「イモリの黒焼き」が一番有名だが、イモリを魔術的に特殊な工程を踏む事で粉末状の薬にし、対象へ直接振り掛けたり、粉末を溶かした酒や水を飲ませたり、体に塗り込む事で効果を発揮する。
伝承では「イモリの黒焼き」は強制的な惚れ薬や媚薬として使用されていたが、彪歌はここにアレンジを加え愛憎逆転の呪薬『井守の粉』を製作した。
「憎しみを抱く相手でも惚れさせてしまう(=愛憎のバランスを弄ぶ)」惚れ薬に込められる『愛憎』の魔術的記号のバランスを弄るこの呪薬を与えられた者は、憎しみ(憎悪・敵意・殺意etc)を向けていた者を愛し、愛(友愛・親愛・恋愛etc)を向けていた者を憎むようになる洗脳を施される。
また、これとは別の手順で作製された『井守の粉』を身体に塗り込む彪歌は再生能力を持つようになった。
イモリは大人になって尚四肢のみならず脳・内蔵・骨さえも再生する能力を持つ。約三億年前から現代にまでその種を残し続けているイモリを魔術的に解釈し、「伝承的にイモリ自身の繁殖行動の激しさから製作した薬に惚れ薬の効能が生まれた」という経緯を踏まえ、彪歌はイモリのような再生能力を効能として人間に与える呪薬を開発した。
四肢がもげようが骨が粉々に砕かれようが脳や心臓が吹っ飛ぼうが再生するとまではいかないが、それ等未満の損傷なら高速再生していく…後述する聖具使用時を除いては。
隠岐へ流罪となった後鳥羽上皇が嵐に遭い漂着した島で世話になった老人に礼として愛用の櫛を与えた。
この老人こそが当代の鳳輦家に仕える人間であり、後に主である当代当主に献上された櫛は鳳輦家によって魔術的細工を施された。素材は竹。鬼石と呼ばれる石も組み込まれている。
天皇家が所持する高質の櫛に現代では部分的に失われてしまっている魔術技術を注ぎ込んだ結果、千年経っても替えの利かない聖具となっている。
スサノオによって救われたクシナダヒメの逸話を基にする聖具であり、出雲に残された神話伝承を下地に当時の鳳輦家秘奥の技術がつぎ込まれている。
「男性(神話の場合スサノオ)が女性の生命力を得る為にクシナダヒメを櫛にした」と解釈できる伝説を「クシナダヒメを男性の櫛に組み込んだ」と独自解釈する事で後鳥羽上皇という男性が愛用していた櫛に齟齬を起こす事無くクシナダヒメ要素を組み込んでいる。
『櫛島の湯津爪櫛』の特筆すべき特性を一言で表すならば『呪力』であろう。呪力の根源の1つである『呪い』を数多く抱いた後鳥羽上皇愛用の櫛は、古来より櫛が呪力を宿すと謳われる事も相俟って呪力を活性化させる『器』としては申し分無しの一品であった。
漂着した先で世話になった者に愛用の櫛を礼として渡す行為に呪いは存在せず、残留する呪いを時間を掛けて浄化した鳳輦家によって高質な櫛に出雲に残る神話伝承から収集したクシナダヒメの魔術的記号を組み込んだ。
聖具『櫛島の湯津爪櫛』を挿す彪歌はスサノオの加護(主に身体強化)と操る呪術のレベルを数段上げる効能を得ている。これにより呪薬『井守の粉』の効能を大幅に引き上げ、不死に近い高速再生能力と空気中に存在する水蒸気に粉末を溶かす事で実現する強力且つ集団規模の愛憎逆転呪術を両立させている。
【概要】
魔術結社『
神道系出雲派』に所属する女性魔術師。20代後半。鳳輦家の現当主を務める。
かつて鳳輦家を勘当された
鳳輦沙耶歌とは姉妹関係。一回り以上歳の離れた妹である。沙耶歌と同じく国内最大規模の魔術結社と謳われる『神道系出雲派』の全容を知る者の一人。
鳳輦家は島根県北部・西部及び隠岐諸島に影響範囲を広げる家系である。かつて隠岐に流罪となった天皇家の人間の世話に努めたり、今では島根県の無形民俗文化財に認定されている隠岐島前神楽の伝統を取り込んだりと何世紀も前から活動している。
