【名前】朧月夜氷柱(おぼろづきよ つらら)
【性別】女
【所属】魔術
【能力】『黄泉懸り』
【能力説明】
生者と死者の境に立つ伝承を元に位相『黄泉』の力を方々で行使する魔術の総称。
黄泉の国伝承に黄泉戸喫という用語が登場する。黄泉の国の食事を摂取した者は現世へ帰還できなくなるという伝承である。
また、神道では生者の魂は不安定な代物で適切な処置を行わないまま放置しておくと体から離れてしまうと考えられている。
朧月夜はこの二つを元に幽体離脱を実現させる魔術『黄泉戸喫』を開発した。黄泉の魔術的記号を付与した食物を体内に取り込むと身体は一種の植物状態となり、意識のみでの活動を可能とする。
元の伝承を忠実に再現すれば『黄泉戸喫』を摂取した以上死ぬ筈なのだが、摂取用として敢えてそこまで再現していない。
意識体は地中を自由に移動できる。これは冥界が地中に存在すると捉えられている事に起因する。後述で使用する神の伝承から水中においても同様の移動が可能。意識体は身体とリンク(=細い『糸』のようなもの)している。
本来であれば植物状態となっている身体で魔力を精製する事は不可能かもしれない。しかし、ここで利用する伝承こそ黄泉の国においてイザナギとイザナミの間を取り持ち、生者(現世)と死者(冥界)を繋ぐ神として信仰される神ククリヒメの逸話。
巫女が神格化した存在であるとされるククリヒメの魔術的記号を『数百年に渡ってお腹の赤ん坊に刻み付けて来た』経緯の行き着く先が朧月夜氷柱である。
当初は何度やっても成功せず、性別が女でなければいけない事も合わさって流産を重ねた。ククリヒメの伝承に心奪われた一介の魔術師の狂った個人的都合を発端に一代二代では到底不可能な身体改造を数百年にも渡って人知れず延々繰り返し、その結果“完成してしまった”のである。
幽体離脱している状態でも魔力精製を可能にした朧月夜は、身体が首元からぶら下げる『生者と死者の経路』を意味する四隅突出型墳丘墓を模した霊装『黄泉比良坂』をブースターに神道において霊魂が人や物品などに憑く方式を利用し、地中や水中などを経由地に置いた上で意識体からリンク用の糸を方々へ延ばし、地や水に触れた人や物品に魔術的加護を齎す。
魔術的加護とは位相『黄泉』から引き出し、加護を受ける側に害を与えないよう加工した力。立ち位置的にはグレムリンの『投擲の槌』とトールの関係性に類似している。
再現度を上げた『黄泉戸喫』、黄泉の国に棲む鬼集団『黄泉軍』、同じく黄泉の国に棲む鬼女『黄泉醜女』、黄泉の国における主神でありイザナミの別称『黄泉津大神』、イザナミを封じ込めた経緯から道反大神という神格で呼称される黄泉の番人『泉守道者』、イザナミが黄泉の主神となる以前に黄泉の国を統治していた旧神『黄泉神』……必要な属性に応じて引き出し加工した位相『黄泉』の力を十全に行使するには原則リンクを繋げている魔術師の腕や物品の属性・耐久度に依存する。
例外的に経由地である地や水を媒介に位相『黄泉』から引き出す力を利用し朧月夜の意識体とリンクする人形を一体だけ作る事ができる。
位相から引き出す力は属性が決まっている為、必然的に意識体とリンクする人形が使用できる魔術の属性・種類も限られるしこの状態では他者に魔術的加護を与える事はできない。
他にはリンク用の糸の接続外から接触する魔術的エネルギー、具体的には魔術を構成する魔術師の魔力や地中を走る地脈・龍脈などに位相『黄泉』から抽出し手を加えた力を混ぜる事でエネルギーを『汚染』する事ができる。
神道において土は不浄と見做されており、穢れに満ちた『黄泉』の属性を以て接続外から接触してくるエネルギーを『汚染』する。
莫大な量を持つ地脈・龍脈を『汚染』したとしても次第に『汚染』は薄まり除去されるが、どちらにせよ『汚染』された状態のエネルギーと繋がる魔術師は『黄泉』の穢れに冒され血管や神経等が腐敗する。
【概要】
『
神道系出雲派』に所属する魔術師。『神童』という異名を与えられた十代中盤の巫覡。魔法名『現世と黄泉の仲人(Orcinus666)』。
