8月20日夜、ストレンジ、
ブラックウィザード本拠地にて…
両腕に西洋の騎士が使うようなアームガードを着けた男が、現れた。
「あ、あなたは!?アンチスキルに捕まったはずでは!?」
ブラックウィザードの手下の一人が怯えながらにその男に聞いた。
「そうだな…だが俺は今、ここに居る、お前ら全員こいつの実験台になれよ」
「!?」
そう言うと男はアームガードから閃光真剣と同じ原理でできたクローを手下に向かって振り下ろした。
「うわー!!!」
あっという間に、ブラックウィザードの残党は全滅した。
そして男は、残党を全滅させると…
「ククク…
神谷稜…今度はお前がこうなる番だ…」
と呟いた。
翌日、176支部にて…
「暇ね…」
椅子に体重を掛けながら雅は呟いた。
その時…
「大変です!!先輩方!!!」
なにやら慌てたように、丞介が入室した。
「どうしたんだ?丞介?」
「今、10学区の知り合いから知らせが入って…ブラックウィザードの残党メンバーが全員…誰かの手で…殺されていました…」
「「「「「「!?」」」」」」
176支部のメンバー全員が驚いていた。
「嘘だろ?ブラックウィザードは粒ぞろいだが、実力はあるはずだ…」
「それが…全員が刃物で切られて死んでいたそうです!!」
「また新手のスキルアウトか?」
「それはないと思う。私の仮説に過ぎないんだが、おそらくその犯人はブラックウィザードに関わりを持っていたことになるはずだ。」
「そういえば
東雲真慈って、どこに居るの?」
「実はそいつも行方不明なんです!!」
「なんだって!?」
「嘘でしょ?」
「本当です…」
「みんな!!今は情報が少なすぎるから、この件は独断で行動はしないこと!」
「「「「「「「了解!」」」」」」」
「それと、稜!」
「はい」
「稜は今すぐ寮へ帰りなさい!それとしばらくはここに来ないで、正美を付きっ切りで守っておきなさい!」
「分かりました」
稜は、寮へと戻って行った。
稜と正美の部屋にて…
「ただいま!!」
「お帰り!早かったね?…稜?」
「悪い、落ち着いて俺の話を聞いてくれ…」
「う、うん…」
稜は今までの経緯を正美に話した。
「そっか…そんなことがあったんだ?」
「…ごめんな…」
「大丈夫だよ!きっと!」
「え?」
正美は優しく、稜に抱きついた。
「稜ならきっとやれるよ!」
「正美…」
「じゃあ今日は、わたしがご飯、作るよ!」
「わかった、んじゃ買出しに行くか?」
「うん!行こう!」
こうして二人は、スーパーで買い物をした。
その帰りに近道になる公園を歩いていた。
「意外と安かったな、材料」
「特売じゃないかな?」
「そうか…ん?」
「どうしたの?」
「何か来る…」
「?」
稜は腕に腕章を着け、正美を守るように閃光真剣を構えた。
そして、二人の目の前に現れたのは…
「!?…お前は!?東雲真慈?!」
「この前はよくもやってくれたな…だから…お前を殺す!!!」
真慈は、両腕のアームガードから、クローを出した。
「閃光真剣!?」
「違うな、こいつは、閃光形成(ライトクリエイト)つってな?お前の能力から作り上げられた武器だ、だからな?お前はこいつの切れを味わって死ね!!!」
真慈はそう言うや否や、すばやく稜との間合いを詰め、稜に切りかかった。
「いい事教えといてやるよ…お前を殺したら…次はあいつだ…」
真慈は正美を一瞬だけ見ながら、稜に行った。
「なら、俺がそれを止める!!!」
激しく、刃と刃がぶつかり合い、火花を散らしていた
「おままごとは楽しかったか?」
「何を!」
真慈は地面に落ちている食材を見ながら言った。
「そらぁ!!」
「クソッ!」
真慈の動きが以前より格段に早くなっていて、稜はその攻撃を紙一重でかわすだけで精一杯だった。
「往生際が悪いな…とっとと食らえよ!!!」
「ぐっ!…!!」
稜は二刀流の閃光真剣を両方弾かれ、がら空きになった腹部を、真慈の強烈な膝蹴りが襲った。
「稜!!」
稜はそのまま2~3メートルほど、吹っ飛ばされ背中から地面に落ちた。
「どうした?そんなもんか?じゃあ…とっとと弾けろ!!!」
