【名前】アイザック=J=アンタナス
【性別】男
【所属】魔術
【能力】「絶対退避(セフティーミス)」、「運命神の使者」、「ロムヴァの侵攻」。
【能力説明】
リトアニア神話はかつて十字教による宗教侵略に遭った。リトアニア神話における主要な神格であるピクラスやパトリムパスは悪魔と見做され、信望者達は十字教へ改宗させられた。同じく主要な神格であるペルクナスを奉る神殿も十字教勢力によって取り壊される憂き目を見た。
しかし、運命神プラアムジスにおいてはその存在を悪魔に貶められる事も無ければ物的損害も存在しない。何故ならばプラアムジスはペルクナスを筆頭に主要な神格達のような明確な特徴を世に広めていなかったからである。
プラアムジスは運命・宿命を支配する最古の神であり、宇宙や神々を含めた万物の運命をその手に握っていたが自らが表舞台に立つ伝承は無い。
創世神話に語られる洪水伝説においてもプラアムジスは怪物である巨人や胡桃、精霊などを地上に使わしたが自身は決して出張る事をせず舞台の裏側に居続けた。
故に全ての運命の手綱を握る最古の神であるにも関わらず自身の明確な特徴を世に広めず、土着の神ながら外来宗教である十字教の宗教的弾圧を回避した。
リトアニア神話最古の運命神プラアムジスの伝承を利用する魔術「絶対退避(セフティーミス)」はアイザックを『安全圏』に退避させる再調整魔術である。
万物の運命を掌に収めたプラアムジスが振るう権能の特徴を強調した魔術であり、降り掛かる様々な災厄から反射的にアイザック自身を災厄の範囲外=『安全圏』に瞬間移動させる。この時『必中』や『感染』などの対象から除外される加護が付与される。
これは世界を直接動かす全能神トールや魔神オティヌスが用いる原理とは違う。十字教系の魔術師は『天使の力』を別位相(『天界』)に干渉して呼び出す事で活用しているが、アイザックの場合はプラアムジスが棲まうとされる位相『天界』を的、自身を矢、魔術「絶対退避」を弓と見立て瞬間移動を実現させている(イメージとしては的である『天界』目掛けて矢であるアイザックを弓である魔術「絶対退避」に番えて射るという図式)。
無論位相『天界』に飛ぶわけでは無い。『天界』は現実世界に重なるフィルターとなっており、魔術「絶対退避」によって放たれたアイザックは『安全圏』たる的となる『天界』の一地点付近に在る現実世界に瞬間移動するという構図である。
これは位相を改変しているわけでは無い。位相を的に見立て的付近の現実世界へ瞬間移動する再調整魔術である。だが、とにかく使い勝手がよくないのが欠点である。
まず退避の基準として災厄が降り掛かった場合に反射的に自動発動するという『反射』に使用が限られてしまっている。
次に、同じく退避の基準として退避する先の選定だが予め『安全』と定めた地点か災厄の規模から自動的に算出した『安全圏』かに瞬間移動する形となる。
前者の場合、予め定めた『安全圏』が災厄の規模によって『安全圏』に入らない場合瞬間移動できない欠点が存在する。よって、必然的に予め定める場合の『安全圏』はより遠方とならざるを得ない。
後者の場合、一見すると「敵の攻撃の範囲外に瞬間移動し速攻で反撃できる」と見做され前者より使い勝手が良いと判断されるかもしれないがこちらの方が使い勝手が悪い。
魔術「絶対退避」の精度は『安全圏』までの距離に左右され、この数値が大きければ大きいほど精度は増し、逆に小さければ小さいほど精度が悪くなるという変わった性質を持つ。
これはリトアニア神話の神々に願掛けする場合、願掛けする為の貢物の重さと運んできた距離の乗の数値が大きいほど願掛けの強度が増すという独特の信仰が影響している。
なので、通常戦闘で後者の瞬間移動を発動した場合精度の荒さによって算出した『安全圏』からブレる事が少なくない。退避した筈の災厄に巻き込まれる可能性は決して低くないのだ。
よってアイザックは専ら前者の、しかもより遠方に定めた『安全圏』に瞬間移動するという使用方法を用いる。
これがどんな死地からも必ず生き延びているアイザックの魔法名にも繋がっている。もっとも、必要な場合は後者を使用する場合も存在するが。
