こんなのって…こんなのって」ポロポロ

白高城「いやだよ…」

黒丹羽「…」

アルジュナ「だったら」

アルジュナ「俺と一緒に来るか?」ニッ

黒丹羽「…何を言ってるんだ」

アルジュナ「だから俺と一緒にここを出るんだよ。大丈夫外には俺の仲間もいる。生きていくには困らないぜ」

アルジュナ「ただ、ここを出るということはすべてを投げ打つ覚悟を持つってことだ。今まで知り合ってきた奴ら、親でさえも切り捨てな」

黒丹羽「…!」

アルジュナ「居場所のためにそれだけのことをする覚悟はあるか?」

846 :■■■■
黒丹羽「端から俺はこんな所になんの思い入れもない。親もいないしな」

黒丹羽「だが、」チラッ

白高城「…!」

黒丹羽「お前はどうなんだ白高城?お前は俺なんかよりも大事なものが」

白高城「ない!!」ビシッ

白高城「そんなのない…私は何を捨てても黒丹羽のそばにいたいの」グスン

白高城「だから、ね?」ニコ

黒丹羽「…」

黒丹羽「そうか」

アルジュナ「決まりだな」ニィ

アルジュナ「よぅし。じゃあそうと決まれば実行あるのみ!夜明けまでにここを出るぞ」

アルジュナ「ここに来るのももう最後だ。心残りのないようにな」

黒丹羽「…心残りなんてあるものか」

 そう。俺にはもう隣に居場所となり得る存在がいる。
 それだけで充分だった。

847 :■■■■
 夜明けが近づき、学園都市の町並みに光が差し込み始める。
 それを一望して俺達は外へと繋がるゲートへと向かっていった。

アルジュナ「ゲートの人間は俺がプラジャーパティで抑えておく。その間に抜け出すぞ」

黒丹羽「…」コクッ

白高城「はい」コクッ

 こんな街になんの思い入れもない。
 しかし被るべき罰を放棄して逃げ出すのはすこしだけ後味が悪かった。

 けれど、

白高城「外国か~。私行ったことないんだよね。黒丹羽はある?」フフッ

 これから先のこと。
 そこには光が広がっている。その光を見ていると、これでよかったのだと確信が持てた。

 俺はこいつの傍にいたい。
 だからこの選択に何も後悔なんてしない。

 ゲートを抜けた先、見慣れぬ世界が広がっている。その向こうにはちょうど朝日が登ろうとしていた。

黒丹羽「ったく、眩しいったらありゃしない」

黒丹羽「けど…悪くないな」フッ


 この朝日のようにまばゆい希望の道を、俺たちは共に進んでいくだろう。



 これからも――ずっと。




 27日目  完

848 :■■■■
アルジュナ△

849 :■■■■
余談

黒丹羽どっかで戦闘不能になるだろと思って高をくくってたら秒数安価をくぐり抜けて最後まで生き残りやがった…
ヒナミンほど秒数安価運は悪くなかったということか

 >>783
30%の確率で戦闘不能
 >>803
40%の確率で戦闘不能
 >>806
30%の確率で戦闘不能

さらに白高城
 >>783
20%の確率で重症
 >>800
30%の確率で木原にムッコロされてた
 >>837
50%の確率で追加イベント発生せず。消息不明のまま

意外と運がいいのか…?
それを称えるということでこのペアはハッピーエンドでゴールインにしました
アルジュナ帰国イベントの消化も兼ねまして

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最終更新:2015年12月16日 21:12