「クッソ…(殺られる!!)」
真慈は、倒れている稜に近づくと、クローを振り下ろそうとした。
そのとき…
「ダメッ!!」
「うわ!」
正美は渾身のタックルで真慈を、自分もろとも地面に押し倒した。
「わたしの大切な人を傷つけないで!!」
「チェ!うっせぇな…」
「う!!」
正美は真慈に、首元を肘で打たれ、逆に地面へ押し倒される形になっていた。
「何が大切は人だ?調子こいてんじゃねぇよ!!」
「うっ…」
真慈は、正美の腹部に拳を叩きつけ、そのまま蹴飛ばした。
「…うぅ…」
「まだ立つのかよ…」
「!…」
真慈は立ち上がろうと必死になっている正美をあざ笑うかのように踏み付けた。
「お前さぁ…もしかしてよぉ…」
「いや…」
正美は、真慈に髪の毛をつかまれ覗かれるように顔を見られた。
「あそこで倒れてるバカが、また立つとでも思ってんじゃねぇのか?」
「…」
「そうか…じゃあ死ね!!!」
真慈はクローを正美に突きつけた。
この状況であれば誰もが死を覚悟する状況だった。
そのとき…
「いや…いやああああああ!!!!!!」
「ぐあぁぁ!!頭が?!…」
突如真慈が頭を抑え、膝を突いた。
それは、正美の無意識下で能力が暴走し、真慈の脳にダメージを与えたのだった。
そして、正美はそのまま倒れ、気絶した。
「このあまぁ!!」
真慈は頭を抑えながら倒れている正美に、クローを振り下ろした。
そのとき…
「!?」
突如真慈の目の前に、稜が現れ真慈の一撃を受け止めた。
「やらせねぇよ…」
「なぜお前はいつも俺の邪魔をする?!!そのまま倒れてればこいつだけが死んで俺は自首する、そうすればお前は生き残れるだろうが!!」
「ふざけんな…人を殺すだけ殺して、てめぇは逃げんのかよ!!」
「そうだ!!」
「だったら…俺がてめぇを務所にぶち込んでやる!!!」
「うわ!?」
稜は、残っている力を振り絞って真慈に攻撃した。
しかし…
「茶番はそこまでか?」
「!!」
真慈のクローが、稜の腹部を貫いた。
そして真慈の貫いている方のアームガードから、稜の鮮血が滴り小さな水溜りを作っていた。
その瞬間、稜の手から閃光真剣は消え、針がカランと音を立てて落ちた。
「雑魚が…」
真慈が、クローを、稜の腹部から引き抜くと、稜はそのまま倒れた。
「後はお前だけだ…」
真慈は再び正美へ近づこうとした。
そのとき、カツンと何かが地面を突いた音が聞こえ、真慈は後ろを振り向いた。
そこには、閃光真剣を杖代わりに立っていた。
「なに!?あれだけの深手を負って、まだ俺に立ちはだかるのか?!!」
「言ったろ…やらせねぇって」
稜は、居合い切りするかのように、閃光真剣を構えた。
「…(チャンスは一回…ミスったら死…)はぁぁぁ…」
稜は気持ちを集中させるため、瞳を閉じて息を抜いた。
「フンッ…居合いか…いいだろ…行くぞ!!」
真慈は、クローを出し、稜に向かって駆け込んだ。
しかし、稜は瞳を閉じたまま動かなかった。
「そらぁ!!死ねぇ!!!!」
真慈は、稜に切り掛かろうとクローを振り上げた。
その瞬間…
「…(今だ!)は!!」
稜は目を見開き、一気に閃光真剣を横に振り抜いた。
そして、真慈とすれ違いあった。
「俺の…負け…だ…と…」
「…」
真慈は、ドサッと音を立て地面に倒れた。
「安心しろ、峰打ちだ…」
そして、稜も出血多量で気を失い、その場で倒れた。
とある病院にて…
「うぅ~ん…」
「お目覚めかな?」
「あれ…俺…死んだんじゃ…」
「君は死んでないよ?ただ…あのごつい装備をした彼は自殺したみたいだね」
「え!?東雲が!?…嘘だろ…なんで…」
「満足そうな顔で居たね」
「そうですか…!?…正美は!?」
「…そろそろ、くるころかな?」
そのとき稜が居る病室の扉が開いた。
「稜!!よかった!!無事で!」
正美は、稜に抱きついた。
「僕はこの辺で失礼するよ」
そう言い残すと、カエル顔の医者は病室を出て行った。
「お前も無事でよかったよ!」
「うん!ありがとう!」
こうして二人は病室の窓から夕日を眺めた。
END