ちなみに瞬間移動の具体的な発動条件だが、アイザックにとって脅威になるもの+当たるのが確定しているのであればどんなものでも反応する。
つまり、魔術「絶対退避」を『行使中』アイザック『当人』に攻撃の類(呪術でも罠でも何でも)が『確実』に当たるその直前に瞬間移動が発動する(後述の巨人に至るまでの魔術と併用している場合、殻を破壊しアイザック『当人』へ攻撃が『確実』に届くその直前に発動する)。
よって、どんなに小さな攻撃でも確実に当たりそうになると瞬間移動が発動するのでやはりというか総合的に使い勝手が非常によろしくない。

魔術「運命神の使者」とは洪水伝説においてプラアムジスが使わした怪物たる巨人や精霊に基づく魔術。風の巨人『ヴェーヤス』、水の巨人『ヴァンデニス』、虹の精霊『リンクスネミー』らに分かれる。
魔術を発動する始点となるのは口の中に入れた胡桃。予め切れ目を入れている胡桃を噛み切ると同時に魔術が発動し、菫色の風もしくは琥珀色の水がアイザックの周囲に出現する。
この状態でも出現させた風属性魔術や水属性魔術を操る事はできるが規模は控えめ。真価は胡桃を噛み切った後の動作によって現れる。
口内から胡桃の殻を吐き出すと殻はすぐさま巨大化しアイザックを覆う。殻の周囲に風もしくは水が集い、爆風と爆圧を操る菫色の風の巨人『ヴェーヤス』か大渦と波涛を操る琥珀色の水の巨人『ヴァンデニス』を形作る。
伝承では『ヴェーヤス』と『ヴァンデニス』は互いを嫌っており、度重なる二人の死闘によって地上が壊滅的な打撃(=洪水伝説)を被った事から『ヴェーヤス』と『ヴァンデニス』を切り替える度に力が増幅する仕様となっている。
巨大化した胡桃の殻はさながら巨人という名のロボットの中心部に相当するコクピット。殻の中に篭るアイザックは巨人の知覚機能を通じて殻の内側に反映される映像や音、魔力の流れなどから戦況を判断する。伝承から殻の防護力は折り紙つき。殻の中に人を数人搭乗させる事も可能。
運命神の使いとして選ばれた虹の精霊『リンクスネミー』は伝承では死者を蘇生したと見受けられる逸話を持つ。
これをアイザックは「死者の死因を取り除く事で蘇生させた」と解釈した。古より精霊や虹が有する性質とも適応させており、『風』と『水』の魔術的記号によって生み出した虹を周囲一帯へ円状に拡散させる。
これにより虹を浸透させた地域に『眠っている』死因を習得し、光線としてアイザックが放つ虹の帯を受けた対象に死因を体感させる呪術魔術として行使する。
簡潔に纏めると精神に作用する事で対象の身体に死因が齎す肉体的損傷を実現化する魔術。精霊を操る魔術や虹を操る魔術に聡い魔術師と組めば、呪術を実際の現象レベルに引き上げる事も、対象を草木に広げ死因となり得る要因を“取り除く”事も可能だろう。

魔術「ロムヴァの侵攻」とは言うなれば唯一神教を弱体化させ土着信仰の多神教を強化する魔術である。リトアニアはヨーロッパにおける最後の異教徒国家と称されるほど様々な信仰が存在した。
十字教が最大宗派となって以降も土着信仰は根強く残っている。リトアニアの十字架のデザインには土着信仰が反映されているものが数多い。
そして20世紀後半になると多神教信仰(土着信仰)の復活を声高に叫びながら活動する運動が活発化し始める。その名はロムヴァ運動。
アイザックは十字教勢力の反対を受けて尚国家にその存在を認めさせ、その運動が世界中に広がっている歴史的事実を基にリトアニア神話の土着神にして数多の神々の運命を支配する最古の運命神プラアムジスの権能『宿命』と搦めながら術式を組み上げ、ロムヴァの名を冠する魔術として完成させた。
アイザックが首からぶら下げる、多神教を取り入れたデザインとなっている八端十字架(東西南北及び北西南西南東北東方向へ架の端が伸びる十字架。十字架の中心の円は『天界』を現し、8つ在る架に纏わり付く螺旋は『宿命』を意味する)型霊装『アニミズム』を天に掲げ呪文を詠唱する事で魔術は発動する。
元々はアメリカに住むインディアンが唯一神教が掲げる唯一神をあくまで多神教の内の1つと定義するのと類似し、十字教の力の源となっている唯一神の権能を様々な権能に分かれる多神教のように分割・弱体化させる『宿命』を創造する事を目指した魔術である。