とある狂った魔術師が仕掛けた洗脳魔術により代々お腹の中の赤ん坊に魔術的記号を刻み付ける事を宿命付けられた一族の成れの果て。
魔術的記号の刻印に成功した赤ん坊が成長し、身篭ればまたその赤ん坊に魔術的記号を刻むという凄惨なループが数百年に渡って繰り返されたという歴史を背負う少女。
洗脳魔術は憑依魔術の一種で、狂った魔術師の嗜好・知識等を植え付けるというもの。仕掛けられていたのは辺鄙な地域に存在した小さな祠で、そこに定期的に通う一族の慣例を利用されていた。
朧月夜が産まれた頃、祠の存在を知った魔術師
鳳輦沙耶歌&
鳳輦彪歌姉妹(奔放な沙耶歌が各地を見て回っていた際に発見した)が祠を破壊した事により朧月夜は凄惨なループから解放された。
解放時点から母子家庭だった朧月夜とその母だったが、母の方は洗脳により相当無理な生活を送っていたようで数年経った後に死去した。
天涯孤独の身となった朧月夜は、「もし自分の身に何かあった時は訪ねなさい」という母の遺言を元に鳳輦家を訪ね、ククリヒメの魔術的記号を備える魔術師として出雲派に在籍する道を選んだ。
鳳輦家の計らいもあって出雲派にて英才教育を受け魔術師としての才能を開花させた朧月夜は『神童』という異名を与えられる程の魔術師となった。
『黄泉懸り』を効率良く扱う為に四隅突出型墳丘墓を模した石造りの神殿の中で魔術を行使する。魔術の仕様上幽体離脱中の身体は無防備にならざるを得ないので神殿の結界を活用したり仲間の魔術師に護衛を依頼している。
意識体と身体は常時リンクしているのでそこを逆算されて居場所の捕捉や逆襲の危険性は当然あるが、そこは神殿に張り巡らされている結界や『黄泉』の穢れなどを有効活用し防護している。
霊装『黄泉比良坂』はブースターであると同時に朧月夜の意識体が仮にダメージを受けた(例:意識体が潜む地中が吹っ飛ばされる。余談だが、地中もしくは水中から放り出された意識体は自然消滅し、意識は身体に戻る仕様となっている)際に身体にダメージが伝播しない防波堤のような役割を持つ。
リンクを繋ぐ人間と意思のやり取りができるので、朧月夜に宛がわれる役割は専ら後方支援である。
口下手の為に以前まで親しく話せる他者が鳳輦家の人間くらいだったが、最近は自身と同じく『神童』と称される魔術師と接する機会が多くなり、比例的に『神童』の魔術師達とはくだけた会話ができるようになった(よくイジられるとも言う)。
出雲派という魔術結社に所属する事に誇りを持ち、出雲派の為に活動する事を魔術師としての活動方針の一つに掲げている傍ら、位相『黄泉』の力を扱う者として神道式の供養業務の手伝いに積極的に関わっている。
【特徴】
身長156センチ。身体改造の影響か青掛かったショートボブに黄色のカチューシャ。カチューシャにはメビウスの輪とも数字の「8」とも見える紋様が端から端まで描かれている。
右目の下に泣き黒子。福耳。起伏に乏しい体型。紺色と青色の大縞模様の作務衣の上下に下駄を履く。外見的には見るからに田舎で暮らす地味な女子。本人的にはこの格好が落ち着くそうだ。
巫覡なので巫女服も着る機会が多いが未だに慣れない模様。巫女としての正装である事は理解しつつも自分に似合わないと捉えているようだ。
【台詞】一人称「ボク」。会話も男性口調。これは代々一族に洗脳を仕掛ける構図を作った魔術師が男性であった事が遠因である。
「あぁ、うん…そ、そうだね。ボ、ボクも同意見だよ。と、ところでこの服どうかな?ちゃんと正しく着れているかな?巫女の正装なんてやっぱりボクには似合わない気がしてさ」
「どうしていっつもボクはイジられ役なんだろ?偶にはイジり役に回っても……うぅ、無理だ。絶対に舌を噛む。詠唱とかあぁいう堅苦しい定番文句ならスラスラいけるのになぁ」
「銘は『泉守道者』。性質は遮断。黄泉の主神すら隔てた番人が築いた石塁に主神の配下が抗える道理など無し。現世と冥界を隔てる黄泉比良坂の法則に則り、亡者の群れは穢れに満ちた地の底に堕ちるべし!」
【SS使用条件】
特になし