サマンサが製造・飼育している魔術生命体。ベースは江戸時代以降の民間伝承上の謎の生物だが、製造方法は西洋の錬金術におけるホムンクルスの技術を用いている。
フワフワした白い毛玉といった外観であり、伝承では持ち主に幸せを呼んだりすると言われているが、それらしい恩恵は皆無である。
穴の開いた桐の箱の中で白粉を与える事で飼育出来る。条件さえ整えば増える事もあるらしい。ケサランパサランにとって、桐の箱こそが生命を繋ぐフラスコであり、清潔な儀式場である。
魔術生命体にしては驚きの製造コストの低さを誇るものの、特殊な能力を有する訳でもない毛玉を飼育する事に何の意味があるのか。その存在意義は現在サマンサが顧問を務める非公認クラブのマスコットという立ち位置に落ち着いている。
【概要】
岩手県遠野市にある柳田学園で外国人英語教師(外国語指導助手)として働くアラサー女教師。生徒からの愛称は『なっちゃん先生』。サマンサ➡サマーちゃん➡夏ちゃんというノリらしい。日本のJCの洗礼である。
英国出身の魔術師でもあり、学園非公認の秘密倶楽部『
ケ・セラ・セラ』では顧問として生徒に魔術の手解きをしている。実は日本へはとある目的の為にやって来ており、学園への赴任はその手段である。
三年前に赴任して早々、『人払い』を掻い潜って近付いてきた新入生の女子生徒達に指先に灯した炎で煙草に火を点けるのを目撃され、魔術師である事が露見してしまう。元々人見知りでビクビクしている性格であり、魔術師である事がバレたショックでアワアワしている内に弟子入り志願され、秘密を守ってくれるなら……という条件で魔術の手解きをする羽目になった残念な人。
成り行きで放課後は郷土史研究部の部室で魔術講習をする事になったのだが、魔術に関しては自分でも意外な程の天性の『教え上手』であり、彼女に教えを請うた生徒は三年間でめきめきと実力を伸ばし、一つの分野では既に師を凌駕する者もいる。
ちなみに彼女なりの教育方針(魔術指導)では最初にどんな魔術を使ってみたいか、どんな魔術を覚えたいのか『目的』を明確に決める所から始める。これは自分を反面教師にした持論であり、一通り全部をかじる魔術師のセオリーからは外れているが、彼女はこの方法論で間違いはないと確信している。目的が決まったら利用する宗教について最低半年はみっちり座学。これは魔術を使う前に安全装置である宗教防壁を十分身につけておく必要があるからである。
そんなこんなで魔導師として意外な才能を開花させたサマンサだが、彼女が日本に来た当初の目的からすると魔術指導は正直脇道である。そもそも彼女が日本に来たのはこれが最初ではない。その八年前、魔術師の家系に生まれたサマンサは一人前の魔術師になる修行の一環として単身日本に渡り、進学先の東北地方の大学で一人の奇人と出会った。
六つも年上の院生の
先輩だったが、いい歳をして妖怪やお化けの存在を信じて疑わず、民俗学の研究に直向きな姿に自分にはない『何か』を感じ、彼に惹かれ応援するようになった。そしてひょんな事から彼に魔術師である事がバレてしまい、先輩にとってはこの出来事が結果的に魔術の世界に触れるきっかけとなった。
それからの四年間は学業の傍ら、先輩の悲願である魔術生命体による妖怪の再現に協力したが、完成を見る前に時間切れで祖国に帰る事になる。しかし先輩にあって自分にはないものの答えは未だ見つかっておらず、先輩に会いたいという思いがどんどん膨らんでいった。
考えた末にサマンサが取った行動は、イギリスの大学に通い直して語学教師としての学位を取得し、外国語指導助手として日本に舞い戻り先輩にもう一度会う事だった。赴任先として柳田学園を選んだのは、そこが先輩の母校であり彼の行方を探す手掛かりがあるかもしれないから。
学園に赴任して早四年目の春。未だ行方不明の先輩の手掛かりはなく、募る想いと共に年月もまた無情に過ぎ去っていく。周囲からの風当たり(生き遅れ的な意味で)が厳しさを増す中、サマンサに吉報はもたらされるのだろうか。
【特徴】
三十路ギリギリの29歳。『アラサー』や『オトナ女子』という概念を創造する日本人には畏敬の念すら覚えるという。
身長170と背が高いが常にビクビクしているせいで若干縮んで見える。体型としてはスレンダーで、バストはそこそこ。
プラチナブロンドの髪をポニーテールにしており、髪留めのシュシュがさり気ない若作りになっている。青い眼を覆うのは普段の授業ではコンタクト、魔術指導では縁なしの眼鏡を掛ける。
いつも地味な色のタイトスーツを着て教壇に立っているが、たまに寝ぼけた勢いで『女教師サドメイド』とかいう友人に押し付けられた色んな意味でマズい服で来る事があり、男子生徒の喝采と教頭のお説教がコンボで待っている。
喫煙者だが、イメージを気にして学校では極力吸わないようにしている。しかしどうしても辛抱ならない時は『人払い』で人目を避けて体育館裏のスペースでこっそり吸っている。
【台詞】
日本に長く在住しているのでそれなりに流暢な日本語を話す。ただし癖で今でも英単語の発音が無意識にネイティブのそれになる時がある。
初対面や大人数の前だとアガって上手く喋れないが、親しくなった相手とは比較的普通に会話出来る。
「みっ、皆さん。はじ、始めまして。ワタシはサマンサ=サンドウィッチと……、いいます。親しみやすく、first name の……、サマンサと呼んでください。よっ、よろしくお願いします!」
「あっ、れ?アナタ達どうしてここに?ウソ……、ワタシ確かに『人払い』をは、張った筈、なのに……。あっ、これはその、違うの!何でもないのよ。ええと、アナタは
夜都谷巳幸サン……、だったかしら。ゆっ、指先から火?まっさかあ、何かの見間違えでしょウンきっとそう!……ブフッ‼ま、ままま魔術⁉アナタどうしてその事を……、ハッ!いっいや、何でもない、ワタシ何も言ってないから……」
「
巳幸サン。これはワタシの持論だけど、これという目的を定めずに目先の便利さで簡易な魔術に手を出すと後で後悔するかもしれないわよ。育成ゲームで例えるなら、level max まで全部の parameter に均等に経験値を割り振っても微妙な status になるじゃない?日本じゃそういうのを器用貧乏って言うんだっけ。一人前の魔術師は一つの道を究めた者。結局何か一つ突き抜けた人が強かったりするのよ、ワタシ達の世界はね」
「センパイ、アナタは今どこでどうしていますか?お元気でやっているでしょうか?センパイの夢は叶いましたか?……………………アナタに会いたいですよ。センパイ」
【SS使用条件】
特になし