具体的には、魔術が発動するとアイザックの後背に螺旋する光線を架に宿しながら輝く八端十字架が顕現し、十字架から放たれる螺旋光線を浴びた魔術師達は螺旋光線に纏わり付かれる。
その魔術師が唯一神教を基に魔術を行使している場合魔術発動の原動力となっている魔力の精製方式に不具合を起こさせ、該当する魔術師に魔力循環の暴発を引き起こさせる。
逆に多神教の魔術を行使している場合魔力精製に必要な生命力を大幅に活性化・増強する効果を該当する魔術師に与える。勿論アイザック自身も対象に含まれる。
範囲は最大半径5キロ四方。魔術の仕様上殻の中に閉じ篭る『ヴェーヤス』と『ヴァンデニス』を行使している間は殻の外にいる対象へ螺旋光線を放てない。
また、唯一神教は多神教の神々を邪悪、つまり悪魔に貶め弱体化させる事が多いがリトアニアでは悪魔という存在は決して邪悪なものでは無い。
リトアニアの民家には幸運や幸福の象徴として悪魔の像が置かれており、創世神話では神の天地創造を悪魔が手伝うなどどちらかと言うと人間に悪戯を仕掛けたり人間を手助けする性質を有する。
魔術「ロムヴァの侵攻」では火の点いた煙草を咥えながら別の呪文を詠唱する事でリトアニアに古くから伝わる万物に関わる悪魔『ヴェルニアス』を使い魔として召喚する。体は煙草の煙によって構成されるので煙草の火が消えると『ヴェルニアス』も消滅する。風属性魔術にも弱い。煙だが物を持ったり殴ったりする事ができる。
運命神プラアムジスと類似する性質を持つ『ヴェルニアス』は螺旋光線を浴びる事で悪魔の力を減衰させる専用術式への耐性を獲得し、アイザックから貢がれる酒を口に含む事で強力無比な灼熱の赤色光線を撃ち放つ。
リトアニアの御伽噺では悪魔は狩人に必中の銃を与えると信じられ、アイザックはその逸話を悪魔が持つ魔力と捉えて術式を組み上げており、『ヴェルニアス』が放つ熱光線や対象を酩酊状態に追いやる呪術には自動追尾効果が付与されている。
【概要】
非十字教系の魔術結社『異なる力(ヘテロダイン)』に所属するリトアニア出身の魔術師。30代後半。魔法名『死に恥を晒すくらいなら生き恥を晒せ(Pudor845)』。
組織において有数の実力を持ちながら基本的に『現地における偵察要員』または『敵対組織調査の為の斥候要員』という役割に甘んじている。
アイザックは『異なる力』へ加入する以前から如何なる戦場・死地においても必ず生き延びてきた。それはひとえに魔術「絶対退避」によるものであるが、言い換えれば酒を酌み交わし友誼を結んだ仲間達が奮戦する戦場から一人だけ退避する事と同じであった。
仲間達は死地から必ず退却できるアイザックに様々な言伝や遺言を頼んだ。結社の為、仲間の為、部族の為、家族の為、己が胸に刻んだ魔法名の為、理由は様々だがアイザックへ言葉を伝えた者達は誰一人としてアイザックを妬まず、笑顔でアイザックを見送った。
アイザックは死んでいった仲間達が残し、遺したメッセージを伝える伝達役を忠実にこなしてきた。一人だけ尻尾を巻いて逃げる醜態を晒していると嘯かれ、生き恥を晒し続けてきた男は魔術「絶対退避」以外の力を求め、代々家系に伝わる多神教魔術の完成に尽力した。
数世紀前に十字教勢力がリトアニアの多神教を侵略して以降、秘密裏に脈々と受け継がれてきた唯一神教への反抗魔術の基盤。
リトアニアの多神教神話や魔術「絶対退避」の基幹となっている運命神プラアムジスの伝承は各地に散らばっており、その全容を把握し術式化する為には数世紀もの長い時間が必要であった。
そして、ロムヴァ運動による多神教復活という歴史的事実が最後のピースとなり、アイザックの代で「運命神の使者」及び「ロムヴァの侵攻」が完成した。
丁度この頃『異なる力』に加入したアイザックは、ボスであるセルウィー=アウスウェイトの個性に面食らいながらも以前までの役割が性に合うというか落ち着くという事もあって原則偵察&斥候要員として活動している。
ボスのセルウィーが操る精霊魔術や同僚のソフィ=エッジクラストが操る虹魔術へアイザック自身が操る魔術を組み合わせる事でシナジー効果を生み出す事に成功している。