現当主彪歌もまた神楽を舞う巫女としての技術・役割を受け継いでおり、毎年行われる出雲大社での神楽奉納にも巫女として参加している。
主に使用する呪薬の他に出雲神楽や石見神楽、隠岐島前神楽などの舞踏魔術及び葬祭魔術を高水準で行使する事ができ、神懸りなどの憑依(トランス)魔術もこなすなど鳳輦家現当主の名に恥じぬ実力の持ち主である。
当初の予定では姉である沙耶歌が鳳輦家の当主に就く筈だったのだが、個人的都合により沙耶歌は鳳輦家から勘当され、まだ10代の少女であった彪歌が当主に就く運びとなった。
一回り以上歳が離れている事もあって、彪歌は沙耶歌の人となりを上手く理解できていない。物心付く前も後も姉に抱いた印象は決まって「物の怪のような笑みを絶やさない不気味な女性」である。
自分勝手な理由で当主の座を自分に押し付けた沙耶歌に彪歌は今でも憤りを感じているが、同時に自由奔放に世界を駆け回っているであろう姉の行動力を羨ましく思ってもいる。
しかしながら、『出雲派』は持ち得る神秘性こそ魔術の力の根源と考える魔術結社である。本来であれば姉の沙耶歌や天道家の跡取りのように各地を回って神秘性の象徴である魔術を披露してしまう事態は避けなければならないと彪歌は捉えている。
なので、天道家の跡取りに対して良い印象を持っていなかったのだが最近その跡取りである
天道祓栄が出雲大社に立ち寄った際に思いがけず姉の沙耶歌の話を聞いて以降は天道への印象を改めた。
沙耶歌が今も鳳輦家を気に掛けていた事、日本津々浦々話を楽しげに語る天道の笑顔を見た事、それ等が彪歌の中で合わさり沙耶歌や天道のような人間が安心して帰られる居場所を作り、守る事こそが鳳輦家現当主魔術師鳳輦彪歌の役目なのだと悟ったのである。
魔法名『渡り鳥の還るべき居場所の家主(domum858)』。時々出雲大社に立ち寄る天道の話に興じ、出雲大社を訪れる参拝客に応対しながら彪歌は故郷を飛び立った姉の帰りを待ち侘びている。
【特徴】
身長163センチ。膝裏まで伸びる艶のある黒髪。前髪は姫カット、後ろ髪は白の檀紙を用いて束ねている。色白の肌。女性としてスタイルは抜群。特に胸が大きい。
出雲大社の巫女装束に身を包み、千早を装束の上から羽織り、髪に当主の証である聖具『櫛島の湯津爪櫛』を挿す。
気品ある清潔感を漂わせ、その微笑みは柔和というよりもお淑やかという言葉が当て嵌まる。
【台詞】一人称「あたし」。それなりに見知っている相手には下の名前で呼ばせるし自分も下の名前で相手を呼ぶ。
「籠の中の鳥とか井の中の蛙とか、『外の世界を知らず安寧な箱庭で暮らす哀れな生き物』みたいに捉えられてしまうけれど果たしてその鳥や蛙達は本当に哀れなのかしらね?安寧の住み家を持たない生き物は、何時かその身を磨り減らして地に伏してしまうわ」
「最近は『皇室派』の周辺で諍いが絶えないわね。そもそも『皇室派』は『遠野派』や『武家派』とは仲悪いし。『倭派』は魔術結社としての体制自体が揺らいでいる不安定な兆しがある。うーん、次々に歯車が噛み合わなくなっていっている気がする。一歩間違えたら神道系魔術結社間で大規模な戦乱が勃発する事態に……なんて、さすがにそれは無いか」
「今頃沙耶歌姉さんは何処で何をしているのかしらね。家には顔を出せなくても出雲大社に立ち寄るくらいはできるでしょーに。まぁ話を聞く限りじゃ相変わらず元気そうだし、でも偶にはあたしの顔を見に来てくれても……あーあ。姉妹って感覚ホント薄いねー」
「祓栄君。
遊奉さんは何処へ?……そう、御神籤を引きに行ったの。フフッ、彼女の神楽は人を笑顔にする素晴らしい舞だから、もし時間があったら舞の事でお話したいなって」
【SS使用条件】
特になし