魔術の特質と活動内容から、他の魔術結社に所属する魔術師と顔見知りである場合が存在する。
最終的に尻尾を巻いて逃げるのと同義の行動を行うので、それ等の魔術師からは大抵「臆病者」と蔑まれている(『異なる力』内においてもアイザックの本当の実力を知る者はいない。片鱗程度ならば協力して魔術開発を行ったセルウィーやソフィは感じ取っている)。
戦場から必ず生き延びて帰還する事を命題に置いているアイザックにとって臆病者などという蔑みは全くもって耳に痛くない。
そもそも、アイザックとしては偵察任務において最も重要な事は情報を大量に入手する事では無く少しでもいいから確実な情報を必ず持ち帰る事だと考えている。
情報というものが魔術師の戦闘において勝敗を左右する分水嶺になる極めて重要な要素である事をアイザックは知っているのである。
アイザックが偵察&斥候要員として活動する際まともに戦闘しないのもこれ故。精霊魔術や巨人化前の属性魔術程度なら護身の為に偵察&斥候任務でも使用する事はあるが、巨人化にまで至る魔術や「ロムヴァの侵攻」等は斥候任務においてまず使用しない。
殲滅任務では無くあくまで偵察任務をこなす以上余分な情報を一切敵側に与えないようにしているのだ。
言い換えれば瞬間移動魔術は(使い勝手がすごく悪いから)敵側に知られても別に構わない。とはいえ、例外的に『戦闘要員』として活動する際は『異なる力』有数の実力を拝む事ができるだろう。
多神教世界観を根本から否定しない程度であれば科学の恩恵を利用している。普通に携帯も使うし、科学技術で増産される色んな銘柄の酒や煙草も嗜む。最近は無人偵察機ドローンを入手した。偵察活動に有効活用できないか現在思案中である。
【特徴】
176センチ70キロ前半。肩まで届く白生地の布に黒の光条が幾つも描かれているカフィーヤをイカールという黒色の輪で抑えながら頭に掛け、その上から前方に鍔がある白基調のスポーツ用帽子を被る。当地を来訪した際に気に入った衣装である。
茶髪で多少パーマ掛かっている。楕円形型のサングラスを掛け、顎下に無精髭を生やす。下唇の真下に黒子が2つ真横に連なるように存在する。頬は若干ふっくらしている。
灰色のアンダーシャツの上から青を基調とした迷彩柄のジャケットを羽織り、下半身にはスカイブルーのジーンズ・脛の中間程まで届く黒のブーツを身に付ける。
ジャケットの内ポケットにはリキュールの入ったスキットルと、悪魔『ヴェルニアス』の魔術的記号を刻んだ葉巻をしまっている。
【台詞】
「どいつもこいつも俺に託して先へ逝きやがる。託される身にもなってみろってんだ。ったく。今日の煙草と酒の香りはやけに目に染みやがるぜ……あばよ」
「魔術を知らねぇ素人が正義感に猛って降り掛かった災厄に挑んで結果死んだ。それが無様に死に恥を晒した無駄死にだったかどうかはこれからわかる。こいつが遺した『死因という情報』を扱う俺達が採るべき方針次第でな。少なくとも俺はこいつに死に恥を晒させるつもりは無ぇ」
「生物の可聴域を借りたり自然に発生する音を『声』に変換したりして意思疎通を行う…か。まるで電波を送受信して会話する携帯みたいな魔術だな。…相変わらずだなあの娘は。俺も精霊魔術の一端を操れるが、あいつの魔術はオリジナリティーに溢れている。数世紀掛けて魔術を開発してきた俺達とは違う正真正銘の天才だ。…頭のネジが飛んでんじゃねぇか?」
「はっ?『頭の可笑しい電波娘』?そんな事誰が言うんだ。俺は言ってないぞ。……『頭が腐っておかしな電波を受信する妄想娘』?あぁ、絶対俺じゃ無いな」
「信仰を始めよう。万物が溢れる世界を見よう。古より母なる大地に棲む神々の唄に耳を傾けよう。8つの架と宿命の螺旋が交差する時、運命は反逆の狼煙を上げる!!」
「共に往こう煙の隣人。出会い、語り合い、酌み交わし、嗤う。仄かに見える御伽噺の悪戯好きよ。邪悪とは無縁の遊戯を観衆に披露し大いに興じるがいい!!」
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最終更新:2016年03月31日